二人の放課後・・・サイド奏
「おはよう、遠藤さん」
「おはよう、佐伯君」
今朝も彼が私に声をかけてくれる。
前にはなかった“当たり前”ができていて私もそれをなんの疑問も持たずに過ごす。
朝の涼しい空気・・・
その空気が二人の間を埋めている。
でもそんな時間もそこまで長くない。
時間が経つにつれて埋まっていく席・・・
朝の静寂は徐々に騒がしく・・・
でもほんの少し前みたいなざわつきはない。
もう佐伯君との朝の時間は周りからしたら当たり前なのかもしれない。
「せんせー」
(?)
声の方を見るとそこでは佐伯君と清水君が絡まっていた。
そして
「・・・どうした?清水君?」
佐伯君は清水君に問いかける。
「どうしたもこうしたもさ~どうして俺には春がこないのだろうか?」
「なんだよ突然?」
すると
(ん?)
清水君と少し目が合った
その様子をみた佐伯君は
「・・・はぁ・・・あのなぁ・・・・」
「わかってる!」
清水君がすこし大きく彼の言葉を遮る
続けて
「“友達”なんだろ?遠藤さんは?」
(!?)
私と彼が友達?
そうなの?
「それをわかってそういう態度をとるしみナントカさんはどうして僕のところにいるのかな?」
私の疑問をよそに彼はその言葉をそのまま受けていた。
(彼は私の友達・・・)
心の中で繰り返しこだまする。
「お、おい、そんな目で見るなよ・・・」
そんな中まだか彼らには動きがあったみたで
「ごめんって・・・でもさ、青春真っ盛りの俺たちなのにさ、何もないのはな~」
清水君が悲し気に言うと
「まぁ・・・たしかに・・・」
彼もどこか遠くを見た気がする。
「青春ね・・・・」
小さく声が聞こえた。
騒々しい中でも彼の声がまるで一人の時のように
その声はなんだかとても重く私の中に響く
彼はいつも明るくみんなと接しているけれど・・・
なんだかすこし壁があるような気がする。
それでもうまく過ごしているからみんなとも仲がいい・・・
私は不器用なのかな?
もし彼みたいにうまく過ごせてたなら
でも私には・・・・
そんな考えが横切った時に
「まぁ、僕はどうだかわからないが・・・清水だってきっと素敵な相手がみつかるよ」
彼は優しく清水君には言う
「しぇんしぇい・・・・」
そのまま清水君は佐伯君に抱き着いた
「おい、離れろよ!!」
「いや、今はこのままで!!!」
「おい!!!!マジで!!!」
彼らのやり取りをみて周りは笑っている。
なんだかうらやましいし
それでいて微笑ましい。
ついつい私も笑みを浮かべて彼らのことを見てしまう。
(私も・・・)
心の中で何かが動いた。
いつもなら思わないこと
でも
どこか憧れていたのかもしれないこと・・・
『友達との放課後』
別に放課後じゃなくても教室でもいいかもしれない・・・
でも私には大勢の人の前で誰かと話すのは無理
けれど二人きりならきっと普通に朝の時と同じように話せる。
それに憂鬱な放課後も変わるはず
「佐伯先生~」
「はぁ~」
彼らの楽し気な声を聴きながらその日は過ぎる。
放課後
(さあ、放課後・・・佐伯君を探さないと)
今日考えたことを実行するために私は
キョロ
辺りを見渡しながら彼を探す。
すると彼が一人でいるのを見つけた。
(あ、いた)
心で見つけた喜びをかみしめて
彼の後ろへと近づく
「余計疲れたぞ・・・清水よ・・・はは」
彼は何かつぶやき肩をすくめる
そんな彼に私はほんの少し勇気を出して
「佐伯君?」
「え?」
彼は驚きすぐに振り返る
「遠藤さん?」
なんだかすこし可笑しい。
慌ててる彼は本当に・・・
「ごめん・・・驚かせちゃったかな?」
「いや、あの・・・すこし・・・」
苦笑いしながら答えてくれた。
それでいていつも素直・・・
「佐伯君は正直だね」
私はそういうと微笑んだ。
「なんか、ごめん」
彼はなぜか謝る。
どちらか言えば私の方が驚かせてしまったというのに
「なにも謝ることないよ?今日は大変そうだったから、気になって声かけただけだから」
「ああ、そうだよね・・・なんか・・・ごめ・・・」
彼はまた謝ろうとする
別に謝ることなんてない
だって友達になりたいのにそんなにかしこまってたらなんかおかしい
「だから何度も謝らないでもいいよ」
彼に壁を作ってもらいたくなくて私は早めに言葉を遮る。
「う・・・うん・・・わかった」
(すこし威圧的?だったかな?)
心ですこし不安を感じたけど
対等な関係にしたかったのと
彼がすこし戸惑っているのはなんだかかわいい。
「ふふふ」
ついつい笑ってしまう。
「なんか最近こんな感じ多いね?」
彼は言う。
確かに多いかもしれない・・・
いつの間にか彼と一緒の時間笑顔になっていること
「・・・そうかも・・・ね?」
私は笑顔で答えた。
そして今朝考えていたことを彼に告げる時が来た。
そう思うとなんだか緊張してきた・・・
(でも決めたから・・・今日は彼と放課後を過ごすって)
「佐伯君、これから時間ある?」
「え?」
「うん、すこし寄り道していかない?」
「寄り道?」
彼は少しあっけにとられていたようだ。
「そう、寄り道、みんなしてるよ?」
そんな彼に私は笑っていった。
「でも、あの・・・・僕とでいいですか?」
敬語で答える彼・・・やっぱりかわいい。
「うん、君と」
つい彼が敬語だから笑ってしまう。
「はい・・・お願いします」
彼は頭を下げている。
その姿に思わず
「・・・もう・・・佐伯君は・・・行こうか?」
なんだか彼はやっぱり変わってる。
こんな私の言葉を受け入れてしかも
そんなに頭を下げることでもないのに・・・
まるでこれって・・・
んん、今はいい。
彼と放課後を過ごす。
それだけで・・・・




