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「ふぁー・・・」

あくびをしながら歩く道

今朝はなんだか早く起きてしまい

そのまま学校に行くことを選択した。

「眠い・・・」

なんだか体だけが起きてしまい

頭はまだこの状況に追いついてない

そんな気分。

早く学校に行ったところで何があるわけでもない。

かといって家にいても何かあるわけでもない。

寝る時間が多少はあるかもだけど

ほんの少しの睡眠は本当に愛しく

そして僕を布団の誘惑から離さなくなる。

それは気持ちが落ちるので今回はやめにした。

そんなわけで学校に向かうわけだが

「結構少ないもんだな・・・人・・・」

朝のすこし冷たい空気

騒がしさや慌ただしさはなりを潜めて

独特な空間をこの場に形成している。

そんな感じすらする。

特別な感じ・・・

ここ最近感じなかったそんな思い。

いつものルーティンから外れた僕の行動が起こした

ほんの少しの特別・・・

それを独り占めしているような感覚は

なんだかうれしく感じた。

「ふんふん~」

なんの歌かはわからないが鼻歌を歌う

気分は浮かれて

学校の道が楽しく

校門が近くになるのが残念にすら感じた。

明日からも早起きして同じことをしていれば

また同じなのかもしれない。

でもこのイレギュラーな感じが

僕の中ではさらに特別感を演出していた。

「う~ん、到着か~」

声が漏れるほどに残念だった。

しかしついたものはしかたない。

そう思い校門を抜けて昇降口に向かう。

いつもならざわついているロッカー前も

今日は静かに鉄の冷たさを空間にばらまいている。

カチャ、キー・・・

ロッカーの扉の音が妙に響く。

ポン

弾む上靴

そのすきに外靴を拾い上げて静かにロッカーに収めた。

いつもなら流れ作業の一環で雑に扱っていたが

なんだかこの静けさと

今朝の清々しさにあまり乱雑な動きは合わないと感じた。

キー、カチャ

響き渡る鉄の音を背に静かに廊下を進んだ。

まだどこの教室にも人は見当たらない。

しかし

体育館の方からは何やら声が聞こえる。

それにグランドでも同じように何かしらの掛け声が聞こえる。

さっきまでの完全な静寂ではないにしても

それのどの音もなぜだがとても心地のいいものに感じた。

「・・・・」

僕自身はなにも声を出さず

その音に耳を傾け

その今しかないそんな時間を堪能していた。

すると

教室まではあっという間で

そこにはもう教室という状況だった。

ガラガラ

教室のドアを引く

きっと僕が一番乗り

そんな風に思っていた。

しかし

そこには一人の女子生徒がいた。

「!!」

勝手に自分一人と決め込んでいたので彼女の姿に驚き

声にならない状態ではあったが驚きを表面化させてしまった。

「おはよ」

彼女は僕の驚きにそう告げた。

「あ、うん・・・あの・・・・おはよう」

遠藤奏さんの姿・・・

動揺した

聞きなれない彼女の声に。

動揺した

あんなに人には興味ないように振舞っている彼女が

声をかけてくれたことに。

すると

「クスクス」

と彼女の笑い声が漏れた。

彼女は笑みを浮かべて

「驚かしちゃったね」

と一言僕に投げかけた。

あの時以来の彼女の笑顔。

それに少しいたずらぽい仕草。

いつも宙を彷徨わせているあの感じは微塵も感じない。

「いや、ごめん。てっきり一人かと思ってて・・・」

彼女の言葉にまだ動揺が抜けないまま答えた。

「そうだよね、今日は早いね」

そう僕に話しかけてくる

「うん、ちょっとね・・・」

なんとも言えない気分。

予想外のことに対応できてない自分をあまり見てほしくないが

でも

ここで話を止めるのもなんだか・・・

「早く起きてね。遠藤さんも早いね?」

まったく心のざわめきがおさまらないが

形だけでもと思い平静の仮面を顔に被る。

「うん、いつもこの時間・・・静かだから・・・」

どこか愁いを帯びたような語り口。

朝の静寂とその姿はとても彼女の雰囲気に合っていて

なんだが僕ここにいることが場違いな気すらしてきた。

「そうだよね・・・静かだね、朝は。」

「うん・・・」

それ以上はなんだか話をするのがいけないような気がして

「それじゃ」

ほんの少し教室を動くだけなのに

別れの言葉みたいなのを残した

それに

「うん」

と一言。

彼女はまた静かに何かをみるように宙に視線を移す。

その横を僕は自分の机のある場所へと向かった。

遠くから聞こえる部活動中の生徒の声

その中を僕の足音と服のすれる音

そして机を動かす音。

そのわずかな音だけがこの教室に反響している。

僕は席につくと彼女とのやりとりを何気に思い出した。

彼女がいたことにも驚いたが

なにより彼女から声をかけてもらうことがあるとは考えもしてなかった。

彼女は思ったより軽快に話すということがわかった。

そして

彼女はやはりどこか愁いが帯びたような姿をしていた。

以外でそしてそのままで・・・

彼女の知らない一面がこの朝に見れたことが何となくうれしかった。

そのまま席に肘を置き

僕も彼女と同じに視線をどことなく置き

そのままそのことを思い返していた。

時間が経つほどに薄れる静寂に気づくまで

その余韻に浸っていた。


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