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胸の穴(上)

 今思うとなんでもっと早くこうしなかったのかと夕暮れに赤く染まる街を見下ろしながらちょっぴり後悔している反面、ここまで歩いて来れたことと、遥か遠くに感じていた目的地が目の前まで近づいていることに驚いた。この先はこんなことになったことに両手一杯分位の人間が驚き、コップ一杯程度の後悔が私を苛むのだろう・・・たった一杯分。

 「じゃ。また明日〜」耳の奥をチクチクといやらしく突付くこえが聞こえた。と、同時にオートロック式のドアが開き・・・閉まった。

 そろそろ時間だ・・・私はカーボンの手すりに手を強く押し付けた。

 

 

 いつもと同じきっかり七時十五分に目が醒めた。私の体内の時計は正確で毎朝この時間に目覚まし無しで起きることができる。

 ベットの横にある小窓のカーテンを開けると心地良い太陽の光が部屋を満たした。ベットの上で「う〜ん・・・」っと伸びをする。これ一つでばっちり目が醒める。ベットから這いて、スリッパを履き部屋から出る。

 キッチンに行くといつも通り父が私より先に起きていた。

 「おはよ」私が父に声をかけるとやっと気がついたらしく「おっ。おはよう」っと元気に返して来た。

 「まってろ、今パン焼くから」

 うん。と半端な返事をして私はテレビをつけた。朝のニュースを見る、七時五十分頃にやる血液型占いが本当の目的だがぼんやりとほかの時事情報もチェックする。

 「へ〜。離婚か〜」テレビを見ながらぼんやり呟いた「あれ。この人三ヶ月位前に結婚したばっかじゃなかったっけ? 」お皿に目玉焼きとソーセージ、パンを乗せた皿を二つ持った父がテーブルに着き言った。

 「え?そーだっけ」父から一つのお皿を受け取りながら私は聞いた。

 「もう駄目だな。年だから最近の芸能人の顔がみんな同じに見えてくるよ」小首を傾げながら言った。

 「まだ、四十そこいらの人間がなに言ってんの。あっ!」話しながら卵に箸をつけると、白い卵白の周りがたちまち黄色く染まった。

 「ちょっとー!これ半熟じゃん」眉間にこれでもか、と言うほど皺を寄せて言うと、父が覗き込んできた「あ。ほんとだ。こっちの方が固焼きだったのか」と自分のお皿を箸で指しながら言った。

 「もー最悪」

 私は昔から半熟の目玉焼きが大嫌いなのだ。でろでろしてて、喉に入れたら水分を奪われるし、全然食べた気にならないし、何よりもお皿が汚れ、周りの食べ物まで黄色く染まるのがどうにも耐えられなかった。

 「年だからな・・・」年のせいにして逃げようとした父を睨み「まだ四十そこそこでしょ」っと一喝した。

 「まあ、まあ、いいじゃないか残せば。おー、またイジメか」テレビに向かって箸を振りながら無理やり話を逸らした。

 「え〜。イジメ位で自殺しちゃうのまたしても眉間に皺を寄せながら言うと「お前もイジメにあったら、ちゃんと相談しろよ」と父が言った。

 「ご心配なく。あったとしても、自殺なんかしませんから」そう言いながらソーセージにかぶりつく。

 「それに・・・」ソーセージを噛みながら付け加えた「お父さん一人にしたら危なそうだもん」

 「あらま、しおりちゃんは優しいな〜」

 おどけながら言った父の言葉は本心だったのかどうかは知らないが、ちょっと照れくさくなった。

 

 私の家には母は居ない。死んだのだ。死んだと言っても本当に死んだわけではない。母はだらしのない人間で、父と二人で貯金していたお金をすっからかんにしてしまったのだ。そして、それに父が激怒して離婚してしまったのは言うまでもない。それ以来母には会っていない。私的には、死んだ人間も、もう逢う事がなくなった人間もそれほど変わりはないと思っている。それ以来家事は大抵二人で折半している。

 「洗濯物。タイマーで栞が帰ってくる頃に終わるように設定したからあとは頼んだぞ」

 血液型占いに夢中になっている私の背中にむかって言ってきた。

 「はいは〜い」っと、形だけの返事をした。

 「じゃ、お父さん行くからね。戸締りと、洗濯物頼んだぞ」

 「はいは〜い。いってらっしゃい」

 今日はO型は三位だった。人との約束を忘れてしまわないように注意!それさえ守れば今日一日ハッピー。ラッキーカラーはピンク。こんな具合だったので洗濯物のことを忘れないか心配になった・・・・


はじめまして。これから頑張って書きますのでよろしくお願いします。

辛口な感想をちしてます。

文体、言葉回し、表現法、への批判。中傷なんでもOK。

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