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久々に会った初恋の訳アリ幼馴染とワンナイトした  作者: テル


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第三話 初恋の幼馴染との宅飲み

「お邪魔します」


 日もすでに落ちて、辺りが寒くなってきた頃。


 一樹は夕食とおつまみ用のコンビニ飯やスナックが入った袋を片手に自分の部屋のドアを開ける。


 家に女子をあげるのは美月で二人目である。

 当然、一人目は元カノだが、当時と違うのは部屋が汚いという点。

 

 別れて掃除のやる気すら出なくなった結果。


 少し埃っぽい玄関横の靴棚。

 玄関付近に置いてある複数のゴミ袋に、リビングに行けば片付いていない物の数々である。 

 

 それに、まさか美月と再会して、家にあげることになるとは思っていなかった。


「なんか、想像通りの男子の部屋って感じだね」

「ごめんな、汚くて」

「う、ううん、家にあげてって言ったの私だし」


 美月は若干、苦笑いする。

 こんなことなら部屋の整理を常日頃からしておくべきだった。


 とはいえ、二人で宅飲みをするだけなのでそこまで気にはしないことにした。


 一樹は美月をリビングに案内すると、テーブル周りに置かれた座布団に美月を座らせる。

 

 そして、机の上のゴミを軽く片付けたり、ソファを少し移動させて飲み用のスペースを作る。

 友人二人がよく飲みにくるのでこういう準備は慣れているのだ。

 

 やがてコンビニ袋を机の上に置くと一樹も美月の隣に座った。


「なんか、こういうのも久々だね。小学校の頃とか、私がよく一樹の部屋行ってたよね」

「そうだな。懐かしい」


 こうして近くで美月を見てみると、もう一度思うが本当に可愛くなっている。

 大人っぽい顔立ちだが当時と変わらない可愛さも残っている。

 要するに一樹好みの容姿なのだ。


 そんな美少女と同じ屋根の下で二人きり、一樹の鼓動だけが早くなっている。

 

 そもそも初恋の女の子なのだ。

 ドキドキしてしまうのも無理はない。


「そうだ、一樹。お手洗い借りていい? ちょっと手洗いたいかも」

「ああ、もちろん」


 一樹がそう言うと、美月は立ち上がる。

 しかしそこで美月の髪や服が濡れていることに改めて気づく。


 先ほどの急な雨に美月は濡れてしまったのだろう。


 それなら……。


「もう風呂入るか?」

「え、いいの?」

「濡れてるし、風邪引かれても困る」

「じゃあ、そうしようかな……服も、借りていいかな?」

「え? あ、ああ……そうだよな」


 一樹はただ思いつきで言ったことだが、まずいことを言ってしまったのではと振り返る。

 女子を家にあげて、お風呂を先に入らせて、服も貸すのだ。


 軽率な人だと思われてもおかしくない。


 けれど風邪を引かれても困るのも事実である。


 一樹は自室のクローゼットから美月が着れそうな服を取り出す。

 そして、それを美月に渡した。


「サイズ大きいかもしれないけどよかったらこれ」

「ありがと」

「風呂場にあるやつは好きに使ってくれていいから」


 美月はまた一言お礼を言うと、お風呂に入っていった。

 

 そしてその数分後。

 

 一樹がリビングの掃除をしていると、お風呂場から聞こえてくるシャワーと水の滴る音。

 普段一樹が使っているお風呂を今は美月が使っているのだ。

 

 元カノですら一樹の家のお風呂に入ったことはないのに。


 掃除をしながら、一樹は色々と想像してしまう。


 想像しても枯れたあそこが反応するわけではない。

 ただ、胸がおかしくなる。


 もしかしたら久々にあった幼馴染が美少女になっていたギャップに少々緊張しているのだろうか。

 初恋の味と似ている。


『一樹っ!』

『どうしたの?』

『えへへ、呼んだら振り返ってくれるかなって……そうだ、今日もそっちの家行くね!』


 美月とは保育園からの幼馴染で中学の途中まで一緒だった。

 家が近かったので、登下校は当たり前で、放課後も美月が一樹の家によく来ていた。


 美月とはずっと一緒で、気づいたら好きになっていた。

 そしてなんとなく好きだった。

 

