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――――




「大丈夫か?」



 ふと、隣から(わたる)の声が聞こえ、はっとする。

 航は心配そうに、そして遠慮がちに、僕の様子を伺っている。



「…大丈夫」



 一息ついて、そう言った。

 なにより自分に言い聞かせた。






 彼女が死んで、3日が過ぎた。

 彼女を残して、時は残酷に過ぎていく。





「顔見れるの、これで最後だって」




 静かに少し震えた声で、航が言う。



「…あぁ」



 いまは彼女の葬式が開かれている。

 参列者は、親族と、友人数名、そして僕と航だけだ。






 僕と航と彼女は、幼馴染だった。



 物心ついた頃から

 いつだって一緒にいた。





 そして中学生になり

 周りでカップルが増え始め、


 小さい頃から女子にモテモテだった航にも

 すぐにその時はきた。




 そんなわけで、



 自然に僕と彼女が2人でいる時間は

 多くなっていった。






 そして自然に

 僕らは「ただの幼馴染」から

 「恋人同士」になった。




 どちらからか告白をして、

 付き合ったわけではない。





 自然の流れで、

 手を繋ぎ、抱き合い、キスを交わした。








 お互いに「好き」という気持ちを

 伝えたわけではない。






 伝えたことなどなかった。










「―― なつみ」





 彼女の名を呼ぶ。




 いつだって元気で、熱くて、

 時にはすべてを包み込むように優しくて、



 彼女にぴったりの名前だった。





「なつみ」





 もう一度。

 


 声が、全身が震えた。





 小さく深呼吸をして、静かに目を閉じる。

 そして、震えるその手を固く握りしめた。
















「僕たちの間に、愛はあったのか?」















 答えが返ってくる当てなどないのに。





 棺の中の彼女は、表情一つ変えない。

 もうその目を開けることは、二度とないのだ。





 後悔なのか、彼女に対する罪悪感なのか、

 ただ単に、彼女が死んでしまったことへの悲しみからなのか。






 無意識に零れ出た涙。




 綺麗に化粧された彼女の頬に、音もなく落ちた。


 




 何に泣いているのかさえ、

 わからなくなった。









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