世の中を斜に構えた夫婦の会話
西暦206X年。ここに、とある夫婦の会話風景を残す――。
「新型コロナウィルス」
「きょうも美味しかったね~」
「うん、きょうも新型コロナウィルス」
「すっかりこの挨拶も板についたね」
「ねー。ニュースでも第一声が新型コロナウィルスだから、もう立派な挨拶だよ」
「朝起きたら新型コロナウィルス、会社行くときも新型コロナウィルス、家帰っても新型コロナウィルス、ごはん食べるときも新型コロナウィルス、食べ終わっても新型コロナウィルス、お礼を言うときも新型コロナウィルス、寝る前だってもちろん新型コロナウィルス!」
「さっきもニュースで、新型コロナウィルス第138波って言ってたよ」
「てか新型コロナっていつ出てきたんだっけ? 長く続きすぎて忘れちゃった」
「2020年からだねー。厳密には2019年らしいけど、ここまで来れば誤差だよ」
「もう40年たつのに未だに新型てw」
「一発屋の小説家が40年前に出した唯一のヒット作を138回増刷して未だに最新作って言ってるようなもんだよね」
「40年前のパソコンを新型ですって言い張るのもそれっぽくない? とっくの昔にサポート打ち切ってるってのw」
「ホント滑稽だよねーw進歩しないのがかっこいいとでも思ってんのかなー」
「進歩がないっていえば、さっきネットニュース見てたら未だにX(旧ツイッター)って書いてたよ」
「40年も『旧』をつけるなんて、泥水すすりすぎでしょw」
「たとえば40年浪人して大学に行った人が堂々と『大学生(旧浪人生)です!』って言うようなもんじゃんwおまえに恥はないのかとw」
「人生の半分浪人してるんだからなかったことにできないんでしょw俺が私がこれだけ苦労したのをみんなわかれよ、みたいな」
「いやごめん、そんなんわかっても同情できないわw」
あははははは、わはははは――。
この会話は、コロナが終息しなかった世界線、Xがツイッターに戻らなかった世界線を仮定したものです。現実に来る206X年とは、たぶん関係ありません。




