最弱ギフト
この世界では、シルス・アルメディアと呼ばれている。
僕はアルメディア家の三男として、異世界転生していた。
長男は、オライオ10歳、次男は、ミハルス7歳という。
アルメディア家は、オルティア国の子爵であり、小さな領地を持っているいた。
この国では、生まれると直ぐに教会でギフトの確認が行われる。
このギフトによって、その子供の一生が決まってしまう。
例えば、父オシアスの場合、”氷結”という無敵の様なギフトを持っており、農民出身だったけど、そこから子爵まで上りつめた。
長男オルティアは、”火炎”という炎を操るギフトを持っている。
次男ミハルスは、治癒のギフトであり、どんな病気でもたちどころに治してしまう。
そして、僕は。。。。
異世界転生者ってのは、普通はチート能力をもらっているはずだけど、僕は、ゴミ能力を与えられた。
ギフトは、“遊ぶ”。
このふざけたギフトのせいで、僕は家族から不良品扱いを受けていた。
僕のこのギフトは、手にしたものを自分の想像で遊びに変えることしかできない。
例えば、枝を何本から拾ったらそれで人形を作るとか、小さいおもちゃの家を作るとか、普通の人でも出来そうな事をギフトが少し補うくらいしかできなかった。
家族から見たら、どこからどう見てもゴミでしかなかった。
10歳になった長男オルティアは、王都のアカデミアに行くことになった。
ここは辺境の地であるため、王都までは、馬車で1か月はかかる。
そのため、一度行ってしまうと、少なくとも1年は帰ってこられない。
王都のアカデミアは原則的には、18歳まで通う事になっている。
しかし、その間に、優秀な生徒は、国の機関にスカウトされることもある。
または、探索者チームからスカウトが来ることもある。
僕は、近所の子供達からは人気があり、みんなにおもちゃをつくってあげたり、ゲームを考えて遊んでいた。
僕のギフトは、戦う事は出来ないけど、みんなを楽しませることが出来るギフトであり、僕は気に入っていた。
そんなある日、別の領主が父に会いに来た。
その領主には、僕と同じ年の娘がいた。
娘の名前は、アイリス・ハーレ。
金髪に、青く大きい瞳。
薄いピンク色のドレス。
如何にも令嬢といういで立ちであった。
「これは、これは公爵様、よくぞおいでくださいました」
「どうぞこちらへ」
父が慇懃に出迎えた。
爵位は一つでも違えば、雲泥の差である。
僕は、アイリスにただならぬものを感じていた。
先ずは、兄のミハルスが、アイリスの手を取って挨拶をすると、僕も同じように挨拶をした。
その瞬間、僕達の間にピリッとした電気の様なものが走った。
僕は思わず手を離してしまった。
失礼の無いよう、もう一度挨拶をやり直すと、なんとかその場を取り繕った。
今回の用事は、次男ミハルスとアイリスの婚約の話であった。
相手はまだ5歳なのに、早すぎると思うが、この世界では当然のことらしい。
僕には関係のない話であったので、庭の土でトンネルを作って遊んでいた。
すると、アイリスと兄が庭に出てきて話をしはじめていた。
暫くすると、兄は忘れ物を取りに部屋に行ってしまった。
アイリスが僕に近づき、突然
「あなた、船北中?」
船北中とは、僕の通っていた中学校である船橋北中学校の略称であった。
「え?」驚きに一瞬言葉を失った僕。
そして思わず、「きみは?誰」と言ってしまっていた。
「やっぱり、さっき手を触ったとき分かった」
「私は、加藤美咲」
「か、加藤さん?」
「僕は、的場、的場敦だよ」
「なんだ、的場君だったのか。これで4人見つけた」
「他にもいるの?」
「私が見つけたのは、佐藤俊樹、中村秋華、渡辺千香」
「的場君で、この世界に4人目の仲間を見つけたわ」
「他の3人はどこにいるの?」
「王都で見つけた」
「私のギフトは、”オープンマインド”っていうもので、考えてる事が何となく分かるのよ」
「今では、そのギフトがレベルアップして、マナの見た目で秘密がありそうな人がわかるの」
「ギフトってレベルアップするの?」
「もちろん、しらなかったの?」
「それで、的場君のギフトは何?」
「僕のは”遊ぶ”さ」
「”遊ぶ”?」
「的場君らしいと言えば、らしいわね」
「そうかな?」
「二人とも仲よさそうにしゃべってるね」
「これはミハルス様、弟様が何をしていらっしゃるかと思って、見学させて頂いておりました。とても楽しそうにしていたので、思わずお話をしてしまっておりました。ふふっ」
「シルスは、“遊ぶ”というスキルのおかげで、近所の子供たちからは大人気です。僕はシルスのギフトが羨ましい」
「僕や兄のオライオは、国の軍に役立つから、いずれ軍に取り立てられるでしょう」
「しかしこいつは、全く役立たず。軍に行って、死ぬ心配もない」
「なんでこんな奴が生まれてきたのか、わかりません」
「アイリス様、部屋へ戻りましょう」
二人は、部屋へ戻っていった。
(それにしても、僕以外に4人も仲間がいるとは、驚きだ。きっともっといるはずだ。みんなを見つけたいな)
(でもぼく1人では見つけられない。加藤さんが必要だな)
(加藤さんは、どういう気持ちだろう?)