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第6話 傲慢

「おらぁ!」


テリーが剣を振るう。

ダンジョン内で10体程の魔物と遭遇、現在はその対処を行っているのだがその強さは凄まじく、まるで魔物が子ども扱いだ。

彼の剣の前に、対応できずに魔物達が成す術もなく沈んでいく。


「いやぁ。見事なもんだな」


「ふふふ。テリーは馬鹿だけど、剣の腕だけは本当に凄いですから」


エルは嬉しそうにテリーの無双を眺めていた。

少し熱を帯びたその表情から、彼に気があるのがよく分かる。


「ラスト!」


壁を蹴り、テリーが横っ飛びで魔物に飛び掛かかって首を刎ね飛ばした。

頭部を落とされた魔物は光の粒子となって消滅する。


「へっ、大した事のない奴らだぜ」


テリーが倒したのはリザードマンと呼ばれる魔物だ。

硬い皮膚に強靭な体躯、長い槍を扱う魔物で、下手なパーティーなら全滅してもおかしくない強さを持っていた。

だが彼はそれを一人で難なく屠ってみせる。


15にしてこの強さ。

間違いなくテリーは100年に一度の逸材と言っていいだろう。

エルの方も彼ほどではないが、その魔法のセンスは素晴らしかった。


彼らが順調に育てば、将来とんでもない冒険者に成長するに違いない。

それこそ、新筑した階層であるパンデモニウムすら攻略できる程の。

それだけのポテンシャルを彼らは秘めていた。


だが――それは成長出来ればの話ではあるが。


今までもポーターとして、俺は何人もの天才を見て来た。

だが彼らの殆どは名を遺す事無く落命している。

それは自らの才能を過信し、傲慢に振る舞った結果だった。


無謀な行動をすれば足元を掬われ、奈落に落ちる。

此処はそういう場所だ。

その為、才能の無い凡夫達よりも、己を過信した天才の方がそう言った状態に陥り易かった。


果たして彼らはこの中でどう成長し、生き延びていくのか……


「お!ドロップだ!」


魔物からネックレスがドロップする。

それはレアドロップだった。

此処まで2日。

レアドロップはもう既に4つ目となっている。


かなりの数の魔物を倒しているとはいえ、これは相当な幸運と言えた。

初回の時もそうだったが、彼らは才能だけでなく、運気も味方にしている様だ。


これはひょっとしたらひょっとするのかもしれない。

俺は期待の大型新人に、久々に心躍らせた。


「三日目だけどどうする?」


ダンジョン探索三日め、1週間の予定ならここで引き返すのが常道だった。

行きよりも疲れの蓄積した帰りの方が危険度は上がり、更に行軍も鈍ってしまう。

その為、ダンジョン探索では帰りに多めの時間を取るのが基本になっている。


「そうですね。そろそろ引き返した方がいいかも」


「何言ってんだよエル。まだまだ楽勝じゃん。もう一日進もうぜ」


テリーに疲れは見えない。

まだまだ元気いっぱいと言った感じだ。


「何言ってるのよ。日程は一週間なのよ、それだとオーバーしちゃうじゃない」


「だったら延長すればいいじゃんか。ミテルーいいよな?」


「ああ、俺は構わないよ。勿論延長料金は貰うけど」


テリーが聞いて来たので、俺は軽くOKを返す。

こういう場合に備えて携帯食料も基本多めに積んで来ているので、1日ぐらいなら伸びても大して問題はない。


まあ仮に問題があったとしても、冒険者が望むのならそれに異を唱えず付いていく。

それが俺のスタンスだが。


「じゃあ決まりだな!行こうぜエル!」


「もう、テリーったら」


エルは軽く口を尖らすが、本気で責めたり止めたりする気はない様だ。

二人の実力なら大きな問題が発生しない限り、まだまだ問題なく進める範囲であるそう彼女も判断しているのだろう。


だがその甘い判断が後々仇となる事を、この時の彼らは知らなかった。

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