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1分程度で読める、掌編小説集です。「こちら」から、他の掌編小説を読みにいけます。

復讐心 ※微残虐注意

作者: 高森
掲載日:2019/04/20

この村には食料が無い。

毎年多くの餓死者が報告されていた。

けれどそれももう終わる。

ここはすでに、村と呼べるほど人が住んでいない。

僕と、お母さんと、たまたま流れ着いた旅人しか残っていない。

他の村人は全員、息絶えてしまった。


死ぬのは怖いか、小僧。


旅人は僕に問いかけた。


分からない。


僕は素直にそう答えた。


生きたいか?


旅人はまた問いかけた。


分からない。


僕はまた、同じことを言った。


なら俺が命令してやる。生きろ。


あなたにそんなことを言われる筋合いは無い。

僕はそう思ったまではいいが、声に出せるほど身体に力が残っていなかった。


生きていたって苦しいだけかもしれないが、死んじまったらそれまでだ。

だから俺が、お前に生きる理由を与えてやる。


旅人は僕の返事も待たずに、腰からサバイバルナイフを抜いて握り込んだ。


何をするんだ、やめろ、やめろ!


僕は限界を超えて声を出す。ボロボロな身体に、大きな声が響いて痛かった。

旅人はそんな僕に構うことなくサバイバルナイフを振りかざし、お母さんの胸元にザクリと深く突き刺した。


あぁ、あぁぁぁぁ。


掠れるような声を出すしか出来ない。

お母さんは何の抵抗もすることなく、簡単に殺されてしまった。


俺が憎いだろう。その気持ちを忘れるな。復讐したいと思うなら、生き延びて俺を殺しに来い。


そう言って旅人は、村を出ていった。


泣いても声が出ない。声を出すだけの力が残っていない。

泣いても涙が出ない。それだけ身体に水分が残っていなかった。


僕は悲しさと怒りに捕らわれ、どうすれば良いのか分からなかった。


そんな時、お母さんの胸元から血が滴っているのが目に入った。

この時にはもう、僕は人間ではなかったのかもしれない。


お母さんからサバイバルナイフを抜く。すると出血量が増した。そして僕は……、その血をすすり飲んだ。


血を飲み、サバイバルナイフでお母さんを切り刻み、その肉を食べる。

その様は、まさしく獣だった。


久方ぶりの食事に満足した僕は、切り取った太股ふとももとサバイバルナイフを手で握った。


許せない、許せない、許せない。


その一言だけを繰り返しながら、男が待つ地に向けて歩き出した。

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