6人目
「チェシカさん、ただいま」
「アツシ、おかえり。どうだった」
「初めての仕事だったけど、疲れました。子供達元気良すぎです」
「そうよね。まあ、そのうち慣れるわよ。そしたら、今日の分ね。
「250メルももらえるんですか?ありがとうございます」
「あのーそれで、安い宿を探しているんですけど、どこかありますか?」
「オイモさんのところがいいかな、ちょっと古いけど、朝食付きで150メルくらいだったから」
「そこにします。どこでしょうか?」
「目の前の建物の裏よ。オイモの宿って書いてあるわ」
「わかりました。行ってみます」
・・・・・・・・
(ここか、オイモの宿)
「こんにちは」
「はい、いらっしゃい」
「ステーションのチェシカさんに紹介されてきたんですけど、2泊でお願いできませんか?」
「そしたら、300メルだけど、持ってる?」
「これでいいですか?」
「はい、ちょうどだね」
-----☆
こうして、一週間が過ぎた。
今日もアツシは、仕事をしていると、その日はチーカという子の兄が遊びにきた。
チーカの兄は僕と同じ年だった。
チーカの兄のギフトは、”究極の体力”とかいう物であり、1週間は不眠不休で遊んでいられるらしい。
最近は、体力が余り過ぎて、アルメディアの近くまで何往復も走っているらしい。
かといって、筋肉もりもりというわけでもなく、見た目は普通であった、全く以て不思議な子供であった。
「お前、おもしれーギフトだな、それ」
「そーかな?」
「うん、見たことねー」
「俺にも何か出してくれ」
「きみは何で遊びたいの?」
「そうだな、高く飛びたいな」
アツシは、簡単に棒高跳びの様な道具をつくった。
「お、これいいな」
というと、そいつは、棒を使って、見事に高跳びをやってのけた。
アツシは、高さをどんどん高くする。棒も長くなる。
ついに5mくらいになった。
そいつは、助走をとり、棒を担いで走ってくると、担いだ棒を地面にぶっさし、足を振り上げようとしたら、棒がバキッと折れた。
「イテテテ」
「お前さ、これはもっとしなるはずだろ?」
「あー竹で作ればよかったね」
「いや竹じゃないやつだよ」
「竹じゃないやつ?」
「どんなの」
「。。。。いや、いいや別に」
「君の名前は?」
「俺は、レンツ・マキアス」
「お前名前は?」
「アツシ・マトバ」
「。。。。。。。。」
「マトバ?」
「どうかした?」
「マトバって、アツシ?」
『君、ちょっと来て。絶対に大きな声を上げないでくれよ、いいかい。そう、僕はアツシだよ、僕は、的場敦』
『君は誰?』
『俺は、あじがわ、安治川順平だよ』
『やった。これで6人目だ』
『他にも見つけてるのか?』
『ああ、王都に少なくとも3人と、ハーレ領の娘1人の計4人は確認できてる』
『スゲーな』
『的場とはあまり話したことなかったけど、今後について色々話をしたいな』
『うん、僕も同じ意見だよ』
僕は、ここでしばらく滞在したら、アイリス(加藤美咲)に会って、王都に向かうとした。
順平は、今すぐに親から離れるわけにはいかないが、数年で独立して、後を追うと約束してくれた。
順平は、船北中の陸上部の部長で、長距離では、県でもベスト3に入る実力を持つ。‘‘究極の体力“を持つ順平がその気になれば、どれだけ強くなるのか想像がつかない。
順平は、僕のギフトの事を聞いても嫌な顔をせず、みんなで実力をつけてクランを立ち上げたいなどと言ってくれた。
僕はそんなことを考えた事も無かったが、みんなが見つかれば、そんなこともできるかもしれないと思い始めた。
なんだか、希望が湧いてきた気がする。
-----☆
結局、僕はこのアズブリー町に2か月近く滞在して、毎日子供たちの面倒をみた。
それはそれで楽しい時間ではあったが、ジュンペイが度々訪ねてくるようになり、アツシは、チーム立ち上げの話が頭を離れなくなっていた。
アツシは、この町に滞在中、自分と同じ年の子供を見つけると、なんとなく話しかけ、様子を見たが、ジュンペイ以外の異世界人は見つけることが出来なかった。
少しお金も溜まったアツシは、アズブリーから移動する事とした。
お世話になったこども園に挨拶を済ませると、ステーションへ行き、チェシカに借りていた1000メルと利息を返した。
「アツシ、2か月間よく頑張ったわね。あなた、初級2へ昇格したわよ」
「え?こんなに早く昇格したんですか?」
「そうよ、普通は、半年から1年はかかるけど。園長さんが、あなたが作ってくれた遊び道具にだいぶ助けられたと言って、推薦したのよ。あの園長とここのマスターが仲良しというのもあるわね」
「そうなんですか、ありがとうございます。マスターにも宜しくお伝えください!」
「そういえば、2か月しか経ってないのに、もう台が無くても、目は見えるくらいの背の高さになったわね。子供の成長って早いわね~」
「それで、これが新しいカードよ。初級2ね。ここから先は、少し年月が必要かもしれないけど、めげずに頑張ってね」
「ありがとうございます」
外に出ると、ジュンペイが待っていた。
「アツシ、行くか」
「ジュンペイ、待ってるからな」
「ああ、すぐ行くよ」
「僕達のチーム、楽しみだよ」
「俺も楽しみでしかたねー。体力有り余ってるしよ」
「だよね~」
「はっはっは」
「じゃあ」
「おお」
二人は固い握手を交わすと、アツシは次の町へ旅立っていった。