 友人としても好きだし、異性としても彼女と彼女の笑顔が好きだった。

 しかし中学に上がってからはクラスも別で、お互いに話す機会も減って、気づいたら転校していた。


 中学二年生に上がるタイミングでの転校で、親の都合らしかった。


『……ばいばい、一樹』

『げ、元気でな』

『うん、一樹もね』


 美月が引っ越す日もそんな会話をしただけで、結局自身の思いを伝えられなかったどころか、友人としても疎遠になっていたような気がする。


 けれど好きは好きだったので、苦しくて、彼女の顔はまともに見れなかった。


 とはいえである。

 流石に何年も前の恋を引きずっているわけではない。


 ただ、久々に会ったら可愛くなっていて、驚いた。

 そしてそんな美月と今から二人で宅飲みである。


 EDなのでそもそも性欲はないが、性欲抜きに話したいことが山ほどある。


 あれからどうしていたのかとか、今はどうしているのかとか。


 昔の話について語るのもいいかもしれない。


 一緒に飲むのが楽しみだ。


 そんなことに楽しみを覚えられるのもEDになったからだろう。

 こんな状況なのだ。

 もしEDではなかったら正直ヤることしか頭になかったかもしれない。


 一樹は今、初めて自身のEDに感謝している。


 そんな中身のないことを考えていると、脱衣所から美月が出てきた。


「お風呂ありがと」


 一樹が普段きている白Tシャツと部屋用の黒い長ズボン。

 それらをぶかっと着て、お風呂から出てきた美月は一樹にとっては刺激的だった。


 鎖骨どころか胸元まで見えていて、屈めば胸が見えそうなくらいにはサイズがあっていない。


 美月は首にかけたタオルで髪を拭いながら一樹に近づく。


「やっぱりちょっとサイズ大きいね、これ」

「す、すまん、それしかなくて」

「ううん、大丈夫。むしろ貸してくれてありがと」


 美月はニコッと柔らかく、惹き込まれそうな笑顔を浮かべる。


 そしてその笑顔に惚れそうになると同時に、美月の髪からミントのような爽やかな香りが漂ってくる。

 男性用のリンスインシャンプーの匂いで、一樹がいつも使っているものだ。


 一樹が普段使っているものを使っていて、美月から同じ匂いがする。

 それが美月の艶っぽさを助長させていた。

 

 とはいえ、男性用なので髪は傷まないだろうか、大丈夫だろうか。

 

 そんなことを考えていると、美月は自身の髪を優しく掴んで、それに鼻を近づけた。

 

「……ふふ、いい匂いだね。一樹と一緒だ」


 美月はまた艶っぽい笑顔を見せる。

 

 そんな笑みに一樹は一瞬ドキッとさせられる。

 反応しないはずのあそこが少しだけ熱気を帯びている。

  

「お、おう……ど、ドライヤーもあるから使っていいぞ」

「本当? じゃあお言葉に甘えて……一樹もお風呂入る?」

「ああ、乾かし終わったら言ってくれ。その後に入るから」


 なんとなく同棲している感覚を覚える会話に、心を不思議と躍らせている自分がいた。


 やがて、一樹も入浴を終えると、宅飲み開始である。

 脱衣所から出ると、座って待っていた美月の隣に座った。


「……お待たせ」

「一樹、ちょっとそこで止まって」


 しかし座ると同時に、美月に動かないように言われる。

 一樹がなぜだか理由を聞く前に、美月は一樹の顔に自身の顔を近づけた。


 そして突然、匂いを嗅ぐ。


「……ふふ、同じ匂いだ。なんか新鮮だね」


 そんなことを美月が言うので、半年間反応しなかった一樹の剣はほんの少しだけ男らしくなった。


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