想いで語り
遅くなりました。
リーヴァイの部屋はシャアルの部屋より数倍豪華な部屋になっている。寝室の他に、対談できる様な小部屋もあり、風呂も付いている特別室。調度品も高価な物だと一目で解る物ばかりだった。
身分が知られていない宿では小部屋で大丈夫なのだが、この宿は定宿になるので、この部屋が空いてる時は必ずこの部屋に通される。王弟である事を隠しても、露わにしているわけでもないので、知られればそれはそれで良いとリーヴァイは思っている。
サンドイッチを美味しく食べた二人は、小部屋で椅子に向かい合って座り。お茶で一息つきながら、シャアルはリーヴァイに自身の今迄を語った。
「俺は気付いたらおじいちゃんと二人、森の中で暮らしていたんです。父と母の事は亡くなったとしか聞いていません。おじいちゃんとは、血は繋がっていない他人だけど、孫の様に可愛がって貰いました。
森の中にあるとは思えない程、立派で綺麗な家でしたよ。そこでおじいちゃんは薬師をしてました。俺は、治療と薬草の知識を一通り教えてもらっていたんです。だから、あなたへチェルシーを渡す事もできたんですよ。
ついつい、珍しい薬草を見つけると採集して、自然と干したり煎じたり、燻したりしてしまうんですよね。
本当は今回も、おじいちゃんと一緒に旅に出るはずでした。住んでた国は閉鎖的で、俺の見た目が人と違うから、きっと受け入れてもらえないだろう事は理解してました。
だから、違う国に行ってみて、こんな俺でもおじいちゃんみたいに受け入れてくれる人を探してみようかって……言って、準備もしてたのに、元気だったのに……おじいちゃん突然倒れて……そのまま動かなくて…………」
シャアルは俯き、伏せた目からは泪が流れて膝にポタポタ落ち、ズボンを濡らしていく。
リーヴァイは立ち上がり、シャアルに近寄り、小刻みに震える頭を大きな手で優しく撫でた。シャアルが落ち着く様に心を込めて、自分が居るからという気持ちを込めて撫でた。
「グスッ……うっ……ごめんなさい。俺は俺は……おじいちゃんと暮らしてて、何も不自由無くて、他の人とは誰とも話した事なかったけど幸せで……でも、俺のせいでおじいちゃんの生活壊してて。
前に、人と話してたの聞こえたんだ。領主様、お願いですから、御屋敷に住んで下さい。貴方様の知識を薬では無く知識を皆は待っているのです。この様な森の中に隠れ住むのでは無く、どうぞ、御屋敷へご帰還くださいって……
おじいちゃんは、笑いながら自分の余生は自分で、自由に決めるって。ちゃんとした領主も居るだろう……自分は隠居したんだって」
誰にも今迄言えなかった事、悩んでた事、悔しかった事を泪を溢れさせ言葉に詰まりながらも綴り、シャアルの気持ちをリーヴァイに伝えていった。
その中には、瞳の秘密も含まれており、フードを被っていても普通に外が見える事や、大型の野獣も消えろと瞳で命令すると、風が吹いて野獣は何故か斬り刻まれ死んでいく事。
おじいちゃん以外誰にも言えなかった事、おじいちゃんにも言えなかった心の底からの訴えを、リーヴァイには何故だか言えてしまうことに気付かず、話疲れて泣きながら、シャアルはリーヴァイの胸に寄りかかったまま寝てしまった。