#8 先輩の話を聞いてみる その2
#8 先輩の話を聞いてみる その2
アラミスさんが持ってきてくれたスペシャルメニューは絶品だった。
上品な料理ではないのだが、何だろう素材の味を殺さずかといって淡白ではない。
と柄にもなく料理批評をしてしまうぐらい、美味しかった。
今後も是非ともこの食堂を利用させてもらおう。
アラミスさんがそばにいるので、褒めまくってみたが、誉めても何も出ないよ流された。
ここで食べた食事はもちろん借金に加算されるので、少しぐらいサービスしてもらえないかなと淡い期待をしたが、そうはいかなかった。
あらかた腹を満たした所で話を戻そう。
シラユキが兎の獣人だとして、自分には関係のない話である。
獣人に対して偏見などもっていないし、むしろリスペクトもしている。
聖騎士団にもお世話になった人がいた。
確かに頭が良くなく、騙されやすいし、暴力な所があったり、一人では生きていけない種族もいる。
だからこそなのか、仲間意識が強く同一種族に対する信頼は高い。また一度信用した相手を裏切るようなことはない。
背中を預けるに足る種族であると確信をもっていえる。
だからパーティーを組むことに躊躇いなどない。
「シラユキさん!」
「は、はい」
「ぜひ、パーティーメンバーになってください。」
「いいんです?私、獣人だし迷惑をかけるかもです。」
「問題ないです。自分も迷惑はかけますし、それに獣人に助けられたことも多いのに、獣人だから仲間になれないなんてあり得ません!」
「よく言った!!」
後ろを振り返るとアラミスさんがいた。
「いやー、シラユキちゃんが男を連れてきた時はどんな奴だいと思ったけど、いい男じゃないか。」
「えっと、ありがとうございます?」
「はっはっは。そんなにかしこまらないでいいんだよ。私はシラユキちゃんにようやく仲間が出来て嬉しいんだよ。」
そういって、これまでのシラユキの苦労話をアラミスさんが語ってくれた。
半分ぐらいはシラユキの失敗談だったので、シラユキは「違うんです」と言いながらあたふたしていた。
「こんな、馬鹿な子だけどね、私にとっては実の娘のように思ってるんだよ。頑張って仲間を探して落ち込んでいる姿を散々見てきたからね。ようやく見つかった仲間なんだ、がっかりさせないでおくれよ。」
「もちろんです。絶対に自分を仲間にしたことを後悔させません。」
なんだか、娘さんを下さいみたいなノリになってしまっているのだが、嘘は言っていない。
これでも元勇者だ、その辺の冒険者に負けない実力と経験はあると自負している。
どんなことがあってもシラユキを守ろう。
シラユキの知識を頼ることももちろんあるのだが、一人で動いているとボロがでて、注目を浴びてしまう可能性が高い。だから自分の隠れ蓑にさせてもらうという魂胆があるのは伝えられないが。
「男に二言はないね。よろしく頼むよ。」
「私からもよろしくお願いします。」
こうして、無事にシラユキという普通の冒険者の指南役を仲間にすることができ、今後の生活も何となく見えてきた。
まだ再召喚された、その日だと言うのに、ここまで順調過ぎて、怖いくらいだ。
着々と増えている、多額の借金があることを除いてだが。。。
まぁ、明日は日銭を稼ぐことから始めないといけないな。
こうして再召喚の一日目が終わったのだった。
食堂のスペシャルメニューは絶品。
シラユキとパーティーメンバーになった。




