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魔法の魔法瓶
数一の研究している魔法の魔法瓶というのは、お湯を注ぐと氷ができる不思議な魔法瓶、という突拍子もない代物だ。そんなものが本当にできるのか、作ったとして役に立つのか、初めてその存在を知った人にはいろいろな疑問がわくのは当然のことだ。
もちろん大学の研究室で研究されているからにはそれなりの理屈はある。
具体的に言えばエントロピーとか自由エネルギーとかデュワー理論とか、専門の理論を駆使すれば本当に実現できるものでもあるし、電気を起こした熱でサーバーコンピューターを冷やすという立派な使い道もある、なんていうのは関係ない人にとってはどうでもいい理屈だが、そんな数一の熱心な説明に美香は、まあそんなものなのかもしれない、と一応納得していた。
そして工学部の数一が本気で研究して経済学部の美香がそれを商売として成り立たせる、という道はひょっとしたらアリなのかもしれないと、現実主義の美香も時には心が揺らぐこともあった。