じっちゃんと孫
辺りも暗くなってきた。
「今日も野宿か。。。」
「そういえば、マジックバックに入れた食べ物って何があっただろう」
「家から出るときにもらった干し肉、途中の道で取ったキノコくらいか」
「じゃあ、今日はこれを全部お湯にいれてスープにするか」
アツシは、いつもの通りおもちゃの家をつくり、かまどを作り、火をたいた。
アツシの作るものは、おもちゃっぽい形状をしているだけで、ほとんど実用可能であった。
・・・・
「あーあ、お腹いっぱいになったよ」
「でもちょっと、お腹が痛いな。。。」
「いや本当に痛い。いた。いたたたたた」
「今食べたキノコかな?」
(そういえば毒キノコを食べた後に、体からキノコが生えるアニメを見た事があったけど、あんな風になったら嫌だな)
などと考えていたら、体がむずがゆくなり、服のお腹の部分が盛り上がってきた。
「なんだこれ?」
「キノコ?体からキノコが生えた!」
アツシは、驚き、キノコを体から取り去った。
すると痛みが消えた。
「このキノコが痛みを取ったのか?」
「落とし穴といい、漫画やアニメの事を考えると、それが現実になるのか?」
「それじゃ、例えば空を飛ぶとか?」
「いやいや、それはないよな、いくらなんでも。ねよねよ」
-----☆
ニッキド町近傍ゴミ捨て場
アツシは、おもちゃになりそうなものを探した。
「なんだこれ?赤い液体と青い液体?」
「あ、あった。剣と弓。やっぱりこれくらいしかないか」
「おい坊主、何している」
「あ、すみません。ちょっと掘り出し物がないかと、見てました」
「ゴミから掘り出し物だと?面白いことをいうな、お前」
「。。。見ない顔だな?」
「僕は探索者のアツシ・マトバと言います」
「その歳でか?まあそういう奴もいるか。それにしても珍しい名前だな。アッシ・マトゥバか」
「え?まあ、はい、そうです」
「ワシはこの町の町長のマーゲッタ・オッタル」
「そうでしたか、オッタル町長。失礼しました」
「まあ、よいよい」
「それで、掘り出し物は見つかったかな?」
「ええ、この剣と弓を見つけました」
「それが掘り出し物だと?」
「はい、これが、こうなります」
キラン、シュワン
「これはオッタマゲタ、おもちゃの剣と弓になったのか?」
「僕のギフトは“遊ぶ”というもので、いろんなものをおもちゃにして、子供にあげたりしています」
「ほぉー、ずいぶんと素晴らしいギフトをもらったもんだな」
「そうなんですか?僕はこのギフトのおかげで、家を追い出されました」
「なんと、とんでもない親を持ったもんだな」
「いえ、おかげで旅に出られて、面白いことが沢山見つけられてます」
「お前、性格もええのお」
「普通ですよ」
「よし、気に入った。今日は家に泊まれ。色々話をしようじゃないか」
「あ、ありがとうございます。ほんとにいいんですか?」
「何を遠慮するな、わしは町長じゃぞ」
-----☆
町長宅、夕食を食べながら
「それで、お前はアルメディア子爵の三男ということか」
「実はそうです。まあ親に迷惑をかけたくないことや、身を隠したいなど色々な意味で名前を変えています。」
「なるほどな。わしも秘密は守ろう」
「ありがとうございます」
「ただな、お主のギフトは、かなり目立つでな、名前を変えても親にはバレるぞ」
「そうですかね。やっぱり。街道の出店の人にも言われました。」
「出店?街道にか、珍しいな」
「ラウェップからこの町へ来る途中の道ですよ。移動式なのかな?」
「それでどのような連中であった?」
「サキアスというご夫婦です。」
「なに、サキアス夫婦じゃと?」
「そうですが、なにか?」
「奴らめ、この近辺で何を企んどるんじゃ?」
「そんな悪い人には見えませんでしたが」
「今は悪い奴等ではないと聞いておる」
「昔はひどかったみたいな言い方ですね」
「噂ではかなりひどかったな」
「でも、上級1ランクって言ってましたよ。上のランクの方であれば、対処できるんじゃないですか?」
「何が上級1じゃ。奴らは既に探索者を辞めておる。実力的には、特級という話じゃ」
「そんな凄い人だったんだ。。。。」
「それで奴らに何と言われたと?」
「ユニークかもと」
「。。。ユニークか、まあ本当にそうだとしても、”遊ぶ”は大丈夫じゃろ」
「大丈夫って、ユニークだと何か問題でもあるんでしょうか?」
「そうじゃの、ユニークは、非常に数が少なく、大抵強力な力を持っておる。場合によっては国家の軍事力を左右するほどじゃ」
