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★サクラとユキと逝けメンの噂


「ユゥゥーキィィー! オラの話を聞いてくれー!」

 バァアーン、と装飾にまみれた扉を豪快に開き、そう雄叫びをあげるサクラ。が見たのは部屋で茶を飲む、二人の人間の姿だった。

「やあやあ、使用人の君! しばらくぶりだな!」

「ユキ……どうしたんですか?」

 部屋の中心でテーブルを囲む、ユキとリオン。テーブルの上にはスコーンが山積みにされていて、バターのいい香りが部屋に漂っていた。カップを持ち上げ、気障ったらしく歯を見せて笑うリオン。先日の騒動が尾を引いているのか、サクラはその仕草に少しイラッとした。

「王子もいたんだべか……」

「そうがっかりした顔をせずとも、素直に喜んで良いのだぞ! ……ところで、君は自分の名前を叫びながら部屋に入るのか?」

「え、ええ……まあ、趣味みたいなもんだべ」

 怪訝な顔をされたのは言うまでもない。笑顔キャラなら笑って流せよ! とサクラはひそかに憤った。実は、ちょっとヒヤッとした瞬間でもある。

「てゆーか、姫。なんでリオン王子がこんなところにいるんだべか」

「こらこら、使用人の君。従者は主人に敬語を使うものだぞ」

「だって、従者とか主人うんぬん以前に、幼馴染だし……」

「屁理屈を言うんじゃない。人前に出た時に困ってもいいのか?」

 たしなめられた。

 子供に言い聞かせるように、すごくまともな理由で。すごく非常識な人から常識を諭された。

「笑顔キャラなら笑って流せよ……」

「はっはっは。敬語はどうなったんだ?」

「……笑顔で笑って流して下さいっべ!」 

 そう言い切り、口をとがらせてプイ、とそっぽを向くサクラ。オラこいつ嫌い! と全身で叫んでいる。その雄弁な姿に慌てたユキが、話題をそらそうと口を開いた。サクラは忘れているようだが、彼女が竹刀でぶん殴ったり無礼を働いているこの男は、王子なのである。

「と、ところでユキ。話って何ですか?」

「話? 話……ああ!」

 思い出したようにポン、と手を叩くサクラ。急にしかめつらになったかと思うと、テーブルの前にグイと身を乗り出した。乱暴な手つきでスコーンを一つかっさらい、むしゃむしゃと食べ始める。

「聞いてほしいべ! 天下の大帝国アリシアの王宮に、ハンパなく失礼な騎士が雇われているんだべよ! 黙ってられるかって話だべ!」

「ハンパなく失礼な騎士……?」

 首をかしげるリオンに、「そうだべ!」と言ってスコーンを飲み下すサクラ。喉に引っかかったらしく、少しせき込んだ。涙目になりながらも、追咎するように騎士の特徴を声高に叫ぶ。

「赤毛の無駄に爽やかそうなハンサムだべ!」

「あ、その方ならわたくしも見ましたけど……別に失礼はなかったですよ」

「なんだってー!」

 そんなバナナ!

