誕生日・・・奏
・・・・・
この数日私の心の中はなんだかおかしい
いや心のなかだけではない
日常もおかしいというわけではないが
変わったように感じる
大きく変わったのは放課後だ
「佐伯君?」
「うん、今行くね!」
佐伯君に声をかけた
そんな中周りは
「今日はどこいこう?」
「いやー。やっと終わった~」
・・・・
特になんのかわりなく帰りしたくをしていた。
よく佐伯君のことをからかっていた清水君も
「みなさんお疲れ様~でどこ行く?」
「いや、なんでお前も行く前提なん?」
「え!?ちがうの!?」
笑いが教室を覆う
「じゃ~さ~・・・・」
違うグループに入っていく清水君
彼は本当にいつも思う
(おもしろい人だ)
それと同時に話題の移り変わりは早いなっと感じた
そんななか彼はなんだかすこしぼーっとしてる。
きっと彼もこの変化にすこし思うところがあるのだろう
あれだけわいわい騒がれた日が今となってはこの状態なのだから
もしかしたら彼自身すこしほっとしているのかもしれない
「佐伯君??」
「ああ、ごめん、いこうか!」
「うん!」
彼は私の方に向かってくる
そんな彼に聞いてみた。
「どうしたの?ぼーっとして」
「いや、なんか変わったなって」
「?何が?」
「なんていうか・・・うーん・・・周りが?」
「周り・・・確かにそうかもね・・・」
やっぱりそのことだったかと思いながら。
「ちょっと前までは大騒ぎたった・・・かな?」
なんとなく笑って返す。
こんなに変わるとは思ってなかったから
私自身すこし笑ってしまう。
そんな私の横で彼もなんだか楽しそうに
周りを見ていた。
「どうしたの?なんか楽しそう?」
「うん、そうだね・・・楽しいかな?」
「そうか」
彼の楽しそうな様子に私もなんだか楽しくなってきた。
「じゃ、いこうか」
「うん」
彼に声をかけてそのまま教室を出る
放課後の賑わいの中
私と佐伯君は外までと歩いていく
「これからどうしようか?」
「そうだね~すこし食べてから街みてまわろうか?」
「うん、そうしようか」
私は彼の提案にそのまま相槌を打った
彼はいつもいろいろ考えてくれる。
私はどこかにいくとか何かするとかがよくわからなくて
彼には悪いとは思いながらもお任せしている。
ある時は
「ごめんね、いつも任せて・・・」
と言っていたことがあった
でもそれでも彼は
「べつにいいよ!だってあまりいつもいいところに行ってるわけじゃないし」
と彼はまた謙遜していた。
それでも二人でご飯を食べたり
あてもなく歩いたりそれだけでもなかなか新しい感覚だった
「逆にごめんね、なんだかいつもぱっとしないところばかりで・・・」
そしてやはり彼は言葉にして私に謝っていた。
「ぜんぜんだよ、いつもどこかに連れってくれて私はうれしいよ」
私はさっき思っていたことを改めて口にした。
「・・・うん・・・よかった・・・」
彼はどこか納得できてないそんな感じだった
きっと彼はもっと私をいろいろなところにつれていって
楽しませてくれようとしてるのだと思うけど
そう思ってくれてることだけで本当にうれしかった
・・・・・
ファストフード食べて彼に
「うーん、あれだね?放課後の食事は罪の味だね?」
「そうだね、おいしさも倍増だね」
彼も笑顔だった。
そんな彼の笑顔をみていると知った制服の集団が通り過ぎる
私は瞬間的に
「あ」
と声を出し彼の後ろに隠れてしまった
そのままその人たちが行き過ぎていくのを待ってしまう
・・・
その人たちが遠くに行くそして
「ごめんね、佐伯君盾にしてる感じで・・・」
彼の顔を見上げて言った。
「いいよ、別に盾にされてるとも思ってないし!」
「ありがとう」
・・・・
彼はなんというか優しすぎる
普通こんな行動をしたら嫌な気分になるに違いないなのに
明るく私のことを許してくれる。
本当のところはわからないけど彼は表情に出るから
なんとなくわかる。
最近そんな彼になにか返しできないかそんな風に考えている。
(何をしたら彼は喜んでくれるかな・・・)
きっと何をしても彼はよろこんでくれると思う。
それはけして彼が何でも許容してくれるから楽という話ではない。
普段の私を受け止めてくれるそんな彼に本当に喜んでもらうにはどうしたらいいか・・・
ふと目の端にショーウィンドウが映る
(あ・・・・プレゼント・・・)
頭の中にふと浮かんだ。
プレゼントならわかりやすくてストレートに彼に気持ちが伝わる。
(プレゼントっていったら・・・誕生日かな?)
