目覚め
「うう~んんん~喉、渇いたぁ……水~……
みずぅ~あっ水だぁーおじいちゃんありがとう。美味しかった……えっ?おじいちゃん?」
「私はおじいちゃんでは無いぞ。シャアル」
シャアルはだるい身体で起き上がり、冷えた水を一気飲みした後、男の声に空のコップを持ったまま、機能停止した。
「俺!顔!身体!出してる!やばい、やばい!やばいよぉ~」
シャアルは、急いでふかふかな布団を頭から被り、潜り込んだ。すると、布団の上から優しくぽんぽん叩く動きがあった。
「シャアル、昨日の事は覚えているか。わたしはリーヴァイだ。シャアルと別れた後、私は風呂に入りに行ったんだが、丁度倒れそうになっていたシャアルに出会ったというわけだ。理解できたか」
「…………」
「出できてはくれまいか」
「でも、俺……見た目が……」
「ここまで連れてきたのは私だ。何か思う所があればもう言っている。ちなみに私は、シャアルは美しいと思うが。銀髪と黄金の瞳に、艶やかな肌を持つ君はとても綺麗だ」
「えっ!綺麗?」
「まあ、それよりも、その様に潜っていては暑苦しくはないか。もう昼過ぎだぞ、お腹も空いただろう。起きれるなら昼はどうだ」
「……」
さっきから、良い匂いがシャアルのお腹を刺激していた。自身のお腹の空き具合に我慢ができず、暫く考えた末、シャアルはのそりと出てきた。顔を出したシャアルの黄金の瞳と、リーヴァイの澄み切った青空の様なブルーの瞳がピタリとかち合った。
「おはよう。気分はどうだ?湯あたりした様だから、水は沢山飲んだほうが良いぞ」
「……ありがとうございます。いただきます」
氷の浮かんだ大きな入れ物に、水が沢山入っていた。それを新しくコップに注いでもらい、シャアルは喉の渇きが癒えるまで飲んだ。
「水分取ったのなら、次はコレの中から好きなのを取れ」
シャアルの目の前に出てきたのは、薄いパンに様々な物が挟んである、個別になった食べ物だった。シャアルは、おじいちゃんと二人山の中で暮らしていたので、自然の物はたべていたのだが、手の込んだお洒落な食べ物はこの旅に出るまでは、食べた事も見た事もなかった。
食べ物を前に悩んでいたら、何やら焼いたお肉が挟んである物を、一つリーヴァイは取り、パンを包んでいた紙を丁寧に食べやすい様に開き、シャアルの手の上に置いた。
もう一つ、揚げ物みたいな物が挟んでいる物を取り、こちらは無造作に紙を剥ぎ、リーヴァイは噛み付いた。
「コレは、サンドイッチという物だ。ただ齧り付くだけで良い。食ってみろ」
シャアルは、一つ頷き。小さく食べてみた。美味しかったのか、二口目からは大きな口を開けてぺろりと一つのサンドイッチを食べ切った。
「美味しかったです。昨夜から色々と助けていただき、ありがとうございました……あの……俺の見た目ってどうですか?おじいちゃん以外でちゃんとフード無しで接した人、貴方だけなんです。
明らかに違いますよね……俺。皆、チラリと見えただけで、逃げていくんです。俺……やっぱり隠れてた方がいいと思いますか」
「隠れたいのか」
「隠れたいわけないじゃない!色んな人と話したいし!色々な物食べたいし、見たい。俺、旅してきてフード越しだけど、凄くと楽しかったんだ。でも、やっぱり見た目とか、色々違うから……」
「まあ、時間はあるんだろ。急いでるのか」
「急いでません」
「じゃあ、先ずは腹ごしらえしよう。まだまだサンドイッチもあるから、好きなの好きなだけ食っとけ。その後、シャアルの話を私で良ければちゃんと聞くから、なっ」
シャアルは、頷き。いただきますと言って、サンドイッチを食べた。
黙々と美味しそうに食べるシャアルを暖かい目で見ながら、リーヴァイも街で人気のサンドイッチを食べた。