寄り道・・・サイド奏
「・・・・」
沈黙。
「「・・・・」」
沈黙・・・
何も話さないことは特に不思議ではないけど
なんだが佐伯君がそわそわしている。
「ね?」
彼に話しかけてみる。
「え??」
過剰に反応している彼
「ふふふ、どうしたの?」
彼の焦った様子についつい笑ってしまった。
「いや、何も・・・どうしたの?」
彼は冷静を装って答えている。
そんな彼はどこか間が抜けていてかわいい
でも困らせてばかりだと可哀そうだから
「どこにいこうかって・・・佐伯君はどこか行きたいところとかある?」
「行きたいところか・・・・」
真剣に悩む彼
「うーん・・・」
「・・・・」
そんな彼を私はあえて黙って見つめてみた。
困いる彼をあえて見ているのは意地悪だろうか?
それでも彼の必死にしている姿は・・・
(なんて言えばいいのだろう?初めてのことに挑戦する子供のような感じ?)
頭の中ではオロオロする子供の姿が思い浮かぶ
私がそんなことを考えていると
「ゲーセンとかカラオケとか・・・かな?」
やっぱり自信なさげに私に聞いてくる。
「ゲーセンかカラオケかぁ・・・」
自信がないながらに真剣に考えてくれた彼・・・
私も彼の真剣な提案に真剣に答えてあげないと
(・・・・・)
ゲーセンとカラオケ・・・・
ゲーセンだとなんだか騒がしい気もするし・・・・
でもカラオケは歌か・・・・
うーん・・・・
佐伯君の歌聞いてみたいかも
「じゃ、カラオケにしようか?」
「カラオケ好きなの?」
「うん・・・そうだね・・・歌うのは好きかな?」
歌は嫌いではないけど本当は佐伯君の歌が聞きたかった
なんていう本音は隠して笑ってみた。
カラオケを提案してきた佐伯君は好きなのかな?
「佐伯君は好き?」
「え?あ!歌うの?」
「うん」
「そーだな・・・」
あれ?
彼は自信なさげに考えている。
(歌うの苦手なのかな?本当はゲーセンの方がよかった?)
私はすこし不安になる。
でも彼は
「歌うのは好きかな?うまくはないけど・・・・」
声は小さいけど答えてくれた。
彼の答えに
「私もうまくはないよ」
私はなんだかうれしくなった。
きっと彼も不安なんだと感じたから
想いの共有はなんだろう・・・
素直にうれしい。
「そうか・・・でもどうしてカラオケに?」
「うーん、単純に歌が好きなのとあと・・・ゲームセンターって騒がしいでしょ?私はあまり人とか多いと苦手だから・・・」
ほんの少しだけ嘘をついた。
きっと
「佐伯君の歌が聞きたい」って言ったら
彼はもっと不安を与えてしまうから
だから小さな嘘をつく
「そうか、うん・・・じゃ、楽しもうか?カラオケ?」
「うん!」
私は元気よく答えた。
小さな嘘をかき消すように・・・
これくらいの嘘なら許してくれるだろうけど
やっぱりなんだか罪悪感はあるから。
そんな思いを浮かべながら彼と何気ない会話をして歩く。
・・・・
何気ない本当に何気ない会話
自然に言葉が口からあふれる。
きっとこれが本当に何気ないということなんだろうと思う。
私でもこんなに普通に話すことができることが少し以外
自分でいうのもなんだか不思議だけど
こんな時間を過ごすことが私の人生にあるとは思わなかった。
いつも私は蚊帳の外
別にみんなが悪いうわけではない
自分から進んで外に出た。
幼いながらに人との距離感の難しさが
私を外へと押し出した。
人と関わることが私にとってはつらい事だったから・・・・
(でも今は・・・・)
彼なら・・・
彼ならそんなこと考えることなく話せる。
それは本当に不思議なこと
そんなことを考えて歩いていたらいつもの間かカラオケ屋さんの前にいた。
私は
「ついたね」
と彼に言う。
「うん」
彼は緊張しているのか短く返事を返してくれる。
店内へと入ると流行りの曲が大きな音で流れてて
ゲーセンとまではいかないけどそれなりに騒がしかった。
「いらっしゃいませ」
男性の店員が声をかけてくれる。
「会員アプリおもちですか?」
「会員アプリ?あー・・・」
店員さんに聞かれた彼は少し困り顔で
「あの持っていないんですが・・・」
と答えていた。
(カラオケやっぱりあまり得意じゃなかったかな?)
頭の中にふとよぎった。
私が行きたいって言ったから無理してたんじゃないか?
