エピローグ
結局その夕食は、数一と美香が恋人同士として共にとる最後のディナーとなった。
後日二人は、「最後の晩餐の晩餐というのは日本人が勝手につけたもので実際にはとても質素なもので・・・!」「それは分かってるけどそうじゃなくて・・・!」というやり取りから始まる小さな口論をしたが、それが分かれた直接の原因ではない、というのが少なくとも二人の間の共通認識だ。
分かれた理由は、将来についての価値観が合わなかった、というのが実際のところであり、偽らざる本心だった。
ここまでの仲になった男女が奇麗に別れる、というのは一般論としてはとても難しいことだが、それでも二人はかなり奇麗な別れ方をした。
さすがにその後も友達として度々会う、というほどの奇麗な別れ方ではなかったが、友達としてたまに連絡を取り合うくらいの間柄を保つことができた。
オルゴニカと魔法の魔法瓶が織りなす壮大なストーリー、なんてものがあれば物語としては面白かったのだろうが、現実とはなかなかそのように都合よくは展開しないものだ。
だが、事実は小説より奇なり、という言葉に従うなら、二人にはそれぞれもっと想像もつかない面白い人生が待ち受けているに違いないのであった。