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フナキタ戦記

 あれから凡そ7週間後、アツシは王都の隣のベルネ村に到着した。


 ここから王都までは、数日の距離であった。


 アツシは、アキラ・シュバルツからもらった住所を頼り、アキラの父オサムに会いに来ていた。


「アキラさんからもらった住所は、ここだな」

 トントン 「こんにちは」


「誰だ?」


「僕は、アツシ・マトバと言います。アキラさんにこちらの住所を聞いてきました」


「アキラに?」


 ガチャリと扉が開いた。


「こんにちは」


「ああ、それで、アキラに何の用だ?」


「はい、アキラさんのお父さんのお名前を聞いて、ちょっと親近感がわきまして、お話を聞けないかと思いまして。。。」


「新機関だと?俺がアキラの父親だが、何を聞きたいって」


「そうだったんですか。すみません」


「僕は、アツシという名前なんですが、アキラさんのお父さんもオサムさんというお名前だと聞きました。この名前の特徴は、過去にあったニホンという国で多く使われていた名前に似ています。その点について、何かご存じなら教えて頂ければと思いまして。。。」


「。。。。そうか。まあ、入れ」


「。。。。おじゃましまーす」


「きみは、ニホンといったな、なぜその名前を知っているんだ?」


「僕の家にあった本にそう書いてあったんです。それで、ボクも本に書いてあった名前を使ってアツシ・マトバにしています」


「なんという本だ?」


「名前ですか。。。忘れました。すみません」


「まあ、いいだろ、ニホンというのは、この世界の国の名前ではない」


「そうだったんですか?僕はてっきり過去の国の話だとばかり思っていたのですが」


「ニホンから度々こちらに来る連中がいた。その連中をこの世界では、神核種と呼んでいた時代があった」


「神核種?ですか」


「ニホンから来た奴らは、死ぬと核を残すが、この核に集約されているマナは恐ろしい量であり、それを手にしたやつが戦争でそれを使えば国を救済する事も滅ぼすこともでき、仕事で使えば、その力で世界の金を動かせるとまで言われるしろものだ」


「そうすると、僕の様な名前や、アキラさんのような名前では狙われる危険性があるという事でしょうか?」


「この時代にその話を知っている奴はいない」


「それでは、なぜオサムさんはご存じなんですか?」


「俺の血筋がそうだからさ」


(あたりだ)


「アキラさんやオサムさんの、その神核種であるご先祖様は、いつ頃の人なのでしょうか?」


「今から1700年位前らしいな」


「ちなみに、そのお名前は分かりますか?」


「名前か。。サトル・シュバルツという」


(サトル。。。シュバルツ。。シバイツ。芝逸 悟だ!)


 アツシは愕然とした。

 芝逸 悟は、同じクラスの学級委員長と同じ名前であった。

 それが、1700年前にすでに転生されていた。

 その話が事実だとすると、色々な年代に別々に転生されている可能性がある。

 あるいは、この世界の未来に転生されてくる人もいるかもしれない。

 という事は、これ以上探しても、クラスメートはいない可能性すらある。


「そのサトルさんのギフトはどのようなものだったんでしょうか?」


「”無撃”という記録は残っているが、どのような効果のものかは詳しくは分からない」


「そうなんですか。色々とお伺いしてすみませんでした」


「君はニホンから来たのか?」


「何をおっしゃっているんですか、そんなことはないですよ」


「そうか、話をしている最中に、君の膨大なマナに乱れがあったんでな」


「俺は、鍛冶屋だが、素材のマナの流れをみて武器を作る。だから、マナの流れに関しちゃ、結構わかるんだよ」


「きみのマナは質、量共にこの世界の奴らの物とは明らかに違うんだよ。まあ俺が血筋だから余計に色々なものが見えている可能性もあるがな」


「そうですか。。。。隠し事が出来ないなら、味方になって頂いた方がよさそうですね」

「僕の分かる事をお話します」

「おっしゃる通り、僕はニホンから来ました。先ほどのサトル・シュバイツですが、実際はサトル・シバイツと発音すると思います。僕の友人と同じ名前なんです」


「サトル・シバイツは、転生前には、僕と同じ時代に生活をしていました」


「なんだと。。。。」


「サトル・シバイツに関する話は、どのようなものが残っているんでしょうか?」


「そうだな。サトルは、この世界を征服できるほどの能力を持っていたらしいが、魔王との戦いを避け、臆病者と言われたらしい」


「そうですか。サトル・シバイツが、もし僕の友人であれば、なぜ彼が戦わなかったか、理由がわかります」

「恐らく、その魔王も僕の友人だったんではないでしょうか。サトルは正義感が強く、友達をとても大事にする奴なんですよ。だから魔王とは戦わなかったんじゃないかな」


「そうか、魔王の名前は、ヤチヨス・ミーダ。魔王もヤイチと戦った後に姿を消してしまったらしい。きみの言った話が本当だとすると、なんとなく納得できる話だ」


「ヤチヨス・ミーダ?そんな名前は。。。ヤチヨ・スミダ、墨田八知夜」


「間違いない。ヤチヨ・スミダなら僕の友人です」


「その時の記録ってどこかにあるんでしょうか?」


「あるぞ、ちょっと待ってな」


 ・・・・・・・・


「これだよ」


「フナキタ戦記!?」


「いや、フ・ナキタだ」


「フ・ナキタ?」


「どういう意味ですか?」


「さっぱりわからん」


「やっぱり。これはフナキタです。フ・ナキタではありませんよ」


「フナキタとはなんだ?」


「僕達のいた学校の名前です」


「そうだったのか」


「とにかく、その戦記の最後の日を読んでみろ」

 

  =レイブン歴867年鼠月27日から最終決戦の日まで=

 俺達は、アサギチームとヤツカチームの総勢2500人で、魔王城へ攻め入った。

 魔王ミーダの扱う死霊は無限に湧いてくる。

 俺達はその死霊たちと7日間戦い続け、ようやくミーダの玉座までたどり着いた。

 2500人いた仲間は、ミーダの死霊に食い尽くされ、残りは10人となった。

 幸い神格種は一人も欠けていない。

 ミーダは、俺達にとっては、決して悪いだけの奴ではないが、この世界を破壊する事は許されない。

 最後は俺達でミーダに引導を渡すしか方法がなかった。

 ミーダを倒すために、俺の最大の斬撃である”獣真斬”でミーダを怯ませたところ、ヒトミヤツカの”冷酷”によって、ミーダを完全凍結させ、最後は、アイリ・フジオカの“灰色の臼”でミーダをすりつぶし、粉砕した。

 アイリは、ミーダが核を残せないほど細かく粉砕した。

 そして俺たちは、ミーダに勝利した。

 しかし、その後もなぜか全員がミーダの存在を感じている。

 ミーダは、まだ、どこかに生きているのだろう。

 それが、この世界なのか、あるいはニホンに戻ったのか?

 それか、また別の世界へ転生しているのか、知るすべはない。

 しかし俺達もまた、いつニホンに帰れるかは分からない。

 ここにいる8人とミーダ、サトルの他に、神格種は存在しているのだろうか?

 あの日、あの部屋には30人いたはずだ。

 他の仲間たちよ、君たちはどこにいるんだろうか?

 この世界にいるのだろうか?

 同じ時間に存在しているのだろうか?

 もし、何年後、なん百年後に、船北中の誰かがこの本を見たら、俺達がここに来た意味を、君たちが見つけてくれ。

 頼んだぞ。

 浅木弥一


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