一話 異世界に召喚された
──事は、1日前に遡る
「──総合優勝出来ました!かんぱーい!」
「「「「「かんぱーい!」」」」」
オレたち2年1組は球技大会で優勝した後、教室で打ち上げをしていた。
「いやー蓮!なんでも出来るんだなー!」
「いや、みんなのサポートのおかげだよ」
早川蓮、クラスのリーダー的存在。
超イケメンで、頭もかなりよく、運動もできるなんともハイスペックな男である。なんでも出来るので妬みの対象になるのかと思いきや、性格もいいのでそんなことにもならない。
「そう言ってるけど海翔、お前が1番活躍してただろ?」
「じゃあ何で蓮より黄色い声援が少なかったんだよぉー!」
池田海翔、脳筋スポーツバカ。
バスケ部のエースで、スポーツならすぐに何でもできるようになる。しかし、勉強はからっきしで、テスト前には友達にみっちり教えてもらって何とか切り抜けている。
「真由香、そっちはどうだったー?」
「私は全然ダメダメだったよぉ〜」
市原真由香、クラスのマドンナ的存在。
その容姿は、見るものを魅了する力があるのではないかと思うほど可愛らしい。曰く、彼女を見てると庇護欲が掻き立てられ、守りたくなるという。
「それより渚ちゃんと京香ちゃんが凄かったよ〜!」
「私は自分にできることをやっただけよ」
志岐渚、クラス委員長。
容姿端麗、頭脳明晰、スポーツ万能と蓮の女性版みたいな感じ。見た目は可愛いよりではなく、華やかな美人って感じだ。一人でいるのが好きなのか特定の誰かとずっと一緒に居るというのは見たことがない。
「アタシはここで活躍出来なきゃ何ができるんだーってカンジだからさぁ」
浅井京香、ギャルのリーダー。
見た目が派手な誰もが思い浮かべるようなギャル。軽薄そうに見えて、芯があってしっかりしている。自分の言葉には責任を持つのでみんなから信頼されてる。
「皆様、ジュースのお裾分けです」
「おーオタクくん、気が利くねー!」
金本正彦、オタクグループのリーダー。
漫画、アニメ、ラノベなどオタクカルチャーを網羅している程のオタク。オタクといっても、このようにコミュニケーション能力もあるので教室の隅でコソコソしているタイプではない。
「弘道氏も、どうぞ貰ってください」
「あぁ、ありがとう」
如月弘道、メタいことをいうが主人公だ。
オレは、前世で魔王を倒し、世界を救った勇者だった。そこで大往生を迎え、この日本に転生した。死ぬほど努力して魔王を倒したので、現世ではできるだけ頑張らずに楽しく生きようと決めている。ちなみに、試してみてわかったことだが、前世で使えてた魔法などはそのまま使えるらしい。
こんな風にオレたち2年1組は、かなりすごいメンバーが揃っている。みんな人が良いので、クラスの中で仲違いが起きていたり、扱いに格差があったりするようなことは無くとても居心地がいいクラスだ。
前世のように仲間たちと研鑽を積んで強くなっていくのも楽しいが、このように友達とわいわいやるのも楽しいと思う。こんな時がずっと続いて欲しいと思う。
「みんなー、そろそろ帰りの準備してねー!」
「花ちゃん先生、わかりました」
加藤花、2年1組の担任。
教員3年目でオレたちが初めての担任だ。慣れない所もあるがとても頑張っているのが伝わってきて、みんなから人気があり、花ちゃん先生として親しまれている。
そう言われ、オレたちが帰りの準備を始めようとした時──
ゴゴゴッと教室が揺れ始めた。
「なんだ!?地震か?」
地震かと思ったが、教室がどこからか光り始めた。
オレたちは困惑して何もすることが出来ないでいると、光が強くなり、みんなを飲み込んだ。
「──ッ」
何かを言う隙もなくオレは意識を失った。