第37話 セーフ
「どうやら、此方の意図は気づかれているみたいだな」
「情報を引き出したいみたいだけど、無駄だよ。死んでも話す気はないんでね」
長々と引っ張っても仕方がないので、煽ってさっさと答えを確認する事にする。
まあ此方の命まで取る気はなさそうに見えるが、それでも俺の体に攻撃を加えた時点で……PKとして処分させて貰う。
「ミテルー。我々は竜宮を――グレートドラゴンを何としても攻略しなければならない」
レイドの手にした剣が閃き、俺の首筋に触れて止まる。
まあ押し付けているだけだ。
傷はついていないので、ギリギリセーフとしておく。
「俺が死んだら、荷物を持つ奴がいなくなるぜ?」
「その時はゲートを使って帰るだけだ」
ゲート。
それは深淵の洞窟から脱出するために用意された転移装置だった。
一つは迷宮と水の神殿の間にあり、残り二つは竜宮入り口とグレートドラゴンの出現する空間――討伐者のみ利用可能――に設置されている。
「成程」
ここはまだ水の神殿に入ってすぐの場所だ。
引き返すのは容易い。
「ミテルー。俺は本気だ。痛い目を見る前に、素直に話した方が身のためだぞ」
「それは無理な相談だな」
俺は口の端を歪めて不敵に笑う。
「長生きしたくは無いのか?」
「それなら神器が手に入った時点で引退してるよ。売れば一生遊んで暮らせる金になるんだからな。俺はこのポーターって仕事が好きでね。だから、依頼主の情報を売ってまで長生きする気はない」
まあ転生者である俺は基本不老不死なので、嫌でも長生きする事にはなるんだが。
「たかだか荷物運びの矜持に命をかけるというのか。くだらん」
「薄汚い強盗よりはマシだろ。それともお前は、その行動に胸を張って生きてるのか?」
「貴様……」
ぎりっと、噛み締められたレイドの奥歯が軋む。
首筋に押し付けられ剣が、ぐっと一段強く押し付けられた。
「もうやめようよ!」
此処までかな?
そう思った時、突然フィニーが声を上げた。
純粋な彼女には、こういった卑劣な手段が受け入れがたいのだろう。
「こんなのあたし達がする事じゃないよ!」
「フィニーの言う通りですわ、レイド様。確かに情報は欲しいですけれど、私達ならばそんな物に頼らなくともきっとグレートドラゴンを倒せるはずです」
エマもその意見に同調する。
他の面子も口に出しこそしてはいないが、同じ意見の様だ。
表情を見れば一目でわかる。
「くっ……だが我々に失敗は許されない……恐らく今のままでは」
父親であるガンドから、竜宮の主の強さは嫌という程聞かされているのだろう。
そして今の自分達では勝てない。
若しくは勝てても多大な犠牲が出ると、レイドは判断しているのだろう。
まあ大正解だ。
レイドの腕は大したものだとは思うし、配下のヴァルキリー達の能力も相当高い。
だがそれでも、7人という少数で勝つのは厳しと言わざるを得なかった。
ヴァルキリーレベルの人間が後2-3人いれば話は変わって来るのだろうが、恐らく彼らは人員を増やすつもりは無いだろう――まあ仮にあっても、そんな人材は早々転がっていない分だが。
「大丈夫だよ!あたし達強くなるから!ね!皆!」
フィニーの言葉に全員が力強く頷く。
それを見て、レイドは手にした剣を俺の首筋から離した。
「わかったよ、皆……。ミテルー、不快な思いをさせてしまってすまなかった」
レイドは深く腰を折って頭を下げる。
俺はその頭を軽くはたいてやった。
「2度とすんなよ」
「ああ、分かっている。本当に済まなかった」
「ならいいさ」
その後パーティーは水の神殿と火の神殿を抜け、無事竜宮にまで辿り着く。
そこでドラゴンを何体か狩ってから、入り口のゲートを使って帰還した。
「ミテルー!」
仕事が終わり、街に帰った俺は彼らと別れる。
少し歩いた所で、背後からフィニーが駆け寄って来た。
「どうした?」
「あのね!レイドに剣を突き付けられても自分を貫いた時のミテルー、凄く格好良かったよ!」
「ははは、そうか?」
まあ曲げなければいけない様な窮地では無かっただけなのだが、褒められて悪い気はしない。
俺はぽんぽんとフィニーの頭を軽く触る。
「うん!すっごく格好良かったよ!」
急に背伸びをした彼女の唇が、俺の頬に触れる。
「じゃ、またね!」
驚いた俺は、ポカーンと走って行く彼女の小さな背中を見送った。
頭の中にレムの≪残念です≫の一言が響く。
どうやら俺の様子を見ていた様だ。
覗き見なんて悪趣味な真似してんじゃねぇよ、まったく。
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