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3、占いの館へいらっしゃい

「うむー……」


白魔女エリが最もらしく、ケバケバに飾り立てた水晶玉に手をかざす。

後ろでまとめた白髪には沢山のかんざしを挿し、美しい西洋人のような顔に金の瞳。そして真っ白のドレスはいかにも魔女らしいいでたちで人気がある。


「どうですか?おばさん」


派手なOLが覗き込む。

「おばさん?」ムッとエリが睨み付けた。


「おばさん、だから彼とはどうなるの?」


差し出す写真には、ジャニーズ系の格好いい男。

エリには見ただけで駄目なことがわかっていた。

水晶には案の定、男に捨てられ足蹴にされる彼女の姿が見える。


「ふっ」


エリがにっこり口端を引きつらせながら、微笑みかける。

営業スマイルを、店長には散々練習させられた。


「まあ!とおっても良い相手じゃ。これ程ピッタリの相手はない。きっと幸せになれるかもしれん」

「おばさん何よ、その「しれん」って、何かはっきりしないわねえ。はっきり言ってよ」


むー、何と嫌な女じゃ。これでおばさんと言うたは3度目じゃぞ、キーッ!

ふとエリが目を細め、ニッと笑う。そして神妙な顔つきで腕を組んだ。


「わらわは国一番の白魔女じゃ。

だがお前はあまりにも「特別」で凄まじいほどに未来が輝いておる。

まるで特別限定品100個限りの貴重品のようじゃ。じゃからさすがのわしも眩しすぎて先が見えぬ。

お前の未来は特別なのじゃ」


「んま!じゃあ、もしかしたらあたしって大金持ちになるのかしら!この人と結婚すると」


「当たるもハッカ、当たらぬもハッカじゃ」


ハッカじゃなくて、八卦だろう。

しかし、特別を強調されて「キャア!」と女が飛び上がり、ハイッとチップを5千円も置いて出てゆく。

ふうんとその金を手に取り、エリはホッホッホッと笑った。


「ホホホ、特別お前はだまされやすい。限定物じゃ。

これで帰りにおダンゴを買って帰ろう、たまには機嫌も取らねばならぬ、居候は辛いのじゃ」


いそいそと、チップを懐に入れる。

「あのう、いいでしょうか?」


次に入ってきたのは、ちょっと見目のいい青年だ。しかし歯でも痛いのか、ハンカチで頬を押さえていた。


「ふむ、しかし一太には負けるのう」

「は?」

「いやいやこちらの事、どうぞかけるがよい」


青年がキョロキョロしながらエリの前に腰掛ける。


「で?悩みは何じゃ?やっぱり好きの嫌いのか?」


ちょっと食傷気味にうんざりと聞く。

誰が誰を好きなど、どうでもいいではないか。

するといきなりガタンと青年が立ち上がった。


「あのー、どうしても…どうしてもどーーしても気になる人が居て!どーしてもーー!」

「は、はいー?」


思わず圧倒されてエリが引く。

青年が顔を近づけ、頬からハンカチをはずした。


「この、キスした人にもう一度会いたいんですけど」


ぬぬ?顔を近づけよっく見る。

くんくん、どこかで嗅いだこの魔法の匂い。


こーれーはー、うふふふ


「会って、僕のことをどう思ってるか聞きたいんです!お付き合いしたいんです!」

キスマークを付けたままガッとエリの手を掴み、ウルウルと目を潤ませる。


「よし、私が丹念に、丁寧に、綺麗に占って進ぜよう。きっとバッチリうまく行くであろー」

「本当ですか!」


青年の目がキラキラ輝く。

エリは笑いを堪えて神妙な顔で、水晶に手をかざした。


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