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超人な僕とデジタルな女神の異世界管理  作者: まんまるぴっぐ
第一章 初めての魔獣討伐
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第2話 「申し訳ありませんがお願いいたします」

「うっ……ここは?」


 女神さまの手を取ったあと、眩しい光に目を閉じたら、体中に風を感じて目を開けた。

 目の前に広がる草原のど真ん中に、いつの間にか女神さまと並んで立っていた。


「もう異世界に着いたんですか?」

「はい。 それではようこそ、異世界ステリアへ!」

「ステリア……」


 風を感じながら周りを見渡すと草原の向こうに街が見える。

 お城も立っていた。


「結構大きい街がありますね」

「城塞都市ノーデンです。 まずはあそこに向かいましょう」


 というわけで、まずはあのノーデンという街を目指して歩いていたんだけど、後ろから何か追いかけてきたようだ。


「息を吐く音?」

「はい?」

「後ろからだ」


 振り向いたら、4匹の狼がこっちに向かって走ってきていた。

 ……え? 狼? いや違う、だって狼は背中にでっかい刃みたいなものは生えていない。


「え~……、あの距離の呼吸が聞こえたんですか? すごい聴覚ですね」


 普通は確かに驚くかもしれない。

 刃の生えた狼はここからまだ数百メートルほど先にいるのだ。


「あれ何なんですか?」

「え~っと……あれ何だったかな~……」


 女神さまがiPadで検索を始めた。

 魔物図鑑。

 覗いた画面にはそう書いてあった。


「ありましたありました。 セイバーウルフですね。 背中に逆向きに付いた、背ビレのような刃で相手を切りつけて狩りをするみたいです」

「そのセイバーウルフですけど、狙いは僕たちなんじゃ……」

「ああ~……、縄張りに入っちゃったんだとおもいます」


 セイバーウルフは見つけた獲物を逃がすまいと全速力で走ってくる。

 もうそろそろ逃げた方がいいな。

 今はまだ、下手に戦うのはやめておこう。


「すごいですよ!? 見てください! あの狼100mを5秒フラットで走るみたいです!」


 子供みたいにはしゃがないでください。

 てことはあと20秒もないじゃないですか。


「すみません女神様。 街に向かって走るのでつかまってください」

「え? ひゃあっ!?」


 一応断ってから女神さまをお姫様抱っこする。


「行きますよ」

「わ、分かりましたけど、さすがにはずかあああああ――――っ!?!?」


 女神さまが首に手を回したの見て、僕は地面蹴って走り出した。

 足の力加減を意識して、地面を踏み砕かないように地面を蹴る。


 狼たちの姿が一瞬で豆粒のように小さくなっていき、ものの数秒で城壁近くに到着した。


「到着……と、あそこからここまでだいたい3~4キロってところかな」

「うう……もうちょっとお手柔らかに……」

「ああすみません! 大丈夫ですか!?」


 ふらふらとしている女神さまを支え上げた。

 逃げるためとはいえ、流石にとばしすぎた。


「大丈夫ですよ……、神様の体は頑丈なので……。 それにしても、とてつもなく速いですね」

「速さなら亜光速までいけますよ。 でも普段は音速を越えないよう自重しているんです」

「次運ぶときは音速手前でお願いします……」


 立派な城壁を見上げながら城門を潜り、城塞都市ノーデンへと入る。

 遠くから見ても結構な大きさだったけど、近くに来るとすごい迫力だ。


 それにしても、人類存亡の危機という割には、往来する人たちは結構生き生きとしている。

 魔獣に絶滅させられそうな雰囲気じゃないね。


「ノルニルの予測データでは、あと数百年、早くとも140年で滅んでしまうとあります。 今生きている人たちからすると、まだまだ遥か未来の話です」


 iPadを見ながらその予測データを開く女神様。

 グラフでは予想人口が右肩下がりだ。


「あ、エクセル」

「表計算検定3級です」


 3級なんて言われるとドヤ顔するレベルなのかどうか分かりませんけど、なんでとってるんですか。

 いやそんなことより。


 僕たちは魔獣を倒しに来たのだから、その情報を集めよう。


「まずは情報集めですけど、神様は知らないんですか? 魔獣の情報」

「それが……、この世界の情報にアクセスして、検索してはいるんですけど、どういうわけか出てこないんですよね……」


 iPadを操作しながら目を凝らしているが、その画面には魔獣のまの字も出てこない。


「仕方ないですね、じゃあこの辺りで魔獣について知ることができそうな場所ってどこですか?」

「あ、それならギルドですね。 冒険者たちがクエストを斡旋してもらう場所です」

「冒険者か……、うん、行ってみましょう!」


 と、言うところで、僕たちは周りからじろじろと見られていたことに気づいた。


「ああ……そういえば、僕たちの服装ですかね?」

「多分そうですね。 この世界観にはあってないですし、悪目立ちもあまりよくありません。 ちょっとこちらへ」


 手を引いて連れていかれたのは人の目のつかない路地裏のような場所。


「それでは服装を変更しますね」

「そんなことできるんですか?」

「もちろん。 どれがいいですか? この世界でのおすすめコーデを検索したらいろいろ出てきましたよ?」


 なんだかちょっと楽しそうですね女神さま。

 しかし、見せてもらっても映っているのは装飾のないシンプルなものばかり。

 染色はされているので色はたくさんある。


 服としての機能を求めた質素なものが主流か。

 対して僕の服装は……、赤のジャージ。


 仕方なかったんだ。 超人になって活動し始めると、動きやすい服がいるでしょう?

