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超人な僕とデジタルな女神の異世界管理  作者: まんまるぴっぐ
第一章 初めての魔獣討伐
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第4話 「さっそく私も別の神様に投げ出したくなりました」

 大体このくらいのスピードだろうか。

 音速に入るかどうかのスピードで、僕の契約主である女神ビクトリアことビッキーをお姫様抱っこし、地上を超高速で走り抜ける。


 最初の山に近づいてきた辺りでタイミングを計り、三段跳びで地面を蹴る。

 空高く浮かぶ雲すれすれの高さまで飛び上がり、山を軽く飛び越える。


 空か見る景色は、僕が見慣れた都会の風景とは違ってすごく新鮮だ。


「うわあ! 綺麗ですよビッキー!」

「う″ああい……、ぎれええ……」


 でビッキーはというと、グロッキーになってた。


「う、だめ……でる……」

「え? 何がですか? いや待ってビッキー! もうちょっと我慢して――」

「無理」


 はい。




「おええ……」

「大丈夫ですか?」

「うう……泣きたい……」


 揺らさないよう静かに着地して休憩をとることにする。

 背中をさすってあげると、すこし楽になってきたとぎこちない笑顔でお礼を言われた。


「下に誰かいなかったかな……」

「山の頂上付近でしたから、多分大丈夫だと思います……」


 その……、アウトだったとしても女神さまのだから御利益的なものとか……無理がありますね。


「リュックの中に水が入っているので……とってくれませんか?」

「はい。 ええっと……え? なにこれ?」


 丸々としたリュックの口を開けると中は真っ黒で、まるで底の深い井戸をのぞき込んでいるような感じになった。


「ああ、大丈夫ですよ。 水をとることを意識しながら手を突っ込んでください」

「え、あ、こうですか……あ、あった」


 手を入れた瞬間、指先が冷たいものに触れる。

 それを取り出すとペットボトルに入った水が出て来た。


 い〇はすだった。


「ああそれです、ありがとうございます。 ごくごく……ふはー。 私のリュックは入れられるものならいくらでも入る神様使用なんです」


 水に食料、iPad、替えの服にサバイバルキット、なんでもござれ。

 ……まって、このPS4どこで遊ぶ気だったんですか。




「ビッキー、あの山を越えたら魔獣のテリトリーです。 僕一人で行きますので、ここで待っていてください」

「いえ、私も行きます。 魔獣討伐は私の仕事でもあるのです。 一人でなんて行かせられません。 私はこの世界の女神さまなのですから……、なのでもう少しお待ちを、うぷ……」


 ビッキーの回復を待って、さっそくテリトリーに入り込む。

 勢いをつけてジャンプし、山を飛び越える。


 そして、見えてきた景色は、今までの緑豊かな自然とはうって変わり、荒廃としたものだった。

 枯れた木々に荒れた大地、魔獣のテリトリーになるだけでここまで荒れ放題になるのか。


「勇気君!!」

「あ!」


 僕を呼ぶのが速いか、僕が声を上げるのが速いか。

 気づいたときには、巨大な岩塊がこっちに向かって飛んできていた。


 直径100メートル前後、デカすぎる。


「せいっ!!」


 足を振り上げ、その岩塊を蹴り砕く。

 粉々に砕けた岩が後ろの山へと降り注ぎ、その形を削っていく。


 あんなものを投げるなんて……!

 もうすでに魔獣には気づかれているという事か。


 すぐに着地してビッキーを降ろし、飛んできた方向を見る。

 直後、腹の底に響く咆哮と同時に何かが飛び上がる。


「ビッキーは下がっててください!」

「大丈夫なんですかあれ!?」

「分かりま……せんっ!!!!」


 落下してくる何かに、いやここまで来たら間違いなく魔獣だ。

 落下してくる魔獣に合わせ、拳のストレートをぶつける。


「ごがあああああああああああああっ!!」


 響く咆哮。

 魔獣の拳と僕の拳がぶつかり、叩きつけられる衝撃波がお互いを吹き飛ばそうとする。

 大気を吹き飛ばすほどの衝撃の中で見たのは、巨大な魔獣だった。


 大きさは十メートルを超え、その頭には巨大な角が2本も突き出し、ダークグリーンの肌は山のような筋肉で鎧のように覆われている。


 巨大な鬼だ。

 地面を抉るような衝撃波の中で、人の頭よりも大きい目がこっちを睨みつけていた。


「がああああっ!!」


 魔獣の左手が唸りを上げて僕を弾き飛ばす。

 死にはしない攻撃だが、凄まじい力で吹っ飛ばされ、山を貫いてなお飛んでいく。


「く、やったな……!!」


 腹に力を入れて急制動をかける。

 空に浮かび、崩れ落ちてV字に割れた山の間から魔獣を睨む。

 あそこだな……。


 最初から全速力。

 亜光速で……、突っ込む!!


