モブみたいな飼い主、主人公のような人物
モブ視点の話好きなんです。
ここは『魔獣・魔人』が蔓延る世界。人は『魔法』と『科学』の力を駆使して生存圏を拡大していた。そして、人の生存圏は地球陸地の4割を獲得している。これは人間が生息可能な面積の割合が7割と考えると、過半数以上を占拠している。
しかし、残り三割は人類を脅かす存在が占領し、今でも侵略を繰り返している。そこで人々は生存圏を維持するための組織、機関を創設した。
その内の一つである、日本にある『東京都立清陵高等学校』は全校生徒1500人と超マンモス校の一つ。普通科、魔法科、科学科、魔法科学科、戦闘科が存在し、特に戦闘科、魔法科学科は日本を代表する程有名だ。
通常はそれらに伴い偏差値が他の学科までも高くなるが、今期は珍しく学力の高い受験生が他校に分散し、偏差値が下がっていた。そのお陰で、運良く普通科に入る事ができた入学生の一人。
「ーーー漫画やアニメみたいな学校でワクワクするよ白」
興奮した声で話す一人の男の入学生、波内白桃ーーー
『フラグか?フラグなのか?どっちなんだあ?!』
ーーーと、そのペット白。
「なんでそんなキレ気味なの……?」
これは物語を進める者ではなく、巻き込まれるモブの物語ーーー
「キャァァアアアア?!」
「魔獣が出てきたぞ!急いで逃げろ!」
『本当に起きた……』
「白……、フラグ建てないで………」
『責任転嫁とは汚い、潔く切腹したまえ。大和魂見せてみろ!』
「時代錯誤ですよお爺さん」
ーーーではなく、その鳥の物語。
この高校は土地も広大で、駐車場から校舎まで桜や紅葉などが並ぶ道がある。入学式当日。それぞれがこれからの学校生活に胸を膨らませて保護者とともに歩いてくる中、突如として犬型魔獣が現れた。
被害は発生していないが、大混乱が引き起こっていた。白桃と白は微妙な面持ちで眺めていた。
さて、冒頭でも話した通り、この世界のモブ担当は彼等であるが、主人公は彼等ではない。では、一体誰なのだろうか?
もっとも、答えの正体などこの場にいないわけが無い。
「裁きの光」
次の瞬間、魔獣を貫く一筋の光が降り、一瞬で魔獣は黒い塊となった。
「流石!西門寺家次期当主!」
恐らく魔法を放った人物に揶揄うように話しかけたのは、芸能人のような容貌の波内と同じ入学生だった。
「やめてくれ、葵。できることをしただけだ」
どこか照れるような様子だが、嫌味のない自信が溢れている新入生はそう返事をした。
『なんかムカつくな』
一部の鳥には嫌味に聞こえたようだが。
両者とも、何処となく動きに優雅さを感じた。俗的にいう上級市民だ。この日本では貴族制度はないが名家と呼ばれる一族は存在している。彼等は日本の中枢を占めている。財閥の様な存在だ。
(物語で言う主人公みたい人物だな)
「おぉ〜!あの人凄いよ、白!」
(それに比べて、私の飼い主はモブみたいだな。いや、これが普通か)
頭の中で飼い主を揶揄った白は、何となくモブみたいな飼い主があの主人公に巻き込まれそうと感じていた。
先程、見事にフラグを建てたため、言葉にしていないだけマシなのかもしれないが。なかなか失礼な鳥なのであった。
次回以降は『白』目線です。