「ねぇ?佐伯君?」
「ん?」
「佐伯君って誕生日いつのなの?」
「え?突然どうして?」
急な質問に彼が少し動揺している。
そんな彼に
「なんかね?こうやってたくさんの物が並んでいるとね、みんなこういうの見て自分のほしい物はもちろんだけどその中には誰かのことを思ってみてる人もいるのかなって」
そんな話をすると彼は
「たしかにそうかもね・・・誰かをおもって・・・でもどうしてそれで誕生日?」
彼の疑問に
「プレゼントってなんだか誕生日のイメージあってね」
と私のイメージを伝えた。
「たしかにそうかもね」
彼はなるほどという感じで答えた。
「それで佐伯君の誕生日は?」
彼に再び聞いてみた。
「3月17日、生まれなんだ僕・・・しかもこの時期って春休みでしょ?ありがたみがいまいちね」
笑いながら言ってくれる。
(3月か・・・・思ったより・・・)
「3月17日か・・・まだ先だね」
つい言葉が出てしまった。
そして言葉がでたついでに
「もし佐伯君の誕生日が近くなら何かプレゼントでもって思ってたから・・・」
「え?」
「最近いつも佐伯君にいろいろなところに連れて行ってもらってるからその感謝も込めてなにかできないかなって思ってね」
と本当のところを話した。
すると
「いやいや!そんな!!」
大きな声で彼が反応する
私はびっくりしたのと
彼にとって余計なことをしたのかもと後悔した
「ごめん、突然なれなれしかったよね?」
なんとも言えない気持ちが心を覆う
しかし彼は
「違うんだ!いや、その・・・プレゼントをもらえるようなことをしてなかったからびっくりしちゃって、だからその嫌だとかそういうことじゃないから!」
と慌てながら否定した。
「・・・そうか・・・よかった・・・」
さっきのなんとも言えない気持ちは少し晴れる。
我ながら単純だと思いながらそれでも安心した。
「なんかごめん、驚かせたみたいで・・・」
「んん、逆に驚かせたから私が」
「いや・・・うん、お互い様ってことで」
そういって彼は笑った
「うん、そうだね」
私も返事を返す。
「遠藤さんは言ったけど僕もいろいろなところに行けて楽しかったって思ってるよ」
「・・・・・」
胸が暖かった・・・
そしてとても恥ずかしいようなくすぐったい気持ち
突然そんなこと言うなんて
「ずるいよ・・・・」
小さく言葉が出る
「・・・・・」
彼と私の間に少しの沈黙・・・
「・・・・誕生日・・・・」
彼が言う。
「え?」
「遠藤さんの誕生日は・・・いつ?」
「私の?」
「うん」
・・・・・
「5月21日・・・」
「5月21日か・・・早生まれだったんだね・・・僕とは約1年違うのか・・・」
私は彼に誕生日を告げる。
すると
「5月か・・・それだと僕もプレゼント渡せないね・・・」
「僕”も”って佐伯君?」
「遠藤さんからだけだとなんか悪いしさ、さっきも言ったけど僕も何か感謝を伝えたいからさ」
彼はやっぱりずるいこのタイミングでそんなことを言うなんて
でもそんな彼がなんだかとてもかわいくも思う
「そっか・・・佐伯君もか・・・・うん・・・」
彼はいつも一生懸命そんな彼だから私は心を開けている。
・・・・
「そういえば約1年・・・不思議だね・・・」
彼が言った。
「不思議って・・・何が?」
「だってもし僕の誕生日が数か月違うだけで僕は遠藤さんに会えなかったかもしれなかったんだから・・・・」
「それは私も同じだよ、佐伯君の誕生日がもう少し違ったら学年が違ったかもしれないんだから」
そう彼がいなかったらきっと朝に挨拶をしたとしてもただただそこで終わっていた気がする。
「私の学校生活には誰かといることが楽しいとか学校の放課後が楽しいとか・・・」
私はさっきのことを彼に言う
「本当にないって思ってたのあなたに会うまでは」
彼に視線を向ける
「だからね、あなたにあの朝声をかけてよかったって本当に思ってるんだ」
私は私が思うことを素直に告げた。。
すると彼はすこし顔を下にむけて
「・・しめて・・・いい?」
小声で何かをつぶやく
「え?何?」
彼に聞き直すと
