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予測

「おぉ、怪我なく帰ってこれたようだな。」


 マジックバックを貸してくれた門兵の初老の男性が声をかける。


「何とかやれました。」


 笑いながら返答する。


「いやいや、初めてダンジョンに行く者ほど調子に乗りやすくてな、大体が大怪我をして帰ってくるのだよ。」


「なるほど。」


「君みたいな子が多ければ安心なんだけどね……。」


「ははは…。ところでマジックバックですが、お返ししますね。」


「いやいいさ、君が持っていなさい。」


「いやしかし…。」


「その程度の容量のマジックバックならここの給金だけで数十個も買えるさ、それに若き冒険者には唾をつけておかないとね。」


 コロコロと男性は笑った。


「ありがとうございます!…そういえばお名前をお聞きしていませんでした。」


「そうだな!私はモーラだ。よろしく頼むよ。」


「僕はツカサといいます、この恩は必ず返します!」


「なに、出世払いでいいさ。」


 僕はダンジョンを後にした。



     △



「魔水晶が2つね、銅貨5枚だよ。」


 受付の女性にダンジョンで得た水晶を換金してもらう。やはりゴブリン等の低層で得たものは安いようだ。


「あの、少し聞きたいんですがいいですか?」


「?構わないよ、どうせ後数日は暇だしね。」


 後数日もすればダンジョンの中層に潜っている冒険者達が帰ってくる。そうするとこの閑散としたギルドも僕のような異世界かぶれが想像する活気ある状態になるのだ。


「僕のジョブが道化師なので大道芸とかやりたいんですけど、外とかでやる場合どこに許可をもらえば良いんですか?」


「あぁ、そういえばアンタ道化師だったか。なら商業専門のギルドに行くといい。」


「商業ギルドですか。」


「あぁ。あそこは金勘定が絡むだいたいの管理をしてるからね。そこで登録して話を聞けば大体なんとかなるさ。」


「なるほど、ありがとうございます!」


「やるんなら日にちとか教えてね?暇だったら見に行くよ。」


「はい!ありがとうございます!」


 なるほど、商業ギルドか。町民の心得がないから知識が完全に抜けていたな。

 ブラックウルフの防具を脱ぎ村人の服装に戻り、スキルを発動する。



 商業ギルド。先ほどの受付の女性が言った通り商業に関わるほぼ全てを取り仕切っている。


 町民の心得で何となくはわかる。コレ、まさに異世界小説のまんまだ。ほんとなら塩やら胡椒を持っていって「え?こんなのいくらでもあるんだが?」ってやりたいところだが、それはファンタジーを舐めすぎている。


 この世界、物質をコピーするスキルが存在するのだ。

 当然貴重な人材ではあるが、数万人に1人の割合。希少ではあるがいないわけではないのだ。

 だから小説のようなチートはほとんど通用しない。


 でもごく僅かにそのチートが通用することがある。

 それが僕らのような異世界転移者だ。僕ら異世界転移者はガチャガチャでスキルを獲得する。


 ここでスキルについての常識を話しておこう。この世界におけるスキルというものは、受け継がれてきたもの。つまり、遺伝によって発現するものだ。

 剣術スキルをもつ両親からは同じ剣術スキルを持った子供が。魔術なら魔術が。

 時折親のスキルとはかけはなれた力を持った子供が産まれるが、それこそ天文学的数字だ。

 つまり、この世界でスキルは基本的に増えることはない。


 故に定期的に別世界から人を呼び、そのスキルの血を得ているんだろう。別世界からの勇者については町民の心得ではわからなかった。つまり勇者とは一般的に知られるものではないのだろう。


 そもそも、魔王という存在についても眉唾物だった。魔王への対抗策がない、緊迫しているという割に市民は平然としているし、そもそも街にいる兵士達に緊張感が全くない。


 だから新しいスキルを獲得し、権力を強めるために僕らを呼んだのだろう。確定はできないが多分あってはいると思う。だからスキルなしの僕を追い出したのだろう。

 だとすれば今回は大当たりだったんじゃないか?剣聖の極意に全属性魔法??ぶっ壊れか???


 そうこう考えているうちにいつの間にか商業ギルドの前にたっていた。

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