二人の放課後・・・サイド亮
「おはよう、遠藤さん」
「おはよう、佐伯君」
いつもの時間にいつものあいさつ
いつの間にかスムーズに行われるようになった朝のルーティーン
そして二人の時間から一人、二人と増えていく空間
二人の間にたくさんの人の壁が出来上がったころ
僕はまたいつものようにみんなが思う“佐伯亮”を作り出す。
そして彼女も静かに“遠藤奏”になっていく
いつの間にかの“いつも”
クラスメイトは最初のころは騒いでいたが
今となってはその話を話題にすることはなかった。
そのかわり違う形で僕たち二人を認識していた。
それは・・・・
『恋人』
かかわりは朝の時間
そのほんのひと時に甘い香りを感じたようだ。
でも前のようにひそひそと話すことはなくどこか暖かく見守っている
そんな感じだ。
「・・・・」
なんだが居心地の良いのか悪いのか・・・
「せんせー」
後方から声が聞こえるのと同時に背中にどしっと重さを感じる。
「・・・どうした?清水君?」
声の主に優しく問いかける。
「どうしたもこうしたもさ~どうして俺には春がこないのだろうか?」
「なんだよ突然?」
すると
チラ
遠藤さんの方に目を向ける。
「・・・はぁ・・・あのなぁ・・・・」
「わかってる!」
僕の言葉を途中で遮り言葉を続ける。
「“友達”なんだろ?遠藤さんは?」
「それをわかってそういう態度をとるしみナントカさんはどうして僕のところにいるのかな?」
うすく瞼をあけて白い目で彼をみる。
「お、おい、そんな目で見るなよ・・・」
さすがに僕の視線にすこし怯んだようで
「ごめんって・・・でもさ、青春真っ盛りの俺たちなのにさ、何もないのはな~」
そういって落ち込む清水
「まぁ・・・たしかに・・・」
そういって僕も遠くに目を移す。
そして
「青春ね・・・・」
なんか前も同じようなことを考えたような気がした。
でもいつ考えたまではでてこない。
いつも何かしら考えてそれでなにも答えは出てこないでそれの繰り返しで
何も成果は得られない無意味な思考の繰り返し
これを人は多感という言葉を使って僕たちのような世代を一括りにする。
でもそれはあながち間違えてないのだろう
なぜなら先人もこの時期を過ごしてそれで感じたのだろうから
「まぁ、僕はどうだかわからないが・・・清水だってきっと素敵な相手がみつかるよ」
そういうと清水ははっとした顔をして
「しぇんしぇい・・・・」
ヒシ
「おい、離れろよ!!」
「いや、今はこのままで!!!」
「おい!!!!マジで!!!」
そんな僕達のやり取りをみて周りは笑っている。
「ほんと・・・・」
飽きれていると目の端に彼女の姿が映る。
その彼女は静かに笑みを浮かべていた。
その姿を見て僕は
「・・・・」
下をみて少し恥ずかしさを感じていた。
「佐伯先生~」
「はぁ~」
この調子で今日は慌ただしく過ぎた。
その放課後・・・
「つ・・・疲れた・・・」
今日の清水はどうしたのだろう?
「あれか?疲れが顔に出てたから気遣い?」
だとしたら
「余計疲れたぞ・・・清水よ・・・はは」
やっぱり憎めない奴だ。
そのとき
「佐伯君?」
「え?」
後ろからの声に驚きすぐに振り返る
するとそこには
「遠藤さん?」
彼女がこちらをみて声をかけてくれていた。
「ごめん・・・驚かせちゃったかな?」
彼女はすこし申し訳なさそうに声をかけてくれる。
「いや、あの・・・すこし・・・」
苦笑いしながら彼女に答えた。
すると
「佐伯君は正直だね」
そういうと微笑んでくれた。
その笑顔に僕は
「なんか、ごめん」
苦笑いをして彼女に返事をしたら
「なにも謝ることないよ?今日は大変そうだったから、気になって声かけただけだから」
「ああ、そうだよね・・・なんか・・・ごめ・・・」
「だから何度も謝らないでもいいよ」
彼女は僕がもう一度謝罪の言葉を言いかけた時遮るように言う。
「う・・・うん・・・わかった」
出そうな言葉を飲み込んで彼女の言葉に反応した。
「ふふふ」
そんな僕の姿が面白かったのか彼女は笑っていた。
「なんか最近こんな感じ多いね?」
最近何度かあるこんな場面・・・
彼女が笑うそんな場面・・・
「・・・そうかも・・・ね?」
彼女はその笑顔を崩すことなく答えた。
その姿は僕の心をくすぐった。
そう・・・・
彼女は僕の心を揺り動かす。
でもそれは決して嫌なことではなくて
どこか恥ずかしくて
どこか心地よい・・・
「佐伯君、これから時間ある?」
「え?」
「うん、すこし寄り道していかない?」
「寄り道?」
彼女の言葉にすこし間抜けに答えてしまう。
「そう、寄り道、みんなしてるよ?」
彼女は笑いながら言う。
「でも、あの・・・・僕とでいいですか?」
なぜか敬語で彼女に尋ねる。
「うん、君と」
その顔を変わらず笑顔だった。
「はい・・・お願いします」
彼女の顔につい頭を下げてお願いしていた。
その姿に
「・・・もう・・・佐伯君は・・・行こうか?」
仕方ないかという温かい言葉が僕を迎えてくれた。
そしてその言葉に僕は素直についていくのであった。




