第44話 今一
「ほあたぁ!」
掛け声一閃、飛び蹴りをかます。
相手は水で出来た人型の魔物だ。
私の蹴りを受けたその水の体は、爆散して消滅する。
「魔物だよね?」
一応魔物と決めつけて蹴り飛ばしたが、見た目は精霊とかその辺りっぽく見えた。
けどまあ魔物だろう、多分。
攻撃して来たし。
「うわっ!キモっ!」
少し進むと、水中に大きな目玉が浮かび上がって来た。
それを見て思わず声を上げてしまう。
だって超気持ち悪いんだもん。
「とっ!」
その目玉が怪しく光、此方に向かってレーザー?を飛ばしてきた。
私はそれを手で弾いて対処する。
まあ大した攻撃では無いし、弱そうなので、少々気持ち悪いがサクッと――
「げ……」
消し飛ばそう。
と考えたら、次から次へと水中から目玉が浮き上がって来た。
やばい、気持ち悪すぎて背筋がぞわっとする。
「はあ……やめてよね、全く」
キモイ眼玉を一々プチプチ潰すのは気が滅入る。
少々大げさな気もするが、ここは必殺技で纏めて吹き飛ばす事にしよう。
「吹っ飛びなさい!激衝脚!」
足を回し蹴りの要領で旋回させる。
その瞬間衝撃波が放射状に放たれ、足元の水ごと目玉共を豪快に吹き飛ばす。
完全に水の失われた足場に水が戻って来た時にはもう、目玉の姿はなくなっていた。
今の一撃で全滅してくれた様だ。
「可愛い魔物の次に目玉が出て来るとか、嫌な場所ねぇ」
ギャップが酷い。
足元も、膝まで水に浸かって靴の中がびちゃびちゃして気持ち悪いし、最悪の場所だ。
こういう場所はさっさと抜けるに限る。
「ほりゃっ!」
私は大きく跳躍し、真上の天井に足から着地。
そして天井を強く蹴って側面の壁に着地し、更にその壁を蹴って別の壁へと跳躍する。
三角飛びの要領だ。
これなら足元を濡らさずに進む事が出来る。
因みに靴の中は最初の跳躍の時点で水分を飛ばして乾燥させているので、もうべちゃべちゃしてはいない。
そのまま壁を跳躍して進み、さっさと水浸しの建物を私は後にする。
「水の次は炎かぁ」
ゲートをくぐると状況が一変する。
先程迄は水浸しの建物だったが、今度はあちこちから火柱が噴き出している場所だった。
私は周囲をキョロキョロ確認しながら奥へと進む。
こういう炎的な場所には強い敵がいる。
そういうイメージがあるので、少しワクワクして来た。
さて、何が出るかな?
「お!第一魔物発見!竜……じゃなくて蜥蜴かな?」
竜というには蜥蜴感が強い魔物が姿を現した。
ヴィジュアルを説明するなら、人間サイズの炎を纏ったウーパールーパーと言った感じだ。
あれ?
そういやウーパールパーって蛙の仲間だったけか?
ま、なんでもいいや。
「さあ来い!」
取り敢えずどんな攻撃をしてくるのかと思い、指先をクイクイと動かして挑発してみる。
まあ魔物にこの挑発が効くかは微妙かと思ったが、問題なく聞いた様で、ウーパールーパーは大きく口いて炎を吐き出してきた。
「おお、結構殺意高いね」
それ程広範囲には広がらなかったが、高温の炎はかなり高速で迫って来る。
これは中々強力な魔物と見た。
まあ炎を無視して殴り倒すのは簡単なんだけど、それだとつまらないので、炎は喰らったらダメージを受ける体で動くとしよう。
私は迫る炎をギリギリ見切って躱し、トカゲに突っ込んで殴り飛ばす。
いっちょ上がり。
「お、いっぱい来た!」
先に進むと、奥からぞろぞろと魔物が姿を現した。
今度は4匹、全て蜥蜴だ。
私が喜んでいると、魔物達が一斉に口を開き炎を噴き出して来る。
「よし!ここ!」
私は炎と炎の隙間。
狭い安全圏に体を滑り込ませる。
まあ冷静に考えて、この温度だと直撃しなくても普通の人は大火傷を負ってしまいそうだけど、そこまで厳密に考えて動くと面倒くさいので、直接触れなければセーフの方向で行く事にしよう。
「はっ!ふっ!とりゃ!」
炎をやり過ごした私は、手近な魔物から順次攻撃を叩き込んで全て倒す。
ブレスによる反撃が無かったところを見ると、どうやら連発は出来ない様だ。
「うーん。そこそこ強いとは思うけど、やっぱさっきの牛と比べると微妙よね。ひょっとして中ボスか何かだったのかな?」
弱くはないしそこそこ楽しめてはいるが、やはり少し拍子抜け感は否めない。
残念。
ボスキャラのグレートドラゴンに期待するとしよう。




