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ブラウン管テレビの使い方

作者: 伊吹岬

とある大学の理工学部の電気コースの研究室に突如としてそれは現れた。


「教授、これはなんですか?」


一人の学生が物珍しそうに聞いてくる。その生徒の目の前にあるのは立方体にしては少し歪な四角形の見た目につけられたモニター画面。


「パソコン……にしてはキーボードがありません」


前に後ろに隈なく見て観察をする学生。今の子達からすれば、携帯電話が肩掛けだったように意外性に富んだものかもしれない。考え続け、ついには工具箱を漁り始めたあたりで危機を感じて答えを提示した。


「それはテレビだよ」

「え!これがテレビですか」


やはり時代の流れによって消えてしまったみたいだった。それを思うとなんだか取り残されたこのテレビを見て寂しくなってしまう。


「そう、ブラウン管テレビって言って二千十年頃までは普通に使えていたんだ」

「どうして使われなくなってしまったんですか?」


答えを伝えようとして、思わず口を噤んでしまった。それでは面白くない。彼らなりの答えを出してもらわなくてはわざわざ持ってきた意味がなくなってしまう。


「それの答えを説明するのが次までの課題だよ」

「それ今決めましたよね?」

「どうかな」


作っておいたコーヒーをコップに注いで砂糖とミルクを入れる。その傍らでレポート用紙に何やら書き込み始めた。しばらく見ていれば、よしっと言って立ち上がり荷物を鞄に仕舞い込んでお疲れ様でしたと帰ってしまった。慌ただしいものだなと思いながら、先程のブラウン管テレビへと視線を戻す。もう時刻は夕方近い、この時間となれば学生などもう来ないだろう。もう一つ隠し持っていた物を取り出してブラウン管テレビへと接続し、電源を入れればいかにもファンキーな戦闘用のBGMが流れ始める。ブラウン管テレビは画面映りはいいのだが何せ電気代が高くつく。これは決して職権濫用とか暇つぶしとかでも格ゲーの予選が近いから練習したいとかでもない。

人間に必要なのはゆとりだ。ゆとりそこが人に優しく出来るきっかけを与えてくれるのだ。


「よっしゃー!コンボ決まったぜ」


戦いは始まったばかり。予選まではあと二ヶ月。


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