第1話「再び拾われた剣/再び落ちた剣」
トレーの中に次から次へと乗せてる音だけじゃなくて、それと一緒に小さな声を出してるその姿を見てる間、私は何度も瞬きをするだけじゃなくて、同時に目を下の方で左右に動かす感じにしてる。
そこには四人分の机が並んでるけど、でも荷物が置いてあるのは私の机だけ。それ以外は掃除しきれてない汚れだったりが残ってるだけで。それらを照らしてる電気の白い光を見てたらなんだか口を強く紡ぐことになるし、メイド服のスカートを何度も握り直すことになりながらいることになる。
元々狭い生徒会室に事務机が四つもあるせいで歩ける範囲はだいぶ狭くて。そっちの方に寄ろうとすると、それだけで諸葉さんがしてる作業と手がぶつかりそうになって。すぐに元に戻すことになった。
「それもしまうぞ」
私が電気ポッドを持って相手の机で端っこに置いてあったカップの傍で傾けるけど、その中身が入るよりも先に向こうはカップをしまうために一度箱の中身を取り出してまでスペースを作ってそれを入れてた。
その様子を見てるだけで私は顔を斜め下に向けるような動きのまま、目線も同じようにしてて。そのまま目を閉じるけど、どっちの間も諸葉さんはずっと手を動かしてるみたいで物が置かれたりする音がずっと今までと同じように聞こえてて。こっちの顔はそのまま斜め下に向けた状態でいるのも数秒間。そのまま自分のツインテールも一緒に流すようなゆっくりさで窓の方を見る。
そこから外を見ながら縁に肩を乗せつつ唇を紡いで、そっち側の肘にもう片方の手を重ねる。でも、その両方に力を入れられないまま。
一方で、そっち側の方、いつも私たちが体育の時間で使ってた校庭はもう夕暮れというよりも夜に近いくらいになってて、赤色の空に黒い闇が交じり合ってる感じになってる。だけど、その一方で、生徒の皆さんがいる場所は大きな灯りがいくつも取り付けられていて、白く照らされてる。
そこでは次から次へと大きな荷物をバスに入れてはそれに乗ってる人たちがいて。その人たちはみんな私の方に背中や後頭部を見せてるだけ。傾けて横にいる人と話しながら進んでる人もいるにはいるけど、それですらも私の方に表情は見えない。
ただ、その人たちもいつの間にかバスに乗りきるとその中が満員になったみたいで、他の人たちが乗ってるのを尻目にすぐに出発。私がいる生徒会室で、上から眺めてる方から見るとバスも人もとっても小さい。だけど、それでもどんどん時間だけが過ぎていく中でそれらは遠くに消えていくし、こっちからしたらそのエンジンの音すらも聞こえない。
「世話になったな」
荷物をカートの上にいつの間にか乗っけてる諸葉さんが、私の方に向き直ってから顔を上げてくる。その手には、昔使ってたって言ってた刀が握られてて。ただそれ以外では両方の腕をまっすぐに落っことしたまま立ってるだけ。
でもそう思ってるのは数秒後、向こうの方から口を潰すみたいな感じにしながら顔を下の方に向ける。続けて、鼻から息をゆっくり吐きながらいて。私も自分の胸に手を押し付けながら足を一歩前に出したけど、でもその瞬間に開いてる方の手を前に出してお互いの体の間に置くみたいにしてる。
「すまぬ、何も言うでない」
その声を出してる間、諸葉さんは目を閉じながら顔を左右に小さく振ってて。それが終わってからは顔を同じ向きにしたまま目も同じにして何も言えない状態が続く。部屋を涼しくしてるエアコンの音だけが聞こえる中で私も向こうもずっと同じようになってる。
最初に沈黙を破ったのは相手の方で、ため息を吐きながら机の上に刀を鞘に入れたまま置く。でも、それでもほとんど力を入れてなくてもそこから手を離すことはしない。
それから上の瞼を落っことしたままそっちの方を見ている諸葉さん。最初は刀を見つめるだけだと思ってたけど、それは私が相手の顔だけをただ見つめてただけだったから。向こうがもう一度それを手にして後ろに下がった時に、途中でその先に私を含めた生徒会メンバー四人が集まった写真が見つかった。
もうこの部屋の引き戸のところまで行っちゃってる相手の様子を遠目に見るこっちに対して、向こうはその場でじっと静止。私にはそっちの様子は背中しか見えない状態だったけど、でも、それでもこの部屋の机が、もう私の以外全部もぬけの殻になってる様子も一緒に見ることになった。
「ミュセルにだけは聞いて欲しい。正直に言うと我も、怖い。アニタは殺そうと思えばすぐに我を殺せる」
諸葉さんが引き戸とその枠にそれぞれを手を重ねたまま、そこでほんの少しだけ肘を折り曲げてて。その状態のまま少しだけを顔を落っことしてる。レールよりはこっち側、足はまだギリギリこっちの部屋の中に置いてある。だけど、その一方で、廊下は電気が付いていないせいで夕暮れの光が全く届いてなさそうな結果、そこは夜の濃い青と黒が交じり合ったような色をしてる。
元々は白いはずの廊下もその色に染まりあがってる姿を見てるはずだけど、その向こう側にある窓のさらに先の中庭に植わってる木々は、完全に真っ黒な色に染まりあがってた。
