魔物暴走の兆候
アツシはヤスカベ村に到着した。
「すげーでっけー。なんか鳥居に似てるな」
ヤスカベ村には、神の社があることで有名であった。
社には大勢の神官がいる。
町にも、神官風の人が沢山目についた。
ここまで旅をしてきたアツシは、少しお金が乏しくなってきたので、ちょっとステーションで仕事を探すことにした。
ヤスカベ村ステーション
「すみません、仕事を探しているんですが」
「先ずはカードを見せてください」
「はい、これです」
「初級2ね。そうすると、討伐なら、コボルトがあるわね。それから畑の手伝いもあるわ。どちらにする?お金になるのは畑の手伝いだけど」
「コボルトにします」
「そしたら、この紙に地図と探索内容の詳細が書いてあるから読んでおいてね」
「コボルトは、たくさんいて、一般の人たちは迷惑をこうむるのに、依頼料が低いからみんなやりたがらないのよ。だから助かるわ」
「それじゃ、行ってきますね」
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ヤスカベ村北の森
「ここから畑を荒らしに出てくるのか」
「コボルトも風船にできるかな?出来なきゃ、畑仕事にしよ」
アツシが警戒しながら歩いていると、コボルト3匹が狩とった小動物をむさぼり食べていた。
アツシが見ていると、一匹がアツシに気づき近寄ってきた。
後の2匹は、1匹がいなくなり、これ幸いとバクバクと食べ続けていた。
コボルトは武器を持っていなかったので、その鋭く長い爪でアツシに襲い掛かった。
アツシは、それをかわすと、持っていた剣でコボルトを斬ってみた。
すると、普通にコボルトを斬る事ができた。
今回は特に破裂はしなかった。
1匹がやられたのを見て、残りの2匹がアツシに向かって来た。
アツシは、風船を思い浮かべてみた。
そして、斬りつけると、2匹ともパンッと割れた。
コボルトは、核を残さなかったので、ステーションの指示書の通り、左耳を回収した。
「やっぱりイメージしなくちゃいけなんだな」
アツシはその後コボルトを風船にして倒す練習を繰り返した。
そしてコボルトの左耳をステーションへ持って行った。
・・・・
「コボルトの討伐からもどりました」
「ご苦労様でした。そしたら、左耳を見せてください」
「今日は20匹を討伐できました」
「それはなかなか大漁でしたね。確認しますので、ちょっとまっててくださいね。
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「アツシさん、ちょっといいですか」
「これはどこで討伐しましたか?」
「えっと、指示書の通り、北の森ですけど」
「討伐してきたのは、コボルトではなく、ゴブリンでした」
「なんかまずかったですか?」
「いえ、アツシさんがまずいわけではないんですが、ゴブリンがこれだけ出てくるという事は、もしかしたら、暴走の予兆かもしれないんですよ」
「とりあえず、ゴブリン20匹の討伐の支払として、300メルをお渡ししますね。それともしこれが暴走の予兆だった場合は、その発見者として、更にプラスして支払われますので、数日待っていてもらいたいのですが、可能ですか?」
「分かりました」
「それで、暴走かどうかについては、いつ頃分かるんですか?」
「今、上級ランクの探索者たちで確認しに行っています。帰ってきたら分かりますよ」
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翌日ステーションに行くと、少しあわただしかった。
「どうしたんですか?」
「ああ、アツシさん。北の森ですけどね。上級探索者が確認して帰ってきたのですが、やはり暴走の兆候が見えました。それで暴走にならないよう処理する事になって、今その処置するための探索者の募集をかけていたんですよ」
「初級2の僕も参加できるんでしょうか?」
「そうね。既に単独でゴブリン20匹を倒す実力があるので、大丈夫だと思うわ」
「じゃあ、登録する?」
「お願いします」
・・・・ 翌朝6時
「よーし、みんな集まったな」
30人の探索者が集まっていた。
上級1が5名、中級2が15名、中級1が7名、初級2が3名。
ステーション責任者のガウスから、今回の討伐に関する詳細の説明が行われた。
今回、北の森で発生しつつある暴走は、かなりの大規模であり、最悪はエンペラーの存在が危惧されている。
中級1と初級2の10名は、ゴブリン、ホブゴブまでの討伐に専念する。
中級2は、上級と洞窟内に突入し、キングレベルを打ち取る事にする。
ゴブリンエンペラーは、ゴブリン種で最悪最強であり、人間に近い知能、武器の使用、言葉の認識ができる。
極稀に、言葉を発し、複数のゴブリンキングを統率する、超越体というのもあるが、可能性は低い。
超越体の場合は、国軍や特級レベルの探索者の協力を要請する必要がある。
仮に、エンペラーの存在が明らかになった場合は、引き上げる、という事であった。