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親切にしてくれて

 ダンジョン。スキルによって得た情報によると地下へと続く大きな空間のようだ。階層構造になっており、中には魔物が生息している。下へ行くほど強力な魔物がいるそうだ。


 これだけ聞くとただの危険な場所なのだが、やはりダンジョン。宝物も存在するらしい。オリハルコンの剣や世界樹の杖、他に金銀財宝といった物が大量に入った宝箱がダンジョンの各地に隠されているらしい。

 さらに、ダンジョン内に生息する魔物は死ぬと死骸が消滅し宝箱が現れるらしい。その中に魔物の毛皮や牙なんかが入っている。なんとも便利なシステムだ。


 年間で多数の死者が出ているが、それでも人の欲望は尽きないものらしい。

 さっきいったギルドが何故あんなに空いていたかと言うと、この期間はちょうど冒険者達がダンジョンに出払っているためらしい。だいたいの人がダンジョンに入り、1週間ほど滞在して帰るそうだ。


 とにかく今の目標はとにかく金を稼ぐ。そして色んなものを見て周りたい。せっかくの異世界なのだから楽しまなければ。


「はい、ギルド印みせてね。……。はいOK、見ない顔だね、新人さんかい?」


「えぇ、今日が初ダンジョンです。」


「そうか、防具も…。持ってきてるね。じゃあそこで着替えなさいよ。あと武器防具をそのまま持ち歩く人はいないぞ?」


 ダンジョン前の門にて初老の男性に注意を受けた。確かにここまで来るのにかなり奇異の視線で見られていたが。


「初心者ならこれを貸してあげよう。マジックバックだよ。…まぁ貸すというか、君はいい子そうだからね。」


「ありがとうございます。」


「なに、あんまり容量のないマジックバックだが、それくらいなら入るだろう。そんなに長居はしないだろ?」


「えぇ、1階を軽く見て雰囲気をつかもうと思ってまして。」


「そうかそうか。なら結構。」


 僕はさっき買ったブラックウルフの防具に着替える。やはり群衆の一人というスキル、なかなかに凄いかもしれない。ずっと会う人会う人が親切だ。記憶に残りにくくなるのがデメリットだけど、まぁ何とかなるだろう。僕の顔自体、あんまり記憶に残りにくいし。


 身につけたブラックウルフの防具はなかなか軽く、しかし防具と合って身に纏った時の安心感は格別だった。


「まぁまぁ見れたもんだね。様になってるよ。」


「ありがとうございます。」


「それじゃあ、頑張れよ。」


 僕はダンジョンへと足を踏み入れた。

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