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最強ポーターは力を隠して冒険者の冒険を見守る~え?自分は戦わないのかって?蟻んこ一々踏み潰したって面白くないでしょ?  作者: まんじ(榊与一)
転生者

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第53話 新規顧客

「よう兄ちゃん!今日はよろしく頼むぜ!」


ごつい髭もじゃのおっさんが、厳ついながらも笑顔で片手を上げる。


「ええ、よろしくお願いします。フォル・モッサさん」


彼の名はフォル・モッサ。

今日の俺の雇い主だ。

彼とは今日が初仕事、いわゆる御新規さんと言う奴だ。


ミシェイルは、神器の扱いを完璧にするための訓練を。

レイド達はスーメリアとグレートドラゴンとの戦いで何かを閃いたのか、此方も最近はずっと訓練に勤しんでいる。


つまり、俺は暇な訳だ。


テリー達の頑張りを遠隔で眺めるのも悪くはなかったが、それだけだと物足りない。

やはりこういう事は生に限る。

臨場感が違うからな。


「フォルで良いぜ!俺もお前の事をミテルーって呼ぶからよ!あと話す時もタメでな!」


彼はざっくばらんな性格の様だ。

まあ嫌いじゃない。


「ふふ、ごめんなさいね。この人、凄くおおざっぱだから」


彼の横には、青いローブを身に纏った美しい女性が立っている。

綺麗な金の髪や顔整った立ちもそうだが、その中で最も目を引くのは、長く伸びてとんがっている耳だった。


所謂エルフという奴だ。


亜人種族として存在している事は知っていたが、この目で見るのは初めての事だった。

そう言えばスーメリアも体を変形させてはいたが、フェアリーだったなと思い出す。

彼女は今頃武者修行とやらに精を出している事だろう。

次に会った時、どれぐらい強くなっているのかが楽しみだ。


「ははは。気にしてませんよ。キュレル・モッサさん」


エルフである彼女の名はキュレル・モッサ。

苗字からも分かる通り、フォル・モッサの奥さんだ。

美しいエルフと厳つい野獣の様な大男、それはまさに美女と野獣としか言いようがない組み合わせだった。


彼女達は北の小国からこの英雄国へとやって来ていた。

この夫婦の目的は、神器を手に入れる事にある。


どうも北の大国グルモアが最近怪しい動きをしているらしく。

北の勇者と呼ばれるこの男、フォルモッサはそれに対抗する力を手に入れる為に英雄国へとやって来てた様だ。


ダンジョン攻略中に戦争始まったらどうするつもりだ?

馬鹿じゃねーの?

とか思わなくもないが、それは彼らが判断する事なので勿論口にはしない。


まあきっと怪しい動きはしていても、早々直ぐに開戦する様な事はないのだろう。


「ほれ!カイルも挨拶しろ!」


彼は自分の後ろに隠れている10歳程度の少年の頭を掴んで、俺の前へと置いた。

びっくりする程子供の扱いが雑だ。

少年を見ると、その耳はエルフの血を引いている為とんがっていた。


「初めまして、カイル・モッサです」


「初めましてミテルーだ。宜しくな」


怯えながらも挨拶してくるカイルに、俺は笑顔で返す。

だが彼は直ぐにフォルの後ろに隠れてしまう。


「普段は人見知りなんてしないのに……」


そんな息子の様子に、キュレルさんは戸惑った様な様子を見せる。

まあ答えは至って簡単だ。

恐らくこの子は、俺の力を感じ取って怯えているのだろう。


どうやらこのカイルという少年は直感が相当優れている様だ。

いや、それだけじゃない。

彼の持つ潜在能力は桁違いだった。


こいつ本当に普通の人間か?


スーメリアの事もあって一瞬転生者を疑うが、確認する限りどうやら違う様だった。

正直、現地人でここ迄の潜在能力を持つ者がいる事に驚きを隠せない。


「ははは!初めてのダンジョンで緊張しているんだろう!まあその内慣れるさ!」


フォルは何処までも能天気な感じだ。

子供を連れてダンジョンに行くのは感心しないが、彼もカイルの実力は把握しているのだろう。


「じゃあ行こうか!ダンジョンって奴にな!」


そう言うと、フォルはそのごつい手で俺の背中を叩いてから借り馬車のある場所へと向かう。

キュレルとカイルもそれに続いた。


「さて、今日の探索は何処まで進むかな?」


そんな事を呟きながら、俺は地面に下ろしていた大荷物を背負った。

ひょっとしたらいきなり竜宮制覇も……いや、流石に現段階でそれは無理があるか。

そんな事を考えながら、俺は馬車へと向かう。


「先が楽しみだ」


テリーにミシェイルやレイド。

それに新たに表れた3人以上の大器を持つカイル。

彼らがいずれはパンデモニウムすらも攻略する日がやってくるかもしれない。


そんな妄想に俺は胸を躍らせるのだった。

ここで1章終了となるので、一旦完結します。

続きはある程度ストックが出来てから投降する予定なので、暫くお待ちいただけたら幸いです。

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