「それでも、これは我にしか出来ないことだ」
それだけ言うと、足音を無理やり立てる感じで諸葉さんは廊下の中を進む。ドアが閉められた後もずっと少しだけ籠ったような足音だけが聞こえてた。そんな中で私は置きっぱなしになってた電気ポッドを取って置き場に戻したら、それをほんの少しだけ撫でるみたいにその持ち手に触れる。まださっき入れたお湯の温かい感覚がそこに残ってて。それをほんの数本の指から伝わる温度だけで感じ取ってた。
しばらく生徒会室のパイプ椅子の上で顔も髪の毛も落っことしたまま、自分の膝の上に乗っけた手を指だけで組み合わせてる。ただ、その間、さっきまで閉じた状態にしてた窓をちょっとだけ開けてたせいもあって、そっちの方でバスの最後の一台が発進してどっかに消えてく音がする。
それからはほんとにどこからも音がしない状態が続いてて。肩を落としたままただ時間だけが過ぎてく状態が続く。それでも、私の視界の中には自分の前に置いてある事務用品だったりファイリングされた生徒たちのプロフィールがまとまってる書類が置いてあったりする。
ただそこにいるだけにするつもりが、何度も続けて起きる大きな爆発音のせいで体を一気に立ち上がらせながら、壁の方を見るだけにしてる。小さく目を開けながら口も同じくしてるだけで、背中も小さく丸めるまま立ち上がってた。
だけど、それと一緒に私がいる生徒会室の様子が変わることなんて何もなくて。ほんの数秒後にはさっきまでと一緒で何も音がしないだけに。だけど、顔をまた斜め下の方に向けたら、そっちに生徒会メンバー四人で撮った写真と、さっきまでは道具箱の裏になってて見えなくなってた写真がある。
手作りの安っぽい以前のメダルを下げられたまま、特にポーズは取らないで腰の辺りで両手を小さく重ねてるお嬢様の姿。私はそれの目の前にいるけど、皐月宮でのお仕事をしてる間に作った道具箱の影にあるせいでその写真立てに反射してるのは箱の後ろにあるラベルだけ。
それに向けて手を伸ばそうとしたけど、自分の下の唇に軽く力が入ってるのを感じた途端にそれを元に戻そうとして。工具箱を咄嗟に前に出しながら写真立てを倒した後に外に向かって走って行って。
出てから数秒間髪の毛と両手足を振り回しながら走ってたら、その直後にさっきの爆風がまた起きて、窓がすごい勢いで揺れてるだけじゃなくて。校舎の向こうで大きな振動が起きてたのがこっちにもわからされた。
「諸葉さん!」
大きな声で柵から身を乗り出す。一緒に自分の声を出来るだけめいっぱい張るくらいの気持ちでそっちに向けて出した。だけど、それでも諸葉さんは今もアニタさんを前にしていくつものドローンから逃げ回ってるだけ。
さらに、こっちはそれに対して何が出来るわけでもないどころか、そっちから私のいる二階にまで入り込んでくる煙のせいで、何度もせき込むことになる。結果として、体を後ろに下げることになるし、視界も腕で見えなくすることになる。
一方で、そっちの方からは私が見えれないだけで何度も大きな足音だったり掛け声だったりがしてる。そっちでドローンも次から次へと破壊される爆発の音もして、それを見たいのに熱くて体が近寄れなくて。気づけば大きな地震ぐらいの振動と音のせいで頭を抱えながらしゃがみ込んでた。
それからしばらくは、ずっとその場で動けないだけの時間があって。息を整えようにも咳が止まらなくて。目を限界まで瞑りながら辺りでずっと燃える音だったり建物の一部が崩れる音だったりを聞くことしかできない。
特に二番目の方が来るたびに、私は頭を抱えた腕を引き締めるような形で力を入れることになって。それだけで口を横へと中途半端に開くようなのから息が溢れる。だけど、それにでも聞こえるのは今までのと何も変わらない。そんな中で私はただ廊下の冷たいのだけを感じてることしかできずにいた。
辺りが静かになったころ、辺りは塗装が崩れた元は校舎だった建物の残骸だけが広がってる様子。それらが顔をゆっくりと上げながら両方の腕を落っことしてる私の前に広がってる。そんな中で顎をほんの少しだけ持ち上げたまま、目もその流れに任せて動かして上の方を見てた。だけど、そっちの方では建物が崩れたせいで太陽の光も届かなければ壊れた電気がわずかに付いたり消えたりを繰り返してる程度。
そんな中で、何とかどけられそうな瓦礫を、魔法少女に変身しなくても発揮できる自分の体の魔力を使いながら移動させていって外に出たら、そっちの方で大きな穴。一階の床はもちろん、その下に地下一階も貫通してる上に校舎の入り口になる下駄箱がいくつも並んでたのが全部ひしゃげてたり中途半端な形で両断されてる様子が広がってる。
そっちを見てるだけで自分の足がただ数歩ずつだけど、小さく下がっていってた。
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