おはよう!①
薄暗い部屋の中、小鳥の声が朝が来たことを伝えてくれるように
せわしく鳴いている。
「ああ、朝か・・・」「朝だな」「まだ眠いよ~」
ぼんやりと朝のまどろみを楽しむ時間は至高だなと
体を右へ左へとゴロゴロと転がし徐々に眠気を飛ばしていく。
床板の上で。
部屋自体はそれなりに広さがあり
部屋の横幅は両手を広げた大人の人間が2人いれば
届く程度
奥行きは出入り口扉から反対側の窓まで
大人が寝転んで縦に3~4人分の長さである。
その内にホテルのシングルルームよろしく
備え付けの設備としてシャワールームとトイレそして物置。
備品として勉強机に椅子、そしてベットがある。
そのベットは床面積を確保するため壁に立てかけられている
状態ではあるが。
確保した床いっぱいに僕の体が広がっている。
黒くてフサフサした毛、前世の記憶で言えば
おおむね犬の形をしているだろう。
その大きさと
頭が3つ有るということを除けば。
前世の記憶でも、今現在の記憶でも
『ケルベロス』と呼ばれる魔獣の姿である。
「伸びる伸びる」「あぁこの開放感がたまらねぇ」「びろ~ん」
と両足を開き股をかっぴろげて、あおむけ寝していると
ドンドンドン!!
「起きろ!ルベール!飯の時間だぞ!」
と出入り口の扉を叩く音と大声で僕を呼ぶ声が聞こえる。
大きな声と音にビクッとして3つの顔を反射的に起こし
音のした扉の方を見つめてしまう。
しまった、ちょっとまどろみを楽しみ過ぎたか
「起きたよ、ハリアー。ちょっとだけ待っててくれ。」(…)(…)
声を掛けてくれたのは、クラスメイトで
この学生寮の隣の部屋の住人でもある、ハリアー君である。
僕はくるりと体を反転させ、頭を下げた”おすわり”の
体勢をとると呪文を唱え魔法を実行させる。
「闇よ、纏いて不明の者は真の姿を消さん。『メタモルフォーゼ』」(…)(…)
黒い円状の魔法陣が僕の体の下と上に現れ、上部の魔法陣から円柱状に黒いカーテンが
降ろされる。一呼吸後には、黒いカーテンも魔法陣も消え
一人の少年が部屋の中に現れていた。
黒目黒髪、ちょっとあどけなさを残した顔つき。
これが僕、ルベールの人間での姿だ。
ただ現在は、真っ裸である。
とりあえず、立てかけたベットにのっけて置いた
パンツを履く。ちなみにトランクス派である。
そして窓に寄りカーテンを開け放つ、ちょっと重い。
外から見られないようにと厚手のカーテンを念のために二重に設置しているので
少々重いのだ。遮光性はバッチリなのでカーテンを開けないと日中でも部屋の中は薄暗いほどだ。
開け放つと同時に薄暗かった部屋に太陽の光があふれる。
今日もいい天気だ。
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