表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/17

14話 キモチ

「予習って大事だな…」

いつも通り翠と帰ってる最中、呟いた。

「そりゃそうだが…どうしたいきなり」

「いや…予習をすると授業の内容がめっちゃ分かる…革命だ…」

なぜ今までしてこなかったのか。面倒だからという理由で捨てるにはもったいなさ過ぎる。

「俺、秋が成長してくれてうれしいよ…あ、復習もしっかりな」

「はい…」

オカンか、と思ったが言っていることはごもっとものため、口をつぐむ。

問題が解けない→やる気が出ない→問題が解けない…の負のループに陥っていたが、いざ頑張ってみると意外と解ける問題もあったりして、結構面白い。

解けなかった問題が解けるようになるのも、モチベーションの向上につながるし。

「っと、それじゃ、また明日」

「じゃあな~」

とりあえず家に帰ったら復習をするか…


「ふぅ…」

同じ体勢を続けたことにより、固まった体をほぐす。

とりあえずあらかた復習は終わった。少し休憩したら、明日の予習でもしようか。

ピコン♪

メッセージだ。えっと…鳴瀬さんか。…鳴瀬さん?

何の用だろうか、と恐る恐る開くと、簡潔なメッセージが送られてきていた。

【ほどほどに、ですよ。】

…やっぱりエスパーじゃないか!

【同じ失敗はしません。】

大丈夫、もうあの時ほど焦っていない。

…いったい、なんであんなに焦っていたんだろうな。自分でも分からない。

そんなことを考えていると、猫がうなずいているスタンプが送られてきた。

「…かわいいな」

「…!?」

思わず出た言葉に、自分で驚愕する。

いや、俺がかわいいと言ったのは猫のスタンプに対してであって…って、なに一人でムキになってるんだ。

朝、翠に変なこと言われたせいです、と責任転嫁をしておく。

「…外でも歩くか」

勉強のしすぎかもしれない、と自分を納得させることにした。


「あ、柊木さん。奇遇ですね」

ちょうど部屋から出たタイミングで、同じく部屋から出てきた鳴瀬さんと鉢合わせた。

「ソウダナ~…」

…タイミング!!普段なら別に何ともないのだが、如何せんタイミングが悪すぎる!!

「柊木さんって…外出るんですね」

人のことを何だと思っているんだ。

「そりゃ出るぞ…食材買いに出るし…あとは…まあそのくらいだが…」

それを出ないというんですよ、とため息をつかれた。インドア派で悪かったな。

「それで、どちらへ行くんですか?見た感じ買い物ではなさそうですけど…」

「ちょっと息抜きに散歩でもしようかな、と」

…別に嘘は言っていない。

「なるほど…では私もご一緒しても?」

予想外の返答に思わず固まる。すぐさま復帰。

「…いいけど…そりゃまたどうして?」

この辺りは同じ高校の生徒が多いため、遭遇してもおかしくない。

朝も実は、ちょっと噂になっていた…たまたま時間が被ったから、方向が同じよしみで一緒に登校したことにしたが。部屋が隣なんて言ったらどうなるか分かったものじゃない。

…とにかく、この状況で一緒に散歩なんてしたら、あらぬ噂がたちそうで申し訳ない、というのが俺の考えだ。

「…私も、たまには気分転換がしたくなるんです」

普段とは若干違った様子に、思わず顔を見てしまった。

表情はいつも通り、でも、さっきの声色は…分からないが、

「…川でも見に行きますか」

とりあえず、それで鳴瀬さんの気分転換になるのなら。

「ありがとうございます、柊木さん」

「ん」

隣を歩きながら、考える。

鳴瀬さんと交流するようになって、分かったこと。

彼女は完璧超人なんかじゃない。

たしかに、容姿端麗、博学多才、人当たりもいい…非の打ち所がまるでない。

でも、彼女も人間だ。疲れたりもするし、嫌な思いだってする。

…少なくとも、彼女が望むうちは。

こうして寄り添うことも、隣人である俺の役目だろう。

変な噂だのは、今は関係ないのだから。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