表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/14

7話 怠惰な生き方

起床、学校へ行く準備完了。

「あ、おはようございます」

ちょうど鳴瀬さんと家を出る時間が被った。

「おはよう、鳴瀬さん」

今日も良い一日になりそうだ。



時間が経つのは早いもので、気づけば中間考査のテスト期間が近づいてきた。

放課後、翠と廊下を駄弁(だべ)りながら歩いていると、教室で勉強をしている人達が

目に入った。

「周も勉強会やるか?」

俺が何と答えるか分かりきった声色で、翠が誘ってきた。

「俺が勉強会をしてまで勉強をすると思うか?」

そう答えると案の定、

「やっぱりそう言うか」

肩をすくめながら返された。なんか腹たつな。

“必要以上に努力する必要はない”なんて、よく言ったものだ。

…実際は努力が報われないのが怖いだけだけどな。

だが、それでいいと思っている。安泰を望むことこそが人類の性だ。

「蒼ちゃんは今回の範囲苦手なところある?」

蒼ちゃん、という言葉が聞こえた方向に目を向ける。

そこでは鳴瀬さんと男女のグループが集まって話していた。

「いえ、特には…苦手なところがあったら、また勉強会で教えますよ」

勉強会、か。にしてもすごい人数だな…

「やったー!え〜っと、私がわからないところは、ここからここまでかな!」

「全部じゃねえか!!」

ワハハ、と笑いの渦が起こる。きっとあの人はクラスの人気者だろう。恐らく。

そこで俺の目線の先に気づいたのか、翠がニヤニヤしながら口にする。

「おや、周殿。愛しの鳴瀬さんにご執心ですか?」

「ぶっ飛ばすぞ。…人がたくさん集まっていたから目で追っただけだ」

全くこいつは、少しでも隙を見せるとすぐからかってくる。

「あー、俺は勉強にそこまで熱心になれとは思ってないからな?」

申し訳なさそうに翠が口にする。

…なるほど、俺が勉強会をする人を羨ましがっていると感じたのか。

当たらずとも遠からず、だな。

「…予定が合えば」

「ん?」

「予定が合えば、勉強会をしないか」

小声で言ったが、翠の地獄耳はばっちり聞こえていたようで。

「っ!おう!帰って予定確認したら連絡するな!!」

嬉しそうに返事をする翠を眺めながら考えた。

ーー俺が羨ましいのは、何かのために努力できる人のことだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