探索者登録
アルメディア領とは異なり、家の壁がみんな白く、屋根は黄土色で統一されている。
町の旗であろうか?カラフルな旗があちこちで揺れていた。
「ステーション、ステーション。。。。」
ドン、
「いったぁー」
「子供がふらふら歩いてんじゃね~よ、まったく」
「ご、ごめんなさい」
・・・・・・・・
「あ、リンゴだ!」
「すみません。このリンゴ一つください。それとステーションの場所を教えて頂けますか?」
「リンゴね。5メルね」
「じゃあ、これで、、、、あれ?ない」
「坊主、お金ないのか?お前、やられたな」
「やられた?」
「スリだよ、スリ」
「泥棒ですか?あー」
「ステーションに行って、一応届出してきな。犯人が捕まるか分からんが」
「ステーションは、ここをまっすぐ行って、右に曲がれば、デカい建物が見えるからすぐわかるからよ」
「そうでしたか、ありがとうございました」
(なんてついてないんだ。僕がぼーっとしていたからかな)
アツシは、早速一文無しになってしまった。
この世界のステーションは、多くの機能を持っている。
一つ目は、役所、住民の登録やインフラの整備、困りごとの受付などの行政を行っている。
二つ目は、警察組織、この世界では、自警団と言っている。
三つ目は、探索者の管理
四つ目が、お金の管理。すなわち銀行
「ここがこの町のステーションか、大きいな」
(そういえば、アルメディアには、ステーションが無かったけど、なんでだろうか?)
(まあいいいや、先ずは、探索者の登録からやろう)
「えーと、探索者の登録は。。。。2階か」
「ここだ」
「すみませーん」
カウンターが高すぎて、近くに来ると受付の人が見えない。
アツシは少し下がると、手を振って、「僕です」と言った。
「そこに台があるから、使って」
受付のお姉さんに言われアツシはカウンターの前に台を持ってきて、その上に乗って話をした。
「すみません。探索者登録をしたいんですけど」
「きみが?」
「あの、これ」
そういって、ナイルズに書いてもらった紙を見せた。
「ナイルズが書いたのね。だったら問題なさそうね。いいわよ。登録しましょう」
「登録料持ってる?」
「お金かかるんですか?」
「そうなの、持ってない?」
「さっき道でお金をスられちゃったみたいで」
「いくらやられたの?」
「金貨30枚です」
「え?そんな大金を持ち歩いてたの?」
「家から追い出されたときに持たされたお金です」
「全財産ってこと?」
「そうです」
「ちょっと待って、今調書つくるから。絶対に捕まえてやる」
「人相は分かる?」
「服装と髪型くらいしか分かりません」
「それでいいから教えて」
・・・・・・・・
「じゃあ、これで手配をかけるわね」
「宜しくお願いします」
「それで、まだ名前を言っていなかったわね。私はチェシカよ。で、登録よね。ここに必要な事を書いてね」
「お金はいいんですか?」
「探索者には、低金利で融資が出来るから、後で返してくれれば問題無いわよ。とりあえず1000メルにしておくわね」
「よかった」
渡された紙を見ると、出身、名前、年齢、ギフトなど記載する事になっていた。
・出身:アルメディア領
・名前:アツシ・マトバ
・年齢:10歳
・ギフト:遊ぶ
・・・・・・・・
「記入終わった?少し待っててね」
・・・・・・・・
「アツシ、出来たわよ。これね。初級者のカード」
「ありがとうございます」
「探索者について少し説明するわね」
探索者の歴史は古く、1500年前から続いている。
探索者は当初、冒険者やハンターなどと呼ばれており、秩序の無い時代が長かったが、300年前に探索者連合が発足し、今では世界中で統一された規格となっている。
探索者のランクは7段階あり、初級1、初級2、中級1、中級2、上級1、上級2、特級に分かれている。
世界には約50か国あり、人口は凡そ20億人いる。そのうち探索者は、100万人程度、凡そ2000人に一人の割合である。
