1話 隣に美少女が越してきた
「…はぁ」
柊木周は誰もいない自室でため息をつく。
いつも通りの何もない日常。別に嫌ではないのだが。
高校生活、上がらない成績。赤点スレスレを生きる日々。
一人暮らしだからそれなりに自由だが、自由だからといってやることもない。
そろそろ明日の準備をしようか、そんなことを思っていたらチャイムが鳴った。
…そういえば、今日はマンションの前に引っ越しトラックが止まっていたな。ついに隣人が来るのか。
「はーい」
扉を開けると、見たことがある人がいた。
「隣に越してきた者です。…柊木さん、よろしくお願いします」
…たしか、隣のクラスの。
「こちらこそ、よろしくお願いします。…鳴瀬さん」
学校の有名人。眉目秀麗、成績優秀。鳴瀬蒼に告白する人は後を立たないという。
「両親がしばらく海外にいるため、このマンションに住むことになりました。」
おお、大変だな…一人暮らしをするということはやはり家事スキルも高いのだろうか。
そんなくだらないことを考えながら挨拶を済ませた。
「…寝るか」
別に隣に越してきたといって、何か変わるわけでもない。
隣人との恋愛なんて、ラブコメだけの話だ。
そもそも綺麗=恋愛感情に結びつくわけではない、それだけの話だ。
色々なことがあったが、今日も一日無事に終えられた。