 ソニックブームを置き去りにし、速さと体の硬さを使って体当たりをする。

 魔獣の腹へと膨大な運動エネルギーを叩き込み、吹き飛ばす。


「ぐおおおおおおっ!?!?」


 あの巨体が弾かれたように吹っ飛び、山影を小さくしていく。


「あ、そうだ、ビッキーは……」


 衝突したエネルギーが周囲を吹き飛ばしていくところを見て、ビッキーがいることを思い出した。

 しまった、無事だろうか……。


「はーい、大丈夫ですよー」

「え!? どこにいるんですか!?」


 耳に直接ビッキーの声が聞こえてきた。

 もちろん近くにビッキーはいない。


 どうなってるの?


「まあ、こんなことになるかなあと思って、管理者権限でセーフティモードを起動しました。 今私は異層空間という、極めて近く限りなく遠い異次元空間に避難しています。 なのでこちらからは手出しはできませんが、そちらからの影響も一切受けないという事なので、頑張ってください!」

「頑張ってくださいって、ビッキーは戦えないんですか?」

「無理ですね。 あのパンチを見てわかりました。 無理ゲーです。 さっそく私も別の神様に投げ出したくなりました」

「諦めるのが早いですよ!!」

「あんなのと戦えてる勇気君がおかしいんです! しかも空だって飛べちゃうし!! だったら走ることなかったのに!」

「飛んだら目立つからです……くっ!」


 魔獣が咆哮を轟かせながら突っ込んできた。

 新幹線も真っ青のスピードで突っ込んでくるのを真正面から受け止める。


「く……このおおおおっ!!」

「ごがあああああああっ!!」

「ぐうっ!?」


 巨体からくる凄まじい力で地面に無理やり押さえつけられる。

 なんてパワーだ……。


「く……ならっ!!」


 魔獣の腹を見据え、深呼吸をする。

 体の中にあるエネルギーに意識を集中し、目からビームのように放出する。

 そのエネルギーの奔流は魔獣の巨体を押し返し、向こうの山、数キロ先まで押し返す。


「ふん……!!」


 さらに力を入れる。

 山肌を砕き、その向こうまで押し崩す。

 崩れ落ちる山だった塊が、エネルギーの奔流に触れて蒸発していく。


 山が真っ二つになったところで、エネルギーの放出を止める。


「ふう……、魔獣はどうなった?」


 どこまで飛んだかわからない。

 上空へ飛び、目を凝らして射線上を見てく。


 いた!


「ぐが……」


 まだ、生きてるのか……。

 何て頑丈なんだ……。


 いや、でも、魔獣の腹に傷ができている。

 僅かにだけど、血も流していた。


 よし、エネルギー攻撃は有効打になる!


「な、なんですかそれはーー!?」

「うわあ!? び、ビッキー! いきなり叫ばないでください!」

「目からビームが出せるなんて聞いてませんよ!?」

「この力をくれたのがビッキーですよ!?」


 とりあえず、エネルギーが聞くことは分かった。

 ここで一度引き返そう。

 クエストを受けて、正式に討伐して報酬をもらわなければ。


「勇気君あぶない!」

「え!?」


 直後、魔獣が飛んできて僕につかみかかろうとする。

 それをもう一度エネルギー照射で撃ち落とそうとするが……。


「がああっ!!」

「避けた!?」


 当たる直前でその奔流をかわす魔獣。

 あの巨体でなんて身軽さなんだ!?


 接近を許した魔獣は僕をつかみ、山へ向かって投げ飛ばす。

 山の頂上を木っ端みじんに吹き飛ばして吹っ飛んでいく。


「勇気君!! 大丈夫ですか!!」

「大丈夫です! このまま魔獣のテリトリーから離脱します!! ビッキーは!?」

「私は異層空間から直接勇気君の元へワープします! だからそのまま町まで逃げてください!」


 吹き飛びながら魔獣の方を見る。

 ただこっちを見ているだけで追ってはこないようだ。

 テリトリーから出るつもりはないらしい。


 しかし、困ったぞ。

 エネルギー攻撃は有効だと分かったけど、それは魔獣の方も理解したらしい。

 あの巨体で素早くかわしてくるなんて。


 2度目はないぞって、こっちを見ている魔獣がそう言っているように感じた。


 何とかして倒す方法を考えないと。

 どうやら、クエストを受けなおしたら取って返すなんて出来なさそうだ。


「よっ!」


 態勢を立て直して、そのまま城塞都市ノーデンまで飛んでいく。

 ビッキーが現れたのは、人目に付きにくい街の近くの森に着地した直後だった。


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