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3 そして巡り合う2

王国軍の演習が始まって3日が経った。


夜になると、演習終わりの貴族や兵士たちが町に来るようになり、この静かな港町が一気に賑やかになった。


町の若い女性たちは王都から来た王国軍の男性たちに憧れているようで、遠巻きに羨望の眼差しを送っていた。

貴族の中にいた頃はエルは特に思わなかったけれど、確かに、貴族の出身者が多い王国軍の男性たちを見たら、町の同い年くらいの男性たちよりも洗練されていてスマートに見えた。

そんな男性たちも、その中で好みの女性がいれば声をかけに行っているようで、楽しそうに話をする輪が町のあちこちにできていた。その若い女性の母親たちは、貴族の方に平民のあなたたちが真面目に相手にされるわけないんだからやめなさいと苦虫を噛み潰したような顔で娘たちに説教をしているようだったが、浮かれた彼女たちにはほとんど響いていなさそうだった。


そしてエルは、そんなものには全く無関係であり、楽しそうな同年代の若者たちを横目に食堂で黙々と仕事をしていた。いつまでも演習があったらいいのにとぼやく若い女性たちとは反対に、エルは、なるべく早く終わってくれないだろうかと懇願していた。

なぜならば、いつ自分の顔を知る貴族が現れないかと内心ヒヤヒヤしていたからである。そこからあらぬ噂が回ってこの町にいられなくなってしまったら…。そう思うとエルは、夜もゆっくり眠ることができなかった。




夜の営業時間には、この食堂にも王国軍の男たちの姿が見受けられた。この町にはほとんど食事ができる店もないため、ここに集結してしまうのは仕方のないことだった。エルはなるべく顔を伏せて、しかし悪目立ちしないように接客をした。エルが気にせずとも、王国軍の男性たちは一緒に食事をする村の若い女性に興味がいっているので、エルが注目されることなどなかった。


「、せん…すいません」


背後から声をかけられて、エルは、はっとして振り向いた。するとそこには、銀色の長髪を纏めた、優しげな線の細い男性と、茶色い短髪の体のがっしりとした男性が席についていた。ここで食事をする王国軍の男性たちにしては珍しく、男性のみの相席だった。エルは、はい、と返事をして彼らの元へ向かった。エルを呼び止めた銀髪の男性はタレ目が特徴的で、華やかな貴族の男性たちの中でも一際見目麗しい人物だった。


「おすすめは何ですか?」


柔らかな口調で彼はそう尋ねた。エルが、ええと、迷っていると、じゃあ、と彼は続けた。


「あなたの一番好きな料理はなんですか?私はそれにします」


彼の質問に、エルは少しどぎまぎしながらも答えようとしたら、向かいに座る茶髪の男性が、なんだよ、と言った。


「軍で出る食事は飽きたって言うからついてきたのに、結局女を口説きに来たのかよ、フィリップス」

「違うよハロルド。というか、女性を口説くのが好きなのは君の方だろ?」

「こんな田舎でそんなみっともないこと、俺はしない。恥ずかしくないのかね、貴族がこんなところで遊ぶなんてさ」


ハロルドは、ふん、と周りの男たちをばかにするように鼻を鳴らした。フィリップスにばかり注意がいくが、彼もまた目立って顔立ちの整った男性である。

フィリップスは、はいはい、と笑った。


「私だって空腹なだけだよ。せっかくなら美味しいものを食べたいじゃないか。ねえ、君もそう思うでしょう?」


フィリップスはまたエルに話を振った。エルが困惑していると、だから口説くなっつの、とハロルドは突っ込んだ。そんな2人のやりとりにエルが苦笑いをしていると、他の王国軍の男たちと相席している女性たちですら、この2人に視線を移しており、面白くなさそうに他の男たちが頬杖をついていることに気がついた。エルは、はやく注目を集める彼らから離れたくて、ええと、と慌てて答えを探した。


「か、海鮮のスープ…です」

「ああ、素敵だね。私はそれにしよう。それとパンをいただけるかな」

「俺も」

「少々お待ちください」


エルは頭を下げて足早に去ろうとした。するとフィリップスが、ねえ、とエルを呼び止めた。エルははやく去りたい気持ちを隠しきれない様子で振り向いた。フィリップスはエルをみて、口元に微笑を浮かべた。


「君、所作がきれいだね。どこで習ったの?」

「えっ?」


エルは目を丸くしたあと、えっと、ありがとうございます…、とお礼を言うと、質問には答えずに去った。もしかして、あの人とどこかで会ったことがあっただろうか、とエルは不安に思いながらも、考えても仕方ないと頭を振り、厨房に戻った。

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