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律と欲望の夜  作者: 冷泉 伽夜
第一夜 Executive Player 律
31/72

波乱の順位 




 Aquarius(アクエリアス)の営業は終了した。いつものとおり、志乃がラスソンを歌って、店は閉まる。


 終礼時には、締め日恒例の順位発表だ。シャンデリア下のソファ席にホストたちが座り、全員を見渡せる位置に店長やスタッフたちが立つ。


 十位から順に、資料を持つ店長が口頭で発表していった。


「四位、拓海。六百四十万」


 湧き上がる拍手。だが、拓海は顔を伏せ、微動だにしなかった。それもそのはず。売り上げの半分以上は掛けが飛ばれているからだ。借金まで背負ったというのに、中途半端な順位に終わる。


「二位、志乃。九百五十万」


「あー! もうちょっとで一千万オーバーだったのに~」


 悔しがる志乃だったが、敬愛の拍手がこれでもかと送られる。


「一位、律」


 店長は息を吸い、声を張った。


「千八百万オーバー。よくがんばった」


 拍手の音が一番に響く。律はあいかわらず愛想のない顔で、ぺこりと頭を下げるだけだ。


 拍手が続く中、志乃の声があがる。


「桁が違うんだよな~、桁が」


 勝ち目など、ないのだ。勝てると思うことすらおこがましい。決して敵に回せる相手ではない。


 終礼が終わり、ホストたちはそれぞれにはけていく。その中で、拓海は顔を伏せて座ったまま、動こうとしなかった。


「エース、来てたら違ったんじゃないの?」


 うなだれる頭に、律の声が落ちる。拓海の前に立つ律が、冷めた顔で見下ろしていた。


「今日、来てなかったな」


 閉店一時間前になっても、リオが来ることはなかった。その時点ではもう、連絡を送っても既読がつかない状況だった。


「俺、言ったよな? このままだと飛ぶよ、って。俺だけじゃない。みんなそう思ってた。もっと、周りを見るべきだったな。俺ばかりを、敵視してないで」


 拓海はなんの反応も返さない。聞いているのかいないのかもわからない。


「掛けをするなとは言わねえよ。女の子を金でしか見れないのもわからんじゃない。でも、女の子を財布そのものとして扱うのは違うだろ。……明日から、心入れ替えて頑張れよ」


 返事は、ない。


 律は短く息をつき、その場をあとにした。





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