 学校指定のジャージが一番理想だったんだ。 しかも学年ごとに色分けされてて、僕の学年は赤。

 だから赤のジャージ……。


 ジャージのヒーロー……。

 悪くないと思うけど……。


「どれがいいですか? ……勇気君?」

「あ、すみません。 じゃあ……これで」


 一番無難そうなブラウンを基調とした服を選んだ。


「地味ですね」

「いいんです」

「まあいいでしょう、おしゃれはおいおいという事で。 私はこれにして……、それでは、管理者権限! 服装変更!」


 女神さまが天を指さして叫ぶと、一瞬で僕の服装がこの世界のものに変わった。

 あ、女神様のも変わってる。

 フリルが付いていてかわいらしい。 でも、ちょっとういているような……。


「この世界の服装からすると、フリルは攻めすぎたでしょうか……」

「いいんじゃないですか? 僕は可愛いと思いますよ」

「えへへ、ありがとうございます」


「いいねいいね! 俺らもそう思うよ!」


「え?」


 不意に知らない人が声をかけて来た。

 いや、それだけじゃない。 いつの間にか囲まれていた。


 にやにやして悪そうな顔……。

 嫌な予感しかしない。


「よう君たちい、こんなところでいちゃついてたら、悪いおじさんに攫われちゃうぜ?」

「そうそう俺らみたいなのにさ!」


 やっぱり……。

 多分女神さま目当ての不良かな? なんて罰当たりな。


「どうします女神さま?」

「ええーっと……」

「へええ、女神さま! 確かに女神みたいにかわいい面してるよな」


 男が一人、女神様を引き寄せて首にナイフを当てる。


「あんまり下手のことしない方がいいぜ? 仲良く奴隷商に売られた方がいいだろう?」


 奴隷にはなりたくないな……。


「女神さま?」

「すみません、まだ直接な害を受けたわけではないので、原住民への攻撃特権を行使できません。 ですので、申し訳ありませんがお願いいたします」


 捕まっている女神さまが申し訳なさそうにお願いする。

 やれやれといった感じで、人質になっているような雰囲気ではなかった。


 まあ、あの感じなら大丈夫でしょう。 

 女神さまだし。


「おいおい、かっこつけてヒーロー気取りは痛い目見ちゃうぜ? ぎゃははは はばあああっ!?」


 笑っている所へ腹に一撃。

 後ろの突き当りまで飛んで行ってまず一人。


 呆然としている後ろにいた二人をつかんで屋根まで放り投げてこれで三人。

 全部で五人いるのか。 じゃああと二人。


「へ? は? なん、なんだよそれ……」

「気取りじゃなくて、ヒーローだったんですよ。 死ぬ前は」

「こ、このおお!」


 四人目が鉄棒を振り上げて襲い掛かってくる。

 特に防いだりはしない。


「おらあっ!! へへ……は、はあ?」


 棒の方が曲がった。


「この! このっ!!」


 何度も何度も鉄棒を頭に叩きつけられるが、そのたびに鉄棒の方が区の字に曲がっていく。

 でも流石に、何度も殴られるのはいい気はしない。


 鉄棒を受け止めて奪い取り、二つ折りに。

 そしてぞうきんを絞るように捩じる。


「は、ははは……うそだろ……?」


 鉄パイプのオブジェクト完成。

 それを見て四人目は一目散に逃げだしたので放っておこう。


「残りはあなただけですね」

「う、動くな!」

「それは無理です」


 五メートルくらいなら、瞬きで目が閉じるまでに、簡単にその距離を詰められる。


「いっ!? いつの間に!? う、動かねえ!?」


 震えるナイフをつまんで、女神さまに当たらないようにする。

 神様とは言え見た目は女の子なのだから、体に傷を付けるのはダメだ。


「あの人みたいに壁に張り付いてお昼寝するのと、空に短時間旅行するのと、どっちがいいですか?」

「いや……、それは……!?」

「お帰りはあちらです」


 四人目が逃げていった方へ指をさすと、最後の一人もすたこらと逃げていった。


「大丈夫でしたか?」

「はい、お手数をおかけしました。 神様は世界に降りると、能力が制限されてしまうので……」


 好き勝手に暴れないようリミッターがかけられるのだとか。

 そんなことしたやつがいるんだろうな……。


「私の先輩です……」

「あのギャルノリの人か!?」


 いったい何をしたんだと思いながら、最初の目的通りギルドへと向かった。



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