気分は町の一員
「それでこんな感じでどうだい?あんちゃんくらいだとこれくらいが丁度いいんじゃないか?」
まさにファンタジー世界の村人といった服装になった僕は服屋に金を渡し、服屋を去った。服自体は大銅貨数枚で済むようだったので、手持ちにはとりあえず銀貨4枚と銅貨が何枚か残った。
さて、服装を変えたからにはやらねばいけないことがある。そう、<身は体を現す>である。異世界の服装になったということは、外見もガラっと変わったことになる。これによって現れるプラスアルファのスキルに全てをかけるしかない。
頼む!!<身は体を現す>発動!!
……。
スキル
<身は体を現す>
<町民の心得>
・アルフリード王国はマクバス町の全町民の知識のうち共通する事項についてを理解、把握することが出来る。
<群衆の一人>
・記憶に残りにくくなる。マクバス町に限り、町民が親身に接してくれやすくなる。
予想通り増えているな。やっぱりこのスキル、見た目の服装に強く影響されるみたいだ。町民の服であれば町民になれるのなら、騎士の服装や貴族の服装何か着れればどうなるんだろう、と思いに耽けっていると。
「兄ちゃんどうしたんだい、そんなとこで突っ立って。」
後ろからこの町の住人だろう男が気さくに話しかけてきた。
「いえ、職がないのでどうしようかと考えていて…。」
「職がないってんなら冒険者ギルドにでも行ったらどうだ?」
「冒険者ギルドですか…。」
「おう、なんなら道教えるか?」
「いえ、大丈夫です。ありがとうございます。」
「おう、頑張れよ!」
男が見送るなら僕は冒険者ギルドへと向かった。群衆の一人というスキル、これは破格かもしれない。さっきの男の人、全然知らない人だもの。それに町民の心得のおかげでギルドへの道も、ギルドの内容も全て分かる。これは割とチートスキルを手に入れたのかもしれないな…。
しばらくの課題は攻撃スキルを持っていそうな服を手に入れることだ。そうしないといくらギルドに行ったところで戦うことなんてできない。
そうこうしているうちに僕はギルドの前に立っていた。
ギルドはよくゲームや漫画で描かれているような木造の建物ではなく、どちらかといえば近代に近いコンクリートのようなものでできていた。一番見た目に近いものといえばマンションだろう。入口の上にデカデカと「マクバスギルド」と記されている。
意を決してギルドに足を踏み入れるとそこは…。
「はいよー、いらっしゃい。」
気だるげな女性一人だけがポツンと受付に立っていた。