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バードオブザーバー  作者: 山芋
日常回(1)
7/13

従魔交流会に参加しよう(1)


 飼い主が入学して早二ヶ月が過ぎた。高校生活にも慣れ、モデルの赤坂玲香とも牛歩並ではあるが親交が深まっている。私といえば、学校について行ったり、自宅で自堕落な生活を満喫している。


 私は優秀な鳥なので、飼い主のパソコンを使ってライトノベルやアニメを観ている。今年は恋愛アニメが豊作豊作。ギャグ要素もあるからより最高よ!


「白、明日は従魔交流会があるから忘れないでね?」


『そういえば、もうそんな時期ですわね』


 飼い主こと、波内家は初めてのペット且つ魔獣を飼うことから、この従魔交流会に参加して、先人から色々教わったのだ。今でも半年に一回ある為、飼い主のみだが参加し続けている。


 私の友達も居るので飼い主は付き添いだけどね!


「あと、赤坂さんも白以外の従魔に興味あるらしいから一緒に来るからよろしくね」


『なんだ、私を利用したただのデートかよ』


「ち、ちがうよ?!」


 割と積極的な飼い主だ。


 後で話を聞くと、赤坂の方から提案されたそうだ。飼い主は食われる側だったのか……。




 当日、待ち合わせは現地との事なので既に会場入りしている。まだ来ていないのか、それとも見つけてないだけかわからないが、今は待っている場所を飼い主が赤坂に連絡している。



 この会場は元々従魔の為に富豪さんが建てたドームだ。その人は従魔交流会の主催者で、珍しい竜種の魔獣を従魔契約している。


 今も真ん中辺りで綺麗な毛並みをした竜を撫でている。名前は忘れた。結構な大きさで、更に大きな従魔や人が多いので人を探すのは大変、大変。


 む?


「お待たせ!従魔交流会って凄いね!」


「こんにちは赤坂さん。この交流会の主催者さんの私有地を借りているらしいよ」


「それはとんでも無い金持ちですな」


「そうだよね。ほら、真ん中辺りにいる人が主催者さんで、千田陸斗さんだよ」


 飼い主に教えて貰うと、主催者の方をしばらく見て驚いた顔をした。


「あれ?もしかして洋服関係の社長さんしてる?」


「よくわかったね?」


「最近CMを貰った話したと思うけど、その時の会社の社長だよ!」


「そうなんだ!」


「うん。そういえば従魔好きとかマネージャーから聞いた、かもしれない」


 このモデル最近少しだがテレビに見かけるんだよな。飼い主、とんでもない彼女候補を捕まえたもんだ。ま!私のお陰ですけどね?


