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小さな決意

 登録するにもお金がいる。とりあえずお金が無さすぎる。今手持ちには銅貨数枚。とりあえずダンジョンで路銀を稼ぐしかない。


 商業ギルドをでると外は既に薄暗くなっていた。


「今日どうしよう…。」


 泊まる場所がないことにたった今気付いたのだ。

 近くにいた気の良さそうなおじいさんに話しかける。


「すいません、このあたりで一番安い宿ってどこかありますか?」


「このあたりかい?予算はいくらくらいかね?」


「銅貨が数枚ってとこですね…。」


「それならそこを曲がると素泊まりのところがある。名前は鷲の羽根休め、かなりボロいが、安さはそこが一番だ。」


「ありがとうございます!」





「ここかな…?」


 かなり年代を感じる建物だ。看板に鷲の…までは書いてあるがそこから先は掠れて読めない。


 中にはいると、予想通りの感じであった。床はきしみ、柱は老朽化でボロボロ、受付には恰幅の良い女性が煙草を吸いながらふてくされた顔で新聞を読んでいた。


「銅貨一枚だよ。」


「あっ、はい。」


「それじゃ上の一番奥の部屋ね。」


 鍵を渡すと、女性はまた新聞を読み始めた。




 部屋は割りと小綺麗なベッドがあるだけで、他にはなにもなかった。とりあえず横になる。


「今日だけで色々ありすぎる…。」


 召喚され追い出され流れるように冒険者になって生き物を殺した。


「でもこれは夢じゃないんだよな…。」


 居心地の悪いベッドが今が現実であることを僕に示していた。


 とにかく僕は生きていかなければならない。この世界を。


 チートがあるわけじゃない。最強になれるわけでも、億万長者になれるわけでも。この世界でも僕は前と同じように、波風たてず平凡に生きていたい。あわよくば帰りたい。


「……よし、決めた。」


 第一目標、地球に帰る。第二目標、この世界で生きる。


「明日から頑張ろ…。」


 意気込んだまま僕の意識はゆっくりと闇に消えていった。


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