 愕然とするサクラと、奇妙そうに首をかしげるユキ。ううん、と2人の間で唸っていたリオンが、とりあえずといった様子で口を開いた。

「それじゃあ、詳しく特徴を言ってみてくれ。俺はここに長年出入りしているから、わかるかもしれないしな」

「赤毛!」

「ハンサム!」

「フリスク配合!」

「新しい風!」

「もうちょっと具体的なやつを頼む」

 交互に特徴を上げるサクラとユキに苦笑いする。具体的な情報か……とサクラは腕を組んで考え込んだ。

「そうですね……部屋まで親切に、エスコートしてくれました」

「人とぶつかっても、謝りもしなかった!」

「ううん、それだけではわからないな」

「都市伝説に詳しくて……」

「口が乱暴で、悪態ばっかりついて!」

「あと……」

「それから……」

 二人とも、口裏でも合わせていたかのようなタイミングで声が重なる。それぐらい決定的な特徴だった。

「「落とし穴にはまってました」」

「なんだ、アレンか」

 あっさり納得するリオン。落とし穴以外の特徴が一致せず、奇妙そうに顔を合わせる二人。その間ではっはっは、と彼独特の高笑いで話を続けた。

「あいつはアレン・ベレスフォード。この城で随一の騎士で、美丈夫だぞ」

「王子公認のイケメン……だと……!」

「ああ。あれではレイの立場がないな!」

 はっはっは、と毒舌を朗らかに笑い飛ばすリオン。その陰で一人、ユキがレイモンドを哀れんで合掌していた。

「貴族のお嬢さんが選ぶ、『貴方になら貢ぎたい』ランキング、堂々の一位だぞ!」

「なんなんですか、その名誉なのか不名誉なのか分からない称号は……」

「つーか、うっそだべ! あんなに性格悪いのに……ドMにしかアンケートをとらなかったんだべか!?」

「まあ、最後まで聞け。それは、貴族のお嬢さんが選ぶランキングの話だぞ?」

「? どういう意味ですか?」

 きらきらの笑顔のまま、リオンがどす黒い言葉を続ける。滔々とした語り口に、サクラは身を乗り出して聞いていた。

「『豆腐の角が頭にぶつかれ』ランキング、『ノミ虫よりも最低な男』ランキング、『そのうち隕石と衝突するぞ』ランキング、堂々の一位だ」

「話の内容より、アンケートの主旨がわかりません」

「確かに奴にふさわしい称号だべが……。どうしてそう、評価が一変するんだべ?」

「いや、実はな。これらはすべて、騎士以下の身分の使用人から集めたアンケートなんだ」

 理解が遅いサクラとユキ、揃って首をかしげる。その様子を微笑ましそうに眺めていたリオンが、二人にわかりやすいよう、かみ砕いて説明してくれた。

「つまりだな。アレンという男は、身分が上の者にはひたすら媚び、身分が下の者はひたすら見下すという男なのだよ」

「と、いうと……」

「王族には跪き、使用人を踏みつける男だ」

 沈黙する二人。騎士アレンの性格について掌握したサクラが一番に、「げえー!」という声を上げた。

「うわー、さいていだー! 近年まれにみる最低っぷりだー!」

「え、ということは……わたくしが優しくしてもらったのって……」

「媚びてたんだろうな、たぶん。サクラコ姫は綺麗だし、ゴマをすっていたんじゃないか?」

 目に見えて肩を落とすユキ。久しぶりに優しくしてもらえたと思ったのに、それがゴマすりだったと知ったら当然である。いじけたように、テーブルにのの字を書き始めた。豪快に笑うリオン。

「あのクッキリパッキリした最低っぷりには、もういっそ清々しさを覚えるな!」

「リオン王子、懐の深さがパネエっすね……」

 若干引いている様子のサクラが、リオンにたたみ掛けるように尋ねた。

「だいたい、なんでこの国はそんな奴を雇ってるんだべ? かなり駄目な奴じゃないか、人間として」

「アレンは色々な意味で外面がいい奴だからなー。他国からのお客様からは、ウケがいいんだ」

 それを聞いて、納得するサクラ。あんな爽やか系イケメンに愛想よくされたら、女性の方々は悪い気はしないだろう。

「でも、落とし穴に落ちたという話で特定できるなんて、よっぽど落とし穴と縁があるんですね……」

 ショックから立ち直ったユキが、おずおずと会話に参加する。『落とし穴に落ちた』という話だけで判明する人物なんてそうそういないだろう。

 しかしユキの予想に反して、「ああ」とリオンは何気なく頷いた。

「あいつは、歩けば落とし穴に遭遇するような奴だからな」

「そんな頻度で!?」

「それを警戒して石畳しか歩いていないと、今度はバナナの皮を踏むぞ」

「王宮の廊下でバナナの皮を踏む確率って、そんなに高いんだべか!?」

「いや、限りなくゼロに近いはずなんだが……不可能を可能にするほど、運が悪い奴なんだ」

「さすが『そのうち隕石と衝突するぞ』ランキング一位だべ! 無駄に壮大な運の悪さ!」

「え、運が悪い奴ってレベルなんですか……? 何者かの悪意を感じますよ……?」

「何者かって、誰だ?」

「……つき落としチルドレンとかの?」

 リオンとサクラが怪訝そうな顔をしていたが、説明すれば長くなりそうなので「それよりも」とユキは話を変えることにした。

「城内には、実のなる木などが植えてあるんですよね? どんな種類のものがあるか、ご存知ですか?」

「そうだな……桃や栗、柿などがあるぞ」

「栗!」

 ユキ名過剰な反応に、驚いたように瞠目するリオン。くしゃり、と顔をゆがめて「好きなのか?」と問いかけた。その表情も優しい声色もサクラには向いておらず、ユキめーまたフラグ立ててやがるべー、とサクラが胸の内でぼやいていた。ユキは彼の変化に気付いていないようだし、彼の愛がかなり壮絶な悲恋に終わるということを知っているのは、サクラだけであった。

「はい! 祖国にいた頃から大好きで……」

「ほう。だったら、栗は今が季節だし、使用人に拾わせてくるといい」

「そうですね、今度頼んでみます!」

「…………」

「…………?」

「サクラコ姫。使用人ならいるじゃないか」

 ここに、というところでサクラを指差すリオン。その仕草にむっとしたサクラはその指に噛みついてやろうかと思ったが、また阿呆みたいに諭されるのは嫌なのでやめた。

「というわけで使用人の君。さっさと栗拾ってこい」

「えー」

「えー、じゃないぞ。お邪魔虫だということを察しろ」

 おまえはユキが男だということを察しろ、いや、察するな。察するといろいろマズイ……と一人で悶々と考えながら、渋々立ち上がるサクラ。

 しかしおとなしく退室するのは癪なので、出入り口の取っ手に持っていたガムを設置。あの男の性格からすると、紳士ぶって扉を開くだろう。そして手がべとべとになって困るがいいふはははは!

「そっれじゃあ! オラはちょっと栗拾いに行ってきまーす!」

 三枚のお札はないけどね! とご機嫌に冗談を飛ばしつつ部屋を出ていくサクラに、限りない不安を覚えたユキであった。

 どうも、時計堂です。


 先週は更新ができず、申し訳ありませんでした。

 何カ月か前に設定したっきり、放っておいてしまいまして、ストックが切れていることに気づけませんでした。


 しかし、本題はここからです。

「ありゃ、ストックが切れてら―。まとめて更新しよー」と、USBをぐさっとパソコンに突きさしてみたところ。

 データが消失していました。


 \(◎o◎)/!

   ↓

 ( ゜д゜)ポカーン

   ↓

 \(゜ロ\)(/ロ゜)/


 ……とりあえず、記憶を頼りにちょっとずつ書いていこうと思います。遅れたらごめんなさい。うらむなら私ではなくUSBをうらんでくれ。


 小学生の頃に書いた小説(負の遺産ともいう)とか、全ての小説のデータが入っていたので、がっかりです。ちょっと傷心旅行に行ってきます。


 傷心なのは嘘ですが、二週間ばかり日本を留守にします。カナダの方にホームステイです。来週の今頃はきっと空の上です。

 値切りの時以外は基本チキンハートなので、少々心配です。ハート以上に英語力がチキンですが、がんばってきます。


 それでは、また御縁があったら。


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