「それでしたらこちらのQRコードを・・・」
彼に登録方法を教えている間
不安でなんだかそわそわしていた。
彼が教わっている間そのそわそわのせいか店内を何度も見渡した。
そして彼が登録を終わったころ
「大丈夫?」
と声をかける。
すると
「うん、親切に教えてくれるから」
と登録が無事に済んだことを教えてくれる。
私の中ではそれももちろんだけど
(カラオケで大丈夫だった?って意味もあったんだけど・・・)
でもタイミング的には登録の方を心配していたって思われても仕方ないタイミングだったなと改めて自分が情けなくなっていると
「どの機種にしましょうか?」
店員さんが聞いてくる。
「うーん・・・」
彼が困ったように声を出す。
さっきの挽回の意味を込めて今回はとは思ったけど
(カラオケは本当にわからない・・・・)
どうしていいかわからずに困っていると
ジー
っと彼と目が合う。
きっと彼も決め損ねてるのだろうけど私もわからないから
笑顔で彼を見返した。
「「・・・」」
二人の間に沈黙が流れる。
(どうしたら・・・・)
すると
「こちらの機種が今開いてまして人気ですよ」
店員さんがおすすめを教えてくれる。
「じゃそれで」
彼が率先して返事してくれた。
「ではこちらの部屋は・・・」
彼は道を簡単に説明をうけて先頭を歩く。
たったったった
なんだか彼の背中をみていると
(男の子なんだな)
って感じる。
そんな背中がすこし浮き上がり
「ふー・・・」
と息が漏れる。
「どうしたの?」
彼のため息に少し不安を感じて聞いてみる。
「なんか・・・ちょっと緊張してきた・・・かな?」
照れながら答える彼
さっきまで男の子らしかったのに
今はいつもの彼・・・
これがギャップってやつなのかな?
さっきまでの不安がきえてなんだか暖かい気持ちになる。
「ふふふ、そうだよね?私も緊張してきたかも」
なんだか少し高揚感が混じった声で彼に返した。
(彼でギャップを感じることがあるなんて)
普段は彼のかわいい部分に目がいっていたけども
先頭をきって歩く彼はほんの少し男の子だった
どこかとかそういう細かい事はわからないのだけど
きっと先を歩いて私のことを導いてくれてる姿がなんだろうか・・・
男の子だった。
(ふふふ、なんだろう・・・変な感じ・・・)
ギャップを感じている自分自身が可笑しくなってき
そんなことを思っていると店員さんが教えて部屋に近づく
部屋の前につくと
「ここだね」
私は彼に確認した。
「あ、うん・・・じゃ入ろうか」
彼はまた緊張しているのかなんだか返事がぎこちない
それでも彼はドアノブに手をかけて
ガチャ
っと音をたてて扉を開ける。
そこには少し薄暗い部屋に煌々と光るテレビが目に入る。
「じゃ・・・わたしは奥に行こうかな」
なんとなくいつもの癖なのか奥の方に
私が奥に座ったからか
彼は手前に座った。
「なんか来ちゃった感じだね?」
「そうだね・・・なんか来ちゃったね?」
「ふふふ」
なんだかワクワクと不安が私の中に渦巻いて笑ってしまう。
友達とカラオケなんて・・・
ましてや男の子とは初めてのカラオケ
緊張してないわけではないむしろ不安がある
けど彼はどんな歌を歌うのかと思うと期待もあった。
その期待は私を自然と準備へと行動させた。
・・・・
(よし、準備は良い感じ・・・・)
「佐伯君はい」
マイクを彼に渡す。
「ありがとう」
彼が受け取った。
(これから・・・どうしようかな?)
