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リーヴァイ

迷惑な貴族が、帰って行ったのを見届けた後、シャアルは冒険者に御礼を伝えた。



「ありがとうございます」


「どおって事ないから。私も上手くいかないことがあって、苛ついてたから、チョッカイ掛けたい気分だったんだ。ランミーも、もう来るだろう」



奥から、彩り良い美味しそうな料理を、沢山持ったランミーが来た。



「お待たせー!ってどーしたの何かあった。変な空気だけど」


「何も無いから、この子に早く食べさせてやれよ」


「そうね。シャアル君さあ!食べて」


「わあ!美味しそうです。いただきます」


「召し上がれ」


「ランミー。さっきと同じ酒くれ」


「了解。すぐ作るわね」



ランミーはカウンターの中へ入って、慣れた手つきでお酒を作り始めた。


 冒険者の者は奥の円卓へ行き、一緒に呑んでいた数人に声を掛けて、中身が残り僅かな大きなジョッキと、おつまみを手に持ちシャアルの隣へ座った。



「お邪魔するぜ」


「……」



口に大きなお肉の塊が入っているので、声が出せなく、頭を下げて了解の返事としたシャアル。



「美味いだろう」


「はい。とっても美味しいです」


「ここの飯は美味いんだよ。作ってる親父は厳ついが、味は最高だ」


「あははは、厳ついよね。パット見た目熊だもんね。その料理も実は、マスターが作った料理を私はあっためて盛っただけなんだけどね。シャアルはゆっくり食べてね」



ランミーは、他のお客に呼ばれて笑顔で去っていった。残されたのは、フードで顔を隠しながらも、パクパク目の前のご飯を食べているシャアルと、シャアルを見ながら、のんびりと大きなジョッキを傾けている冒険者の男。


 シャアルが全て食べ終えお腹が満腹になった頃には、その場にはシャアルと男と、酔い潰れた数人の男が所々にイビキをかきながら寝ているだけだった。


 ランミーもさっき、お皿そのままで良いからねって、伝えて帰っていった。時刻も、もう数時間で日の出という頃だ。


 シャアルはフード越しに周りを見渡し、この場の人間をチェックした。少年一人の旅だと、何かと物騒な事が多く、その場その場の人間のチェックは癖になっていた。数人の男達も、寝言を言ったりイビキをかきながら寝ていたので、シャアルは安心した。



「ごちそうさまでした」


「おう!皆帰ったぞ。私達も帰って寝るとするか」


「俺を待っててくれたんですか?」


「嫌、私もお前が来る前に来たからな。のんびり呑みたかったんだ」



冒険者の男は、最後の酒を喉に流し込み立ち上がった。シャアルも立ち上がり、ポケットから小さなものを出して冒険者の男の前に差し出した。



「御礼です。受け取ってください」


「いらないから、私は呑んでただけだからな……って!お前それ」


「多分ですが、貴方はこれを探してたのかなって思いまして」


「何処にあった……」


「えっとお、サイバル国の山の中腹の崖の下です」


「お前!そこに行ったのか、それが何か知ってて持ってるのか」


「そうですね。知ってて持ってますが、見つけたのは、本当に偶々だったんですよ。俺、今。別に使う用はないですから、あげます」


「駄目だ。それはかなり貴重な薬草だから、貰うわけにはいかない。それなりの代金はきちんと払う」



冒険者の男は、胸元から袋を取り出し中に手を突っ込み無造作に掴み、手の中の物を机の上に置いた。そこには金貨の小山ができていた。




「それは多いですよ。貴方が、他の方にチェルシーの花、持ってないか、咲いているのを見かけてないか、聞いてたので、偶々俺は持ってたので貴方への御礼で渡す事にしただけですから」


「駄目だ。これだけは受け取ってもらうぞ」


「仕方ありませんね。それでは、これだけ貰います」



シャアルは上から三枚だけ手に取り、ポケットへ入れた。そして、違う手に持っていたチェルシーの薬草をそっと金貨の横へ置いた。



「それでは、おやすみなさい」



軽く会釈して、背を向けたシャアルに冒険者の男は何故か、言葉をかけることが出来ずに見送った。



「……ああ、ふぅー まあ、良いか。有り難くこれを貰っておく。もし、この国に居て、何か不都合があれば、いつでも力になる。私は、リーヴァイだ。シャアル」


「リーヴァイさん。おやすみなさい」


「おやすみシャアル。薬草本当に助かった。ありがとう」



シャアルは部屋に戻っていった。リーヴァイは、シャアルを見送りながら掌をヒラヒラ動かしていた。


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