最後の晩餐
数一の夢に沿えなかった罪滅ぼしの意味も込めて、美香は数一にささやかな夕食をごちそうした。
ごく一般的なカップルがそうするように、普段は数一が美香に食事をおごっていた。
いつも数一がご馳走してくれる雰囲気のあるディナーは、美香にとってはお気に入りだったが、それは過去に数一にそういった店を教えてくれる彼女がいたからできることなのだと勘づき始めていた。
数一の方は、今回のことは特別だったので事情が気になっていたが、聞くことはできなかった。
夕食を共にしながら、数一は酒の勢いも借りて最後の晩餐の話をした。
美香は、数一がそう言った宗教的なことに関心があることに気付いてはいたが、それまで特に気にする風でもなかった。
特に美食家というわけでもなく、体も細い方であった美香は、それでも最後の晩餐と聞いて、晩餐という言葉の意味は辞書でも引けばわかるにしても、ディナーが晩餐と呼ばれていたころの食事の雰囲気はどんなものだったか今の時代となっては知ることができない、といったことにぼんやり思いをはせていた。
何しろ美香は宗教的なことには興味がないのだから、そういう風にしか数一の話に興味が持てなかった。
その夜も、美香は数一の部屋を訪れ、オルゴニカを少し演奏した。
そして、ごく一般的なカップルがそうするように、二人の夜を過ごした・・・