その日の彼女
その日彼女はいつになくぼーっとしていた。
いや“ぼーっと”とは違う。
心ここにあらずというところか・・・
授業中に先生にあてられても反応が遅く何度か
「遠藤さん?」と繰り返し呼ばれて
そのたびにはっとしたように反応してそれに答える。
彼女らしくない
そんな思いを僕は抱きながら
彼女の行動を見ていた。
なんというか疲れているようにも見えた。
どんな時でも平然という
どこか冷めている態度を崩さなかった彼女が
今日はそのことすらできないほどに
疲弊し集中力を欠いている・・・
そんな印象を持った。
その時僕は額に手を置いた。
(あー、いやな癖だ・・・また人を見ている・・・)
彼女のことを見てなんか勝手に考察している。
気になるのはそうだけど
その姿をまじまじと考察してしまう。
本当のことなんて彼女しかわからないのに
気になるなからって自分勝手な決めつけ・・・・
そういった類のことは何より自分が嫌だって
そんな風に思ってたのに・・・
彼女のことを見ながら自己嫌悪に陥る。
「ふー・・・」
静かにため息を吐いた。
やけに長い授業時間
心の置き所に困りながら僕は
“いつもの僕”を被ってその日をやり過ごした。
放課後
やけに疲れを感じた。
そしてこの日遠藤さんと会話・・・いや
目線すら合わすことなく終えた。
僕は今日の彼女に合わせるような顔を持っていなかった。
そして何よりきっと自分自身そんな思いで彼女に接してしまうのが嫌だった。
キー・・・カチャン
上靴と外靴を入れ替えて外に出た。
(はぁ~なんか疲れた・・・)
心の中で何度も思ってしまう。
しかし、終わってしまえば今日という日も特段いつもと変わらないのだろうと
どこか他人のような気持ちで思ってしまう。
そんな中目の前に男女が手をつないで歩いている。
もちろんそれはうちの学校の生徒で
楽し気にそれでいて嬉しそうに目の前ではしゃぎ合っていた。
(・・・なんか・・・)
普段はあまり思わないことが心の中に広がる。
なんというか・・・
その光景はとても・・・
輝いていた。
キラキラとしていて
にこやかで穏やかで・・・
きっと彼らには周りなんて見えてない。
世界は二人で完結されていてそこには何の雑念とかはなく
今の幸せをただただ噛みしめているようで
それは僕にはないもので普段は気にしもしない
そんな光景・・・
なぜ今?
疑問がわく
でもきっとこれは今疲れてるから・・・
自分という不確定な物をこれでもかと今日一日見ていたから・・・
だから
なんか世界は平和だって自分に言い聞かせているんだ。
自分でできないことを他人で保管してなんとか心の平穏を保とうとしているのかもしれない。
(なんだか・・・情けないな・・・)
そんな自己否定を結局やめることできないまま
その幸せそうな男女を追い抜き自宅へと歩を速めたのだった。