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三題噺

作者: ゆみかん

お題→黒猫、天使、オルゴール



************************

ある街に1匹の黒猫がいました。


その街にいる唯一の黒猫です。他の猫はどこを探してもいません。


いつも1匹ぼっちの黒猫。そんなある時、友達が欲しくなりとぼとぼと歩きだしました。


すれ違う人は黒猫に目もくれず、忙しそうにしていました。


『僕は誰にも相手にされない…。』


そんな事を考えながらとぼとぼ、とぼとぼと歩き続けました。


朝も昼も夜も、春も夏も秋も冬も、疲れては休み、また歩きを繰り返していました。


ある時黒猫は、台風にあいました。


強い雨風の中も歩き続けていました。しかし、足を滑らせて川に落ちてしまいました。


目を覚ますとあたり1面真っ白。黒猫は少し怖くなりました。


『ここはどこなんだろう…………。』


ぽつりと呟きました。すると何もない空間から女の子が現れました。


『……え??君は……誰なんだい?』

黒猫は怯えながらも尋ねました。


「初めまして。私は天使です。」


女の子はそう名乗りました。


『てん……し……?』


黒猫は全く理解できませんでした。


「そう、天使。あ、もしかして信じてないの?」


天使は少し不機嫌そうに言いました。黒猫は、状況を理解しようと頭をフル回転させました。


すると頭に鋭い痛みが走りました。


「あー、君は川に落ちて即死したんだよ?覚えてる?」


『そ……うだ、僕、川に落ちて……それで…。』


黒猫は自分が死んだということを理解して、身震いしました。


『そっか……。死んじゃったんだ、僕。』


黒猫は泣きながら言いました。天使は少し考えて、


「ねぇ、どうして台風の中歩いてたの?」


と、尋ねました。


『僕がいた街には、仲間、友達がいなかったんだ。それで別の所に行って友達を探そうとしたんだ。けれど…。』


そこまで言って黒猫は黙りました。


いっときの沈黙の後、天使はどこからかオルゴールを出して言いました。


「だったら私と友達にならない?それと、これをあげるわ。」


黒猫はきょとんとしていましたが、言葉を理解しひどく喜びました。


『本当に?!友達になってくれるの?』


「もちろんよ。天使は嘘なんてつきません。」


そう言うと天使は黒猫にオルゴールを手渡しました。


そしてオルゴールを鳴らしました。とても綺麗な音色です。


『素敵な音色だね。ありがとう………ありがとう。』


黒猫はたくさんお礼を言いながら消えていきました。


それを見届けた天使も静かに消えていきました。


白い白い空間にはオルゴールが1つ。綺麗な音色を奏でながら残されていました。

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