私から歌ってもいいけど
それはなんだか恥ずかしい・・・
かといって彼に初めに歌ってもらうのも悪い気が・・・・
(うーん・・・・迷うな・・・・)
はじめてだとどうしていいかわからずにいろいろ迷ってしまう。
このまま迷ってても時間が経ってしまう
そう思い
「佐伯君?どうする?はじめに歌う?」
とカラオケの端末を彼に差し出し様子をみる。
すると彼は苦笑いをして
「・・・ごめん、なんか緊張してて・・・」
「そうだよね、緊張するよね」
彼に押し付けてしまい私も苦笑いをしてしまう。
でも思ったことを彼には素直に伝える。
「私もね、なんか緊張しててつい佐伯君に先に歌ってもらおうって話ふっちゃった」
笑ってごまかしてしまう。
(佐伯君も迷惑だよね・・・)
素直に伝えておきながら後悔をしてしまう。
(さっきから私はわがままばかり・・・)
なんだか私はどうしてこうなのだろうかと思いがめぐる。
(きっとこんなことばかりしてるから一人なんだろうな・・・)
たのしくなるはずの時間だったのに・・・
残念な気持ちが湧き出そうになった時に
「うん!僕から歌うよ!」
彼が勢いよく言った
「わ!?そんなに大きな声出さなくてもいいよ?」
びっくりとうれしさで笑ってしまう。
私は
「ありがとう」
と感謝の言葉を言う
彼は不思議
まるで私の不安を察するようにフォローしてくれる。
しかもいつも自分を奮い立たせるように一生懸命に・・・
そんな感謝の気持ちを込めて
彼にカラオケの端末を渡した。
すると彼は考えながら端末を操作する
(彼はやっぱり優しいこんな私を・・・)
可愛かったりすこし頼りになったり
そして
今みたいに優しかったり
彼は私にいろいろな感情をくれる。
朝のひと時とは違う今の時間
長く過ごしていくことで彼の人間性がさらにわかっていく
・・・・
真剣に考えて端末を操作する彼
曲が決まったのか端末操作を止めて画面を見つめる。
画面には曲名が映し出される。
それは有名な曲で私でも知っている。
(きっと彼は私のことを気にかけて選んだんだろうな・・・)
真剣に見つめていた端末から彼の思いを感じる。
そして私は拍手をした。
・・・・
一瞬の静寂
そして音楽が鳴る。
それと同時に彼は声を出す。
「♪~」
彼の声が音楽を混じり私の耳に入る。
彼はやはりどこかオドオドしてるように歌う。
けれども
それはけして後ろ向きなものではなく
私にむけての思いやり
一生懸命に歌う姿で
私に伝わるかどうかだけが不安なオドオド
(そんなに心配しなくてもいいのに・・・)
彼の歌はしっかり私に伝わってる。
愛おしくなるほど彼は頑張る
私なんかのために・・・
(本当に私のために・・・ありがと・・・)
彼の心使いに感謝の気持ちがあふれてくる。
そんな気持ちに浸っていると歌は終わりをむかえた。
バチバチバチ
と拍手した。
拍手が恥ずかしいのか少し下を向きながら
「ありがとう」
と答えてくれる。
私は彼に
「佐伯君歌の時と普通の時の声なんか違うね?いつもよりなんか・・・甘い声?」
と感想を彼に告げる。
本当にいつもと違う彼の声
本当の感情は恥ずかしいから
でも声のことは本当に思ったこと
甘くて優しい声・・・
それは彼の心と同じみたいな声だった。
そんな私の言葉と視線が彼の視線をさらに下をむかせる
「そうかな・・・」
恥ずかしそうに答えた。
私はその姿がやっぱりかわいくては笑みを絶やさなかった。
そして
「次は私が歌うね」
私はマイクを手にして選曲をする。
(せっかく彼も一生懸命歌ってくれたんだから私も・・・)
私も歌が得意なわけではない
けど
彼も一生懸命歌ってれたんだから
私も私ができる限り一生懸命歌ってみたいって思ったから
私の好きな歌をいれた。
曲が流れて私の心がすこし緊張する
それでも私は声を出した
「~♪~♪」
音楽が奏でるリズムに私の声が重なる。
誰かにむかってこんなに真剣に歌うことはない
少なくってもこの人生の中で歌ったことはなかった。
音楽の時間で歌う合唱でさえ口を動かしている真似をしているだけ・・・
心を込めて歌う・・・・
そんなことはないと思ってたから・・・
「♪~~」
歌を歌いながら彼の様子をみる
「・・・・」
彼は何も反応していない。
(あれ?私間違った?)
何もないことに不安を感じる。
(どうしよう・・・・)
でも・・・なんか不満を感じてるのとは違う気がする・・・
無表情だけど何かを感じているような
なんとも言えない感じが伝わってきた。
想いがめぐりながらも歌は終盤になり
最後の最後までなんとか歌い切った。
(ふぅ・・・)
マイクをテーブルに置く
彼の方に向かって
「変じゃなかったかな?」
不安を彼に尋ねる。
・・・
少しの間をおいて
「うん、よかった!」
彼は大きな声で答えてくれる。
その声が多分すべてだと思った。
「ありがとう」
私は笑顔で答えた。
彼が嬉しそうにしているのが私は単純にうれしいと感じた。
これは変化
私にはいままでなかった変化
誰かが喜んでくれることがうれしかったり
反応がないことに不安になったり
相手のことを思っていろいろなことを思考したり
今日はたくさん私の心が動いた。
やっぱり不思議・・・・
そう不思議・・・・
私にもこんな心があったことが・・・・
それを気づかせてくれたのが彼・・・・
佐伯君だったことが・・・・
そうこれは本当の
『ありがとう』
今日の日はきっと私の宝物になるそんな気がした。