「ピヨピヨピヨピヨ!」


「何ではしゃいでいるの………?」


「さあ………?友達に会えるからじゃない?」


『可哀想な目で見るな!』


 2人がこちらを苦笑いで見ていると、見覚えのある顔が近付いてきた。


「あ!こんにちは甲高さん」


「久しぶりだね、波内くん。それに白くんもね?」


『こんちゃ!』


 そう言って私が手を挙げたのは私の友達の飼い主の1人、甲高さんだ。身長は高めで、少しタレ目なオシャレメガネさんだ!これでも二児の父なのでかなり若く見える。


『久しぶり!白!』


『久しぶり我が友よ』


 そう言ってキャンキャン吠えたのは、白い鱗を纏った狼のパフロだ。大きさは大型犬と同じで、今も飼い主の足に尻尾を巻き付けている甘えん坊だ。


 パフロは鱗狼と呼ばれる第四級魔獣種狼型である。群れで行動して獲物を狩る種族だ。パフロは珍しい白変種で、通常の灰色とは違った為に甲高さんに保護されたのだ。


 ちなみに甲高さんはプロの魔術師なので、仕事の最中に出会ったみたい。


「波内くん随分と大きくなったね。龍馬さんも元気にしてるかい?」


「はい、最近は裏方の仕事が多くて忙しそうですけど」


「そうか、元気そうでなにより。所でそこのお嬢さんは君のこれかい?」


 そう言って、ニヤニヤした顔で小指を振る甲高さんは、見た目に反しておじさん臭かった。


「え?!ははは、残念ながら同じクラスの友人ですよ」


「……今はまだ」


「ん?」


「ほうほう」


 赤坂が肉食獣の目で飼い主を見てボソッと呟いたが、丁度パフロにアタックされていた飼い主は聞き逃した。ナイスだ我が友よ。


「初めまして、私は赤坂玲香と言います。今日()従魔に興味があったので、波内くんにお願いして連れて来てもらいました」


「そうなんだね。私は甲高千早という、よろしくね」


「はい!でも、私は従魔が居ないですが色々教えてくれると助かります」


「なに、従魔が居なくても好きな気持ちがあれば問題ないさ。詳しく知りたいなら、主催者の千田さんに話しかけるといいよ」


「はい!」


 それから飼い主たちは最近の私の事やパフロの事について話し始めた。私はパフロと話す為に彼の頭の上に乗った。


『白は最近何してたの?』


『最近は飼い主の高校を散策してる。面白そうな人間もいたから観察中』


『そうなんだ!僕は最近はご主人の狩りの手伝いを始めたんだよ!白は相変わらず変なことしてるんだね!』


『私は変ではないよ。普通さ普通。それにしてもパフロも成獣になったのか』


 鱗狼は成体までに三年掛かる種族で、私が彼に会ったのは生後半年くらいだったので随分と大きくなったと感じる。私が今の飼い主と会ったのは五年前なので、私の方が先輩なのだ。


 狩の様子やご主人の愛を私にぶつけていたパフロは、何か思い出したように周りを見渡した。


『そういえば、ゴン座郎来てないね?』


『いつも遅いから、もう直ぐ来るんじゃないか?ほら、向こうからこちらに近づいて来てるぞ』


 広い会場の中でも、周りの人よりも高く2m以上ある人間がこちらに近づいて来ている。頭の上には子供くらいの大きさの猿がくっついていた。


『あ!白の兄貴久しぶり!』


 そう鳴いて、軽やかに地面に降り立つとこちらに駆け寄ってきた。


『久しぶりだなゴン座郎。元気だったか?』


『元気でしたぜ兄貴!パフロは先週ぶりだな!』


『そうだね〜』


 そう言ってパフロの背中にゴン座郎は乗った。側から見たら桃太郎の仲間達みたいだな。


『2人は何処かで会ったのか?』


『そうだよ!さっき話したけど、ゴン座郎のご主人と僕のご主人が仕事?が一緒になったみたいで一緒に狩りしたんだ〜』


『全く、コイツは初めての狩りって訳じゃないのに、はしゃいでゴブリンの罠を全部踏んだんですよ!』


『あぁ〜』


 見たこと無いはずなのに鮮明にイメージできた。ついでに、罠がある事に気付かずに甲高さんに苦笑いされてる姿まで想像できる。


『そうだよ白〜、僕は()()()()()()()()()怒られたんだよ!皆んな酷いと思わない?』


『何が歩いてただけだ!思いっきり罠踏んでただろ!一回、俺の真横を矢が飛んできた時は死ぬかと思ったぞ!』


 パフロの種族は鱗が全身にある為、大体の攻撃は無力化させる。対して、ゴン座郎はそんな防御の皮膚はない。


『あんなので死なないよ!』


『何を〜!このアホ犬!』


『言ったな!このチビ猿!』


『チ、チビは関係ないだろ!』


 いつもの如く騒がしい2人を他所に、大男が飼い主に話しかけていた。


「久しいな波内くん」


「あ、久しぶりです八田さん!」


「あぁ、千早はもう居たのか」


「そうだよ、君がいつも遅いだけさ」


 八田さんと甲高さんは昔からの知り合いらしく、飼い主に従魔について色々教えてくれた人たちだ。


「白も久しぶりだな。相変わらず綺麗な羽だな」


『久しぶり!相変わらずデカいね!』


 私が翼を挙げると、満足そうな顔をして頭を一撫でしてパフロにも挨拶した。


「そこの彼女は波内くんの連れかな?」


「はい、赤坂さんです」


「こんにちは!赤坂玲香といいます」


「こんにちは、私は八田五郎という。君はもしかしてモデルさんかな?」


「よく分かりましたね?」


「そうなのかい?」


「あぁ、テレビで最近人気が出始めているモデルとして女子高生の間で有名らしい。娘が話してたんだ」


「はははは、まだまだですよ」


「あまりテレビとか見ないからわからなかったな」


「後でサインをくれると助かる。娘が喜ぶのでな」


「はい、喜んで!」


 暫く各々話し込んでいると、大きな影が私達を覆った。


「久しぶりだね波内くん。それに、八田さんや甲高さんも」


 主催者である千田さんがこちらに顔を出した。


「久しぶりです千田さん」


「こんにちは」


「久しぶりですね、千田さん」


 千田さんは参加者にそれぞれ声かけを毎回しているので、特別というわけでなく順番が回ってきた感じだな。それでも、私達は通常個体とは異なるので他の参加者よりは話す時間は長いけど。


 なんでも、生粋の従魔マニアらしくて変わった個体が大好物らしい。普通の個体も好きらしいが。


 

「波内くんが居てくれてちょうど良かった」


「どうかしたんですか?」


 不思議そうな顔をした飼い主に対して、千田さんは楽しそうな顔をしていた。



「前に話してた事が分かったんだよ」



 








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