「例えば、西の端にエルステッドという国がある。この国王は有名なユニークギフト持ちじゃ」
「どのようなギフトなのでしょうか」
「奴は、”飛行”というギフトを持っている。奴の乗る空飛ぶ船は、世界にとって、大きな脅威じゃ」
「そして北の端は、ゴーセン国、このシオウ騎士団長は”瞬間移動”、東のスカガ国の魔女ギャザンの”碧眼”、こいつが一番恐ろしいかもしれないの。そして南のサーワ国の闇の軍団長ヤッカドの”腐敗”など、とんでもないものがある」
「そう考えると、僕の”遊び”は平和的で、良かったです」
「そうじゃの、わしもそう思う。じゃが、もしかしてレベルが上がって、使い方次第では恐ろしいものになるかもしれん。お前さんだから大丈夫だとは思うが、それを利用しようとするやつがおるかも知れん。気を付けることじゃ」
「ありがとうございます」
-----☆
翌朝
「色々とありがとうございました」
「それじゃ、気を付けてな」
「はい」
アツシは、次の町ヤスカベに向かった。
(誰かついてきている。。。。絶対についてきてる)
しかし、後ろを見ると誰もいない。
暫くそのまま歩いた。またついてきている。
「誰?僕についてきているのは?」
僕は気配を感じる能力なんてないけど、僕が歩き出すと、歩調を合わせて歩く音が聞こえてくる。
僕は走った。怪しいやつかもしれない。
走りながら後ろをちらりとみると、黒い影が移動しているのが見えた。
僕は、影が動くところの足元の土が急に盛り上がったら、転んだりするのかな?と考えてしまった。
すると土が盛り上がり、黒い影は、すごい勢いで足を躓くと、ゴロゴロゴロと何回転もして、草むらまで転がって行ってしまった。
僕は、そのまま走って逃げた。
その後、黒い影は追ってこなかった。
途中、集落があったので、休憩がてらお茶屋に入った。
いつものように、お茶とお団子を頼んだ。
暫くすると、傷だらけの女の子が入ってきた。
「ちょっと、あなた、酷くない?」
「はい?僕ですか?」
なんで初対面の子に怒られないといけないんだ?
「あなたね、足を躓いた私を置いて知らんぷりして行っちゃったでしょ?」
「何のことですか?一体あなたは誰ですか?」
「私は、チャコル・グレイよ。ニッキド町長の孫。あんたを追跡してたの」
「町長さんは、オッタルさんですよね、グレイさんではないはずですよね?」
「町長の娘が私の母親なの。それであなた、なんでじっちゃんと仲良くしてたわけ」
「そういわれても、オッタルさんが、家に誘ってくれたんですよ」
「だから何でよ」
「知りませんよ。直接オッタルさんに聞けばいいじゃないですか」
「あのね、そんなこと出来れば、こんなことしてないの」
「何がどう気に入られたのか、それを教えて欲しいのよ」
「僕にもさっぱり分かりませんよ。なんだか、急に気に入られただけです」
「あのじっちゃんが、そんなに簡単に人を気に入るわけないわ。だからあんたを追跡してたのよ」
「チャコルは、なんでそんなに気に入られたいの?」
「じっちゃんはね、凄いのよ。私は今度10歳になるの。そして王都のアカデミアに行かなくちゃならないのね。だからじっちゃんの孫として恥じないようにしたいわけ」
「急にチャコルとか言わないでよ」 チャコルは赤くなりながら小さな声で言った。
「そうなんだ。僕の兄も2人が王都のアカデミアに行ってるよ。僕は落ちこぼれたから追い出されて、探索者をやってるんだ」
「へ?落ちこぼれて探索者?あんたも貴族だったの?」
「追い出されたから、貴族だったというのも恥ずかしけどね」
「ところでチャコルは、ニホンって知ってる?」
「ニホン?二本?なにそれ?食べ物?」
「昔あった国の名前さ」
「へー知らないわ。なんか誤魔化さないでよね。あんたが気に入られた理由を知るまでは、つきまとうから」
「僕は、これからハーレに行って、そのあと王都に行くんだ。きみは帰った方がいいよ」
「そんな遠くまで行くの?」
「。。。。分かったわ、一旦あきらめる。だけど、王都に行くなら、そこで会いましょう」
「え?ああ、そうだね」
「それじゃね」
「あ、うん、それじゃ」
「。。。。あっさり行ったな、なんだったんだ?結局」
(あっ、忘れ物)
チャコルは、指輪を忘れていた。
その夜
「ないないなないない。。。。。。」
「指輪が無い~~~~じっちゃんからもらった大事な指輪だったのにぃ~~~~無くした。。。。」