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嘘つき選手権開催

作者: 白黒 赤

  「えー、では改めまして、嘘つき選手権を開催したいと思います!」


  マイクの音が体育館全体に響き渡る。


  そう。4月1日に開催される嘘つき選手権が今ここに開かれようとしていた。


  私は、この日の為に幾度となく嘘をついてきた。父が行方不明だの、母が1億円貰っただの、自身のお腹が痛く下痢だという事など。それも今日で終わりだ。


  当日に嘘をつくなんて素人のやることだ。プロは下準備を怠らない。その為に何をするのか。至って簡単な話だ。”事前に嘘をつく“のさ。それは何故か。嘘が本当に聞こえるからだ。


  その日だけ嘘をつく人間は、話し方や挙動で丸わかりだが、その前から嘘をついていたらどうだ?そう。嘘か本当かわからなくなるのさ。


  「今回の大会は、前回同様にポイント制となります。この壇上に上がって頂き、嘘もしくは本当の事を話してください。詳細なルールがわからない方は別室にて説明させて頂きますので、こちらへどうぞ。」


  前回同様のルールか。そんな別室行きのルーキーとは俺は違う。ルールは至って簡単だ。


  1.発言側は、嘘か本当のどちらかの話を5分以内でスピーチする。1人騙せる毎に3点加点。


  2.聞き手側は、その発言が嘘か本当のどちらかを選び手元にあるボタンを押す。1人当てる事で1点加点。


  今大会の選手は、12名。発言で11人騙して33点。聞き手側で11人の嘘や本当を見極めて11点。計44点が最大得点だ。優勝者には、嘘つき名人の称号が1年間与えられる。


  前年度惜しくも2位だったが、今年こそは名人を頂くつもりだ。緊張から手に汗をかいてしまった。


  高得点を取るには、如何に嘘を見抜けるかでは無く如何に嘘と気づかせないかが鍵となる。本来であれば、44点満点を目指すべきだがこれは素人の考えだ。圧倒的素人だ。二兎を追う者は一兎をも得ず。確実に高得点が稼げる”発言”で33点を優先的に目指す。


  無論、聞き手側の11点を捨てたというわけではない。これは作戦である。


  発言者11人に対して、事前に調査をしてリサーチし過去の情報を取り込むにはかなりの時間と労力がかかる。


  前年度は、そちらに時間をかけてしまったが為の2位でもあった。


  しかし。しかしだ!!


  今年は違う。あらかじめに嘘を積み重ね発言したことにより、相手は私の術中にはまっている事だろう。


  嘘が本当に聞こえてしまう術中にな!!笑いが止まらん。


  且つ、ここ10年分の選手権優勝者のポイントは平均24点だ。33点取ればお釣りがきてしまうな。


  おっと、私に発言の順番がきたか。では、優勝を頂くとするかな。


  「どうも。では私に起きたこの頃の出来事でも話させて頂きます。ぷっ」


  あまりに簡単に騙せそうで思わず笑ってしまいそうになったわ。あぶない。あぶない。


  「実を言いますと、現在父が行方不明になっております。母が1億円を人から貰ったので、経済的には問題は無いのですが。。後、俺は今下痢気味でちょっとお腹を壊しているんですよ。これが私の近況です。短いですが以上です。」


  勝った!壇上からでもわかる。皆んな”本当”を押している。間違いない。これで優勝だ!


  全ての発言者の発言が終わり、数時間の休憩が与えられ、再度体育館に集まった。


  結果の時がきたのだ。


  「えーー、事実調査に時間がかかり申し訳ありませんでした。では、結果を発表したいと思います。」


  さぁ、俺の名前を言え。そのマイクで誰もが聞こえる音量でだ!


  「今年度優勝者は得点36点と大会でも異例の点数が出ました。」


  あれだけ、嘘をばらまいたからな。。

  あれ。。なんだか腹が痛くなってきたな。


  「今大会の優勝者は、前年度優勝者が今年度も防衛しました”嘘付太郎君”です。」


  なんだとーー!!俺は、全員が”本当”を押したのをきっちり見たぞ。それだけで33点は確実なはず。まさか、聞き手側で点数が取れなかったのか?いや、そんな訳があるまい。


  「俺の点数は何点なんだ!36点は超えてると思うのだが、ハッキリと教えてくれないか。」


  「後で全員の点数は伝える予定でしたが、まぁいいでしょう。ビリの11点ですね。」


  「待て待て!11点な訳がないだろ!俺は、嘘をついた。その時に壇上から全員が本当のボタンを押しているのを見たぞ!」


  「えぇ。確かに聞き手の皆さんは本当を押しました。しかしながら、あなたの発言が本当の事ですので。。」


  何を言っているんだこいつは。意味がわからん。本当だと?行方不明。1億円。下痢がか?ん?腹がさっきより痛くなってきている。


  「はぁー、もう優勝者の僕が教えてあげるよ。このカラクリについてね。」


  嘘付太郎がこちらに哀れみの目を向けて声を発してきた。


  「君のお父さんには、バカンスに行ってもらったよ。誰も場所は知らない。母親には1億円プレゼントした。そして、先程の休憩中に君には下剤をプレゼントしたってわけだ。」


  こ、、、こいつ、、、力技できやがった。

 

  「俺の負けだ。嘘付太郎。完敗だよ。トイレに行きたいんだが、いいかな。」


  「あぁ。行ってくるがいいさ。ついでに涙も便器に流すといいよ。」


  くそぉー!来年こそは1億円を使って嘘付き名人の称号を手に入れてやる。


  来年には、嘘付太郎も嘘つきたろ。なんてな。



 

最後に親父ギャグで何か申し訳ありませんでした。

誤字指摘ありがとうございます。助かりました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 「嘘つき名人」の称号って、そこまで仕込みを入れたり、大金ばら撒いてまで欲しい名誉なのか、ってところに、まず笑っちゃいましたよ。
2019/05/02 14:19 退会済み
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