「抱きしめていい?」
「!?」
驚きの言葉がかえってきて動揺する私
その混乱の中
私の体は暖かく包まれる。
「!?!?佐伯君!?!?」
驚いていた
彼の行動もそうなのだが
私の体が彼の行動を受け入れていることに
びっくりしてるからかもしれない
でも・・・・
「ごめん!!!」
彼は大きな声を出して急いで距離を取る
周りにいた人たちもなにがあったのかと
ざわつき始める
「佐伯君!こっち!!」
彼の手を引いて人の少ないところに
「ごめん、僕・・・本当にごめん!!」
彼はパニックを起こして謝るしかできてない
「佐伯君!佐伯君!!」
私は彼に必死に話しかける
「本当にごめん・・・」
それでも彼は謝り続ける。
「亮君!もういいから!」
「!?」
私は彼の下の名前を呼んだ。
いつもと違うことをすれば彼は落ち着くんじゃないかと
咄嗟に言葉が出た。
「あ、あの遠藤さん?」
「やっと落ち着いた?」
彼は私の言葉に驚いたのか少し落ち着いたようだった。
「大丈夫だよ、亮君」
彼に優しく話しかけた。
「あの・・・・」
まだ動揺しているのか彼は「あの」を連呼している。
「大丈夫、びっくりはしたけどそんなに謝るようなことじゃないから・・・」
私は冷静に彼に話しかける。
「でも、突然僕は・・・」
彼はそれでも動揺した様子で落ち着かない。
(どうしたらいいか・・・)
なにかできないか考えていると
(そうだ・・・あれなら・・・)
私は彼にある行動をする
すっ・・・
彼の首元に腕を回す
「え??」
彼はおどろいて固まってる
そんな彼に
「ほら、いっしょだよ?」
「いっしょって・・・」
「私も亮のこと抱きしめてる」
彼はどうしていいのかわからないのか
やはり固まったままだった
「私はべつに嫌じゃなかったよ、亮は嫌?」
そんな彼に問いかける。
「嫌じゃ・・・ない、ただびっくりして・・・」
「ね?びっくりするでしょ?」
私の言葉にすこし硬さがなくなったそんな気がした。
そんな彼とすこし距離が空く
彼は私のことを見つめていた。
硬さはなくなったけどどこかぼーっとした感じ・・・
(どうしたのかな?)
・・・あ
「亮・・・君?」
たぶん私が彼のこと呼び捨てにしてるのが気になってるのかな?
「え?何?」
「ごめんね、亮って呼び捨てにして・・・」
謝って彼をみると
「全然いいよ!うん、全然大丈夫だから」
「うん、いつもの感じになってきたね」
彼が普段の感じになってきて安心した。
「でも大胆だったんだね?あんなに人がいるところで・・・」
少し意地悪を言ってみた。
「いや、あれは・・・うん・・・あの・・・ごめん」
「ふふふ、ごめん。ちょっと意地悪したかったから・・・」
彼に笑顔で言った。
「でも、恥ずかしかったからこれでおあいこかな?」
「う、うん・・・・」
ここで私は思ったことを伝えることにした。
「ねぇ?」
「何?」
「今度から佐伯君のこと亮って呼んでいい?」
「・・・え?」
「やっぱりだめかな?」
こんなに急に距離を詰められたら・・・・
そんなことを思っていると
「そんな嫌とかじゃないけどどうして急に?」
「なんか・・・亮の方がしっくりきたんだよね」
「しっくり?」
「うん、なんだろう・・・すこし近く感じたっていうか・・・なんていったらいいのかな?でも亮の方がいいなって」
私は今回感じたことを彼に話した。
「うん、遠藤さんの好きな呼び方で呼んでくれていいから!」
その言葉に私は嬉しくなり笑顔がこぼれる。
そして
「じゃ、亮も私のこと奏ってよんで?」
「え?僕も?」
「うん、私だけ名前で呼んでいるのも変でしょ?」
彼にも同じ立場でいてほしかったから
私は彼に提案した。
「うん、わかった僕も奏って呼ぶね」
「なんか一気に進んじゃったね」
呼び方が変わった・・・
「え?」
「んん、なんでもないよ」
二人の距離感が変わった・・・・
急速に近づいて離れた
でも心の中はそこまで離れなかった。
彼の暖かさはまだ近くに感じる。
それが今の気持ち・・・
そして彼との距離なんだと感じた。