特級は、世界中にも数えるほどしかいない。探索者の9割は、初級2から上級1までのレベルである。
探索者の主な仕事は、世界中で未だ確認が済んでいない洞窟等を探索し、有用な鉱石、マナエネルギー資源の確認を行う事であった。
1500年前から歴史があるにも関わらず、確認が済んでいない理由は、そこにモンスターや魔物などの怪物たちが生息しているためである。
探索者は、この怪物を攻略し、開発できる土地にしなくてはならない。
有用な鉱石や密度の高いマナエネルギーがある場所には、当然、強い怪物がいる。
人間にとってのエネルギーは、怪物にとってもエネルギーになる。
例えば、角ウサギであっても、高いマナエネルギーに晒され続けると、とんでもない怪物になる事がある。
だから、エネルギーの高い場所には、生物を招き入れてはいけないし、一度探索したからと言って放っておくと、新たな怪物が現れるという事になる。
だから探索は終わらない。
怪物は、エネルギーを取り入れると、核を作り、そこにため込む。
怪物の倒し方はいくつかある。
① 首を落とす。
② 大量に出血させるなど、生命力を奪う。
③ 核を壊す。
④ 怪物のマナエネルギーを全て奪う。
どれもできない場合は、怪物を倒せない。
怪物の核は、それ自体がエネルギー体であり有用であるため、探索者にとっての収入源となる。
通常、エネルギーの採取は専門の民間業者に委託されるので、探索者には禁止されているが、怪物の核に関しては、採取が認められている。
尚、綺麗な状態であれば、高価だが、割れてしまった核の場合は、価値が半減してしまう。
また、マナエネルギーを全て奪った場合も、核からのエネルギーを抜いてしまう行為であるため、核としての価値は無くなってしまう事になる。
ただし、マナエネルギーを奪うギフトを所持している人間は、過去に数人いた記録は残っているが、現代では確認されていない。
強い探索者を雇い、高レベルの怪物を倒すことで、その国は新たなエネルギー資源を獲得できるため、強い探索者を持つことは、その国にとっては大変重要な事である。
==この世界では、全ての元がマナエネルギーであり、マナエネルギーを制する者が、世界を制するとまで言われている==
近年の人口増加によって、膨大なマナエネルギーが消費されるようになってきた。
従って、時の為政者らは、こぞってマナエネルギーの確保に心血を注いでいた。
マナエネルギーをめぐる熾烈な争いは、年を追うごとに激しくなっている。
探索者は、クランに属し、チームを組んで活動する事が多い。
クランの中には、10000人を超える探索者を抱えているクランも存在している。
そのようなクランは、一国と同じような力を持っており、各国の軍事バランスに影響すら与える存在になっている。
「僕はチームやクランに属するレベルじゃないので、地道にやっていきますね」
「そうね。先ずは、それがいいわね」
「何か僕にも出来そうな仕事ってありますか?」
「そうね、あなたのギフト、初めて見たけど、何ができるの?」
「おもちゃを作ったり、遊具を作って遊んだりですかね」
「へー面白そうね。それだったら、子供のいるところがいいわよね」
探索者といっても、全ての探索者が探索を行うわけではなく、僕の様な初級は、地域への貢献活動を行って、それが認められて、初めて、探索に出られる。
まあ、僕は上級を目指しているわけでもないし、いつの日かクラスのみんなと日本に帰れればそれでいい。
「これなんかどうかしら?」
「働く女性の子供支援?ですか」
「そうなの、最近女性が仕事を持つことが多くなってきたので、昼間の時間帯に子供を預ける親が多くなったのよ、それで子供の面倒を見てくれる人が、急激に必要になってるの。あなたのギフトは、ぴったりだと思うけど、どう?」
「へー、ボクも子供ですけど、いいでしょうか?」
「そうね、でもあなたにお願いするとしたら、2-5歳くらいまでの子達ね」
「それでしたら、やってみます」