プロローグ
誰にだって、最強の力を手に入れ無双する夢を見たことがあるはずだ。授業中に突如現れるテロリスト集団相手にCQCで応戦したり、ゲームの世界でLv100の勇者になったり。
そんな夢を妄想して、人は大人になっていくもんだ。
……まぁ、これは僕がそうだったと言うだけの話。誰もがそういう子供みたいな妄想しているとは限らない。
でもいつか僕も異世界に転移されたらなぁ……。
そう思いながら漫画を読んでいるこの男の名は加賀美 司。加賀美 司現在高校2年生である。彼は所謂テンプレート的な属性を何一つ持ち合わせていない普通の高校生である。虐められてもいない、美人な幼馴染も、気にかけてくれるマドンナも、親友と呼べるレベルの友達も、いない。普通の高校生である。
「仮に転移したとしても多分モブAなんだよなぁ…。」
短めの髪をかきながら唸る彼は、自分が特徴のあまりない人間である、ということに少しながらのコンプレックスを抱いていた。陽キャラでも、陰キャラでもない、中庸。頭脳も運動も特筆して秀でている訳では無い。
だからこそ彼は異世界転生、転移にハマっていったわけである。
現状に不満がある訳では無い。しかし満足している訳でもない。彼にとって異世界とは第二の故郷となりつつある。
「にしても転移したり転生したりするのヨーロッパ多すぎじゃないか?そろそろ未来都市とかもうちょい捻ったのがきてもいいような気もするんだけど…。ま、今のこの感じが丁度いいんだけどね。」
そんな独り言を呟きながら、寝転がる。
「主人公になりてぇなぁ…。」
しみじみと願いを口に出した瞬間、彼の周りがホワイトアウトした。
「えっ」
彼がいたその場所には、先程読んでいた漫画本